韓国人でもなく日本人でもない ― 2008/05/24
拙論第37題で、『民族の世界地図』(文春新書 21世紀研究会編 平成12年5月)におけるソフトバンクの孫正義についての記述に誤りを指摘した。
>「ソフトバンクの孫正義のように、韓国人でもなく日本人でもない、国際人として世界を股にかけて活躍する人が出現しはじめている」(38頁) 孫正義はかつて韓国籍であったが、現在は帰化して日本国籍となっている。彼は日本人として世界を股にかけて活躍しているのである。従って「日本人でもない」は誤りである。> http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daisanjuunanadai
ところで、執筆者はなぜこのようなことを書いたのだろうかと疑問を感じていたのだが、そのネタ元が判明した。それは朴一の『<在日>という生き方』(講談社選書メチエ 1999年11月)のなか210~211頁である。
>第七章 日本というシステムと闘う―孫正義の挑戦」 「1、日本人でもなく韓国人でもない」>
という節の見出しが立てられているのである。 ところがこの見出しは、その中身を読めば、孫の次の言葉からとられたものであることが分かる。
>アメリカに行けば日本人でも韓国人でもないわけで、アジア人はみんなAsian>
つまり「韓国人でもなく日本人でもない」は、アメリカの状況説明であって、孫の生き方を説明したものではないのである。 孫が「韓国人でもなく日本人でもなく」活躍したという言説は、やはり誤りと言わざるを得ない。