漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(4)2014/01/19

韓国語の語彙は、日本語以上に漢字語の影響が強く、一般の文書で使われている語彙の約70%が漢字語で、公文書となると90%以上が漢字語だといわれる。(呉善花『漢字廃止で韓国は何が起きたか』PHP 2008年10月 25頁)

 70%、90%という数字が出てきますが、果たしてこの数字は裏付けがあるのかどうかです。朝鮮語研究者の前田真彦さんは、韓国のニュースと韓国ドラマ「冬のソナタ」に出てくる語彙を調査し比較しています。

ニュースで使用される名詞のうち、3分の2程度が漢字語です。それに対して「冬のソナタ」は逆に3分の2程度が固有語です。‥‥ニュースの動詞の50%近くが漢字語で、「冬のソナタ」の動詞はほとんどが固有語だということがわかる(『韓国語 上級への道』白帝社 2009年3月 13頁)

 漢字語はほとんどが名詞に使われます。動詞・形容詞にも漢字語がありますが、これは名詞を動詞化・形容詞化したもの(例えば운동하다=運動する)ですから、元は名詞です。他には副詞に若干の漢字語があります。前田さんによると名詞のうち67%が漢字語ですから、呉さんの「70%」は間違いありません。しかしドラマで使われる言葉はほとんど日常語ですから、ここでは逆に漢字語でない固有語が67%、つまり漢字語は33%しか使われていません。

 これは日本語でも割合は違うと思いますが、傾向は同じです。日本語も韓国語も新聞や論文等で使われる言葉には漢字語が多く、日常会話では漢字言葉は少ないものです。従って通俗的な文章には、漢字語は少なくなります。

 日本でも韓国でも、検証や論理立てるような文章には漢字語が多くなります。その表現の仕方が一方では漢字をそのまま残し、他方ではハングルに置き換えたということです。