古代朝鮮語 ― 2007/12/08
> この「私」を表す朝鮮古代語は「吾」を当て、発音は「ナ」です。「サ」ではありません。 >日本の奈良時代に相当する朝鮮三国時代でも同じです。
この根拠となった資料は何ですか。私は聞いたことがありませんので、ご教示ください。
>新羅時代の郷歌に残されている「吾」で、「ナ」と発音されたようです。 >出典は、『古代朝鮮語と日本語』金 思火+華 明石書店 1998年2月10日、です。
新羅の郷歌は25首ほどしか確認されていないものです。これから古代朝鮮語、しかもその発音まで復元することは不可能です。 「ナ」と発音された、という説はいかがなものかと思います。 なお第一人称を「ナ」と発音したのは、古代日本語にあります。例えば「なおと」は「な」が私、「おと」は弟で、わが弟、という意味になります。 日本語の起源は朝鮮語であるという思い込みから、古代朝鮮語で「吾」は「ナ」であるという説が生じたものと思われます。
>問題は、発音にばかりにあるものではなく、第一人称を「私」と表記したのはいつ頃からかということにあります。 >ということは、第一人称を「私」といったことは、後世のことと考えられます。
「私」はもともとは「公」に対する言葉であって、一人称ではありません。一人称として使われるようになったのは、日本では中世の終わりころからでしょう。 おそらく朝鮮語でも元来「私」は一人称で使わなかったのではないか、使うとしたら、植民地時代における日本からの影響ではないかと思います。
>なお、現代朝鮮語では「吾」はオ、「我」はアと発音します。 >仮に「吾」が「ナ」でないとしても「サ」ではないでしょう。
「吾」「我」「私」を「オ」「ア」「サ」と読むのは、漢字の音読みでしょう。問題は朝鮮固有語での読み方です。 古代朝鮮語の固有語として、「吾」を「ナ」と発音したことの証明は不可能であり、同様に「サ」と発音しなかったことの証明も不可能です。
>朝鮮半島の話し言葉って、いつごろから分かっているのか――という事です。
15世紀の表音文字(訓民正音)より以前の言葉の復元は、かなり困難です。
>古代の朝鮮語が明確に分かっていないといけないと思うのですが、それはいつごろから、どのような文献によってわかるのか? という事です。
『日本書紀』に古代朝鮮語がいくつか記録されています。比較的まとまった資料となるのはそれぐらいで、あまりにも少ないものです。
>それともう一つ、同じ朝鮮半島でも、地域や時代によってずいぶん違っていたのではないか――とも思うのです。 >こういう事について、定説はできているのでしょうか?
百済語、新羅語、高句麗語は違うはずですが、資料そのものの数があまりにも少なく、はっきりとしたことは分かりません。 だからこそ、国内の地名が朝鮮由来であるとか、万葉集は朝鮮語で読めるとかいうような、根拠のない悪質な俗説が流行ります。