『韓国が漢字を復活できない理由』 (5)2013/09/23

日本語と違うところは、〈エ〉にあたる母音はなく、普通の〈エ〉は、〈オ〉と〈イ〉の重母音となるが、たにカタカナでは表記できない〈エ〉があるから混乱する。こうした重母音が難しいのである。(79頁)

ハングルは、重母音が発達しているから、日本語にない発音もたくさん存在する。同じ〈エ〉でも、タクシーはテクシーに近い発音になる。〈ア〉と〈エ〉の中間のような重母音、英語のアップルの〈ア〉だと思えば、正しい。この重母音は、日本では名古屋弁だけにある。海老フリャー(フライ)というときの発音だが、カタカナでは巧く表記できない。(82頁)

 豊田さんは日本語の〈エ〉にあたる韓国語の発音は、「〈オ〉と〈イ〉の重母音」と「〈ア〉と〈エ〉の中間のような重母音」の二種類あることを論じています。おそらく「에」「애」のことかと思われます。

 重母音とは二つ以上の母音が一音節で発音されることです。ですから重母音か単母音かは、ゆっくり発音した時に母音が複数出てくるかどうかで分かります。しかし韓国語の「택시(タクシー)」の最初の母音である「ㅐ」、いくらゆっくり発音しても母音は一つです。つまり重母音ではなく単母音です。

 次に名古屋弁の「リャー」の母音は、「イ」と「ア」の重母音のです。ただし「ヤ(ya)」は重母音ではないとする研究者がいるようですので、ここは曖昧にしておきます。いずれにしても、韓国語の「テクシ(タクシー)」と名古屋弁の「フリャー(フライ)」の母音が同じとはとても信じられるものではありません。

ところで英語のアップルの「ア」は重母音なのですかねえ。発音記号を見る限り、「ア」と「エ」の中間音であって、重母音ではないです。

 なおハングルでは、母音は「基本母音字」とそれを組み合わせた「二重母音字」とがあります。「ㅐ」は字形の上では基本母音字「ㅏ」と「ㅣ」を組み合わせており「二重母音字」と言われるものですが、これはあくまで字形の上でのことで、実際の発音は単母音です。

 発音上の「二重母音」と字形上の「二重母音字」との違いを混乱されたものと推測します。