『現代韓国を学ぶ』(2)2012/06/06

 この本のなかで最も違和感を持ったのが、「第10章 世界に暮らすコリアン」です。論者は李裕淑という方です。疑問な点を一つずつ挙げていきたいと思います。

日本は‥‥1910年9月30日から1918年12月まで土地調査事業を実施した。そのために朝鮮の農民のなかには土地所有権を失う者も出た。(297頁)

 これについては、同じ本の「第4章 韓国の歴史」に次のように論じられています。(論者は永島広紀)

〉 よく耳にする日本統治の批判の決まり文句がある。まず「土地を奪われた」というのは、主に1910年から開始された「土地調査事業」のことを指すことが多いだろう。いわゆる「近代的」な土地所有の観念が希薄だった時代においては、まずは精密な測量に基づく土地の計量によって所有権を確定していく作業が喫緊の課題であった。‥‥ともかく朝鮮総督府が一方的に土地を強奪したというのは、もはや韓国では「神話」と化している。(101~102頁)

 これは後者の永島氏が正解です。

 それまでの朝鮮では「土地所有権」という観念がなかったのですから、李裕淑氏の論じるように「土地所有権を失う」ことはなかったのです。

 次に産米増殖計画について、李氏は次のように論じています。

1920年から始まった「産米増殖計画」によって、朝鮮の米穀は日本に移出され、朝鮮人は生活基盤を失った。(297~298頁)

 これも朝鮮の歴史に決まり文句のように出てくる話です。  

 米は昔から最も高価に取引される穀類です。朝鮮で生産された米を日本に移出して代価を得ることは、経済的に合理性がありました。    米は出荷用の換金作物として大事に保管され、普段の食事は非常に質素であるのが当時の農民の生活でした。米の増産によって生活基盤が失ったというのはあり得ないことで、誤りです。     当時の朝鮮の農村では農業生産の増大以上に、人口が増大しました。これが農村での生活を苦しくさせた最大の原因です。