原尻英樹さん ― 2007/06/02
原尻英樹さんは講談社新書『「在日」としてのコリアン』(1998)を出すなど、在日の問題の専門家です。 その彼が『「在日」論の嘘』(PHP研究所 2006)の著者である浅川晃広さんについて、かなり厳しい批判を行なっています。 批判点はいくつかありますが、下記のようなビックリする批判がありました。
「(浅川晃広さんの)この本のあとがきには、以下のように書かれてる。 “‥‥筆者も、国立大学で勤務する者であるが、‥‥” とある。この人が常勤講師として勤めている名古屋大学は、2006年には既に国立大学ではなく、独立行政法人になっている。自分の勤務している職場の基本的経営形態さえ理解できていない人が、議論を実践し、精緻な検討をできるのであろうか。通常、専門家はこのような人を専門家としては認めないだろう。」 (『世界のコリアン アジア遊学92』(勉誠出版 2006年10月)18頁
原尻さんの浅川さんに対するこの批判は正しいかどうかですが、事実関係は誤りです。
名古屋大学は「国立大学法人」であって、「独立行政法人」ではありません。http://www.nagoya-u.ac.jp/ 従って、浅川さんが「国立大学に勤務」していると称することは、何ら間違いではありません。
ちなみに、原尻さんの勤務先である静岡大学も「国立大学法人」であって、「独立行政法人」ではありません。http://www.shizuoka.ac.jp/
国立大学法人と独立行政法人の違いは下記参照。 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/03052702/010.htm
つまり原尻さんは、自分が「自分の勤務している職場の基本的経営形態さえ理解できていない」にも拘わらず、浅川さんに対して「理解していない」と批判し、さらには「議論を実践し、精緻な検討をできるのであろうか。通常、専門家はこのような人を専門家としては認めないだろう。」とまで言い切りました。
これはもう個人攻撃です。 このようなことを本に書いていいのかどうか。書く前にちょっと調べればいいものを、浅川憎しの余り筆がすべったのでしょうか。
逆に原尻さんは「専門家」としての自分に問われることになるでしょう。 「静岡大学教授」の肩書が泣きます。
法を破ることを英雄視できるか ― 2007/06/09
法と現実との間に齟齬がある場合、法治国家の理念はどうなるのか。 難しい問題ですね。具体的な場合を個々に見ていくしかないでしょう。
>人を助けて違法、人を見殺しにして合法というのが法治国家の実態です。
これは言い過ぎでしょう。しかし法を順守するあまり、見殺しとなってしまう場合はあるでしょう。
>裁判というのは、当事者でもない素人の第三者が時の法規や判例などを理由に判断するわけですから最も当てにならないものです。>
裁判も人がやりますから、間違いが絶対無いとは言い切れません。しかし、だからといって裁判が最も当てにならないとは言えないでしょう。裁判が当てにならないなら、どのような制度・やり方がいいのかを提示すべきと思います。
>実は人類の歴史は法を破ることで發展してきた事実があり、かつての「非国民」が「終戦」を境に「英雄」にされるのを見ると、法を基準にして判断するのは愚行(愚考)だと言えます。>
「法を破る」ということが、国家秩序を破壊するという意味のようです。歴史上でそれによって発展した場合もありましたが、そうでない場合も多かった、と思います。 「法を破る」ことは、今は悪いと判断せざるを得ないし、本当に悪いことであったかという判断は将来において過去を振り返る時にのみ可能な事柄と考えます。 法を基準に判断することは、今を生きるには最善と思います。
>逮捕されながら尊敬されている有名人と言えば、他にも Martin Luther King Jr,そして Nelson Mandela がいます。さらに Stevie Wonder も人種隔離政策(apartheid)に反対する運動で、Carl Sagan 博士も反核運動で、それぞれ逮捕されたことがあるという報道を見た覚えがありますが如何でしょう。>
これも個々に判断すべきことでしょう。 例えば日本の過激派諸君は、内ゲバといってかなり激しい殺し合いをやってきました。今は単に醜い犯罪者たちですが、もし彼らが将来国家権力を掌握することになれば、英雄となるでしょう。
韓国での日韓条約関連文書公開について ― 2007/06/16
>韓国側で非公開であったとしても日本で公開されていたのですから、韓国人は日本側からいくらでも協定文書の内容を入手できたはずです。それなのに、韓国側ではこの内容を初めて知ったような驚きで迎えられています。これはいったいどうしてなのでしょうか?
