二つの名前を持つこと2012/06/27

 このごろ韓国の新聞を読んでいると、時折二つの名前(本名と通名)を持つ人の話が出てきます。

 たとえば朝鮮戦争後、貧しかった韓国で医療や福祉活動したキリスト教関係者は、全部ではありませんが、本名以外に韓国名を持っていました。彼らは祖国に帰国して今はかなりのお歳になっていますが、当時の苦労を偲ぶのか、韓国を訪問してマスコミのインタビューを受けて、登場するのです。

 最近の記事では、「朝鮮日報」2012年6月21日付けに、1960年代の韓国の順天で結核診療所で働いていた韓国名イン・エジャ、米国名 ロイス・リントンさんのインタビューがあります。彼女は韓国では韓国名を名乗っていたのです。

 またこれまでには、アメリカに渡って成功した韓国人が、米国名と韓国名の二つの名前で登場する記事が、時々出てきます。

 ここで1970年代に、日本における在日の本名を呼び名乗る運動を思い出します。この運動を担った活動家は、日本は我々に日本名を強制している、これは民族差別だ、という主張でした。その理屈付けとして、そもそも人が二つの名前を持つこと自体が不自然なのだとか、韓国人は昔から名前を変えることは全くの恥としているのに、日本人は無理やり日本名を名乗らせているのだとか、言っていました。つまり、在日が通名=日本名を持つことは、日本社会による在日への人権侵害だというものでした。

 私も当初はこの考えに同調していたのですが、段々と疑問を持つようになっていきました。

 そして今では、本名と通名の二つの名前を持つ人が韓国のマスコミにごく自然に登場するのをみると、在日が二つの名前を持つことは人権侵害でないことを確信しています。

(拙稿 参照)

 第21題 「本名を呼び名乗る運動」考

http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/dainijuuichidai

 第85題 (続)「本名を呼び名乗る運動」考

http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daihachijuugodai

 第84題 「通名と本名」考

http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daihachijuuyondai