韓国の「祖孫家庭」問題(2) ― 2013/12/11
祖孫家庭の現実は、数値に現れているよりもはるかに深刻だ。経済的問題は勿論のこと、健康問題・孫との意思疎通問題・学習指導など、三重苦、四重苦に苛まれている。ヨンドンポ総合福祉館の金ミギョン館長は 「高齢の祖父母の場合、大部分が病気を患っている上に、働く能力は喪失して生活能力も減退しているので、孫たちの面倒を見るのに問題が出てくる。自分の息子・娘の育て方を間違ったという罪責感と後悔ばかりで、養育負担もままならず、鬱病になってしまうことも深刻だ。人生を捨ててしまいたいと思っても、孫たちを見れば放り出すこともできず、非常に複雑な心理状態に置かれている。」 と語った。
世代差がかなりあるので、葛藤も深刻だ。専門家たちが口を揃えて言うには、祖父母と孫の世代間に意思疎通がないことだ。親と子供の間でさえもなかなか言葉が通じないというのに、それ以上の世代差のある祖父母とは話をすることがないのだ。端から対話が断絶しているのである。子供たちは外では仲間外れされて問題少年となる可能性が多くなる。祖孫家庭の場合、祖父母も孫もどちらも根本的な関係断絶によって深刻な傷を抱えているのである。特に孫は、家庭崩壊が契機となっているので愛情欠乏が深刻だ。これによって通常の人間関係を難しくしたり、あるいは過度に人間関係に執着して早い時期から異性関係に陥ったりするのである。
京畿道コヤン警察署の李キョンエ青少年係長は、ちょっと前に近くの中学校で学校暴力加害者矯正対象となったA嬢(中3)の保護者面談をしたところ、驚いた。李係長は「保護者として来たおばあさん(66)の身体の所々に傷が見えた。初めは‘大したことはない’と言って傷ができた経緯についてしゃべるのを避けようとしたおばあさんが、泣きながら打ち明けた話は衝撃的だった」と話した。おばあさんの傷は、三歳の時から育てた外孫のA嬢に殴られたということなのだ。酒、たばこにふけるA嬢は、ともするとおばあさんの髪をつかんで暴行を繰り返し、おじいさんの頬を殴ってひっくり返し、おじいさんを入院させることもした。刃物を持って脅すなどの騒動を起こせば、町内が大騒ぎになるほどであった。おばあさんは、どうやっても中学校までは卒業させねばならないと考えて、じっと我慢してきたという。A嬢は祖孫家庭で育った。実の父は離婚後連絡が途絶え、実母はA嬢を実家に残して再婚し、外祖父母のもとで育てられた。李係長はA嬢を呼び「これ以上おじいさん、おばあさんに暴力を振るったら、タダじゃ置かないから」と警告した。李係長は「おばあさんとは電話連絡が時々来るが、それ以降A嬢は騒動は起こさなくなったが、家出をした状態だ。」と語った。
京畿道プチョン市で、おばあさんと二人で暮らしている祖孫家庭のB君(小3)。‥児童家族相談センターに来たB君は心理テスト項目の一つである文章完成テストのための用紙を見て、突然‘ワーッ~’と大声でわめいてセンターを飛び出した。B君のテスト用紙には、文字でもなく絵でもない象形文字のようなものが書きなぐられていた。B君は3年になるまで、ハングルを読むことも書くことも出来なかった。おばあさんは市場にござを敷いて物を売ってB君を育てた。一日の稼ぎに忙しく、勉強や本を読むことに気を使う暇もなかったのである。