日本も韓国も議会が機能しており、国内に反対派が存在しています。日本で公開されて、韓国で公開されていないことはあり得ません。
>日本側が韓国に対して条約の関連文書を公開しないように要請していたと報道されています。それは日朝交渉に悪影響を及ぼすことがその理由とされています。この報道されていることは事実と考えてよろしいでしょうか?>
事実を否定するものは、今のところありません。
>韓国に請求権がないことを明らかにした方が日本には有利に思えます>
韓国に請求権がないことは、公開されている「請求権および経済協力協定」に明記されています。
>でもこの基本条約の内容自体知らない人が多かったと思いますが 日本政府としては国民に積極的にアピールしてこなかったのでしょうか?>
公開されている条約の内容は、法治国家ですので簡単に入手できます。政府がわざわざアピールすることもないでしょう。
>そもそも日本政府がこの外交文書の公開をためらったのは何故だとお思いですか?>
当時において日韓双方が非公開と決めたものです。日本政府はたとえ不利となろうとも、その約束を守ってきたと言えます。その姿勢は評価すべきでしょう。
在日の功績 ― 2007/06/23
>在日朝鮮人が戦後、なにか日本の為にした功績って、あるのでしょうか? >あれば教えて下さい。私は何ひとつとしてあるとは思っていません。
元東京入管局長の坂中英徳氏(『入管戦記』の著者)は、次のように述べられております。
「以上のような安定した法的地位と社会生活上の機会均等が保障されるようになった日本社会において、在日韓国・朝鮮人はその実力を十分に発揮し、日本の経済と文化の発展に貢献しました。 経済分野では、在日の人たちは日本に骨を埋める意思を固め、事業活動、営業活動を積極的に展開しました。特に、レジャー産業、飲食産業等の発展に大きく貢献しました。医師、弁護士、公認会計士等の専門職の分野への進出も著しいものがあります。 この間、在日韓国・朝鮮人が企業経営等に励んで築いた資産等は巨大なものになります。このような経済的成果を達成した在日韓国・朝鮮人は、世界のマイノリティの中で最も成功した集団であると評価されるのではないかと思います。 在日の人たちは日本文化の発展にも寄与しました。多彩な人材が輩出し、芸術、学問、芸能、スポーツなどの分野で顕著な業績をあげました。」 (日本加除出版『在日韓国・朝鮮人政策論の展開』平成11年2月 33~34頁)
在日はこのように大きな成功を収めているにもかかわらず、一部の活動家たちが被害者意識を盛り立て、日本のマスコミもこれを後押ししています。このことが在日の功績を見えにくくさせているように思えます。
韓国人の名前 行列字 ― 2007/06/30
行列字について知らない人もおられるようです。 宮嶋博司著『両班』(中公新書1995)の45頁に次のように説明されています。
「朝鮮では中国と同様に、同じ同族集団属する男子たちは、世代ごとに共通する文字を用いて名前がつけられた。こういう文字のことを中国では輩行字というが、朝鮮では行列字という。」
正確にいうと、行列字とは族譜上の名前であって、戸籍上の名前ではありません。 周知のように族譜では男子のみの名前が記載され、女子の名前は記載されません。近頃は女性も名前を記すものが出てきたようですが。 行列字は男子のみというのが本来のものです。
鄭さんの場合、親が彼女の出生届を出すときに、兄弟の行列字を利用したということでしょうか。 元々は男子のみに行列字があったわけですが、今は違うようです。それどころか族譜ではハングル名が出てきて、女子の名前も記載される時代になってきたと聞きます。 女性にも行列字をつける例はあるようですね。
韓国では女子に「男」の漢字を入れた名前を付ける例は多いようです。男が生まれてほしかったのでそういう名前を付けたという話はおそらくその通りでしょう。私も聞いたことがあります。 こういう方が来日した場合、名前で誤解されやすいので「南」と変えるということでした。