古田博司 『醜いが、目をそらすな、隣国・韓国!』(2) ― 2014/03/19
朝鮮の城は石垣が真っ直ぐだ。日本の城は忍び返しになっている。忍者などが入ってくると落ちてしまう仕組みだ。(33頁)
これにはビックリ仰天。「忍び返し」というのは、侵入者除けのために塀の上などに取り付けている装置です。昔は逆さにした釘やガラスの破片を立て並べたりしていましたが