金守珍さん ― 2006/05/07
最近出た『歴史のなかの「在日」』(藤原書店)のなかに、金守珍さんの「闇に光を」という短いエッセイがある。日本人=差別者=悪、朝鮮人=被差別者=善という図式の論者が多い中にあって、異色のものである。その冒頭のさわり部分を紹介したい。
>「在日は差別されてきた」と、決り文句のように言われるが、実は僕らも日本人を差別してきた。「なんだ、ひどいことをしやがって」と、日本人に喧嘩も売ったし、事実僕も十代の頃は、おおいに暴れたものだ。今になると、そんな自分にちょっぴり罪悪感を抱いたりもする。 在日は決してきれい事で生きてはこなかった。闇金融、パチンコ産業、ヤクザなど、社会の闇の部分にも深くかかわっている。特に一世は、日本は仮の住まいでいずれ祖国に帰ると思っていたから、日本で好き放題やったという面もあると思う。‥ 闇の部分も含めて、白日のもとにさらけ出すべきだ。誇れない、かっこ悪い部分があるのは当然だ。それが人間というものなのだから。その上で、恥ずべき点は反省すればいい。都合の悪いことは隠したままにしておくと、かえって差別を生むし、理解もしてもらえない。>
彼は在日の実際の生活および在日と日本人との実際の関係をリアルにとらえている。しかし彼のような言説が少数なのは、寂しいことである。 きれい事ではない、在日の実の姿を議論したいものです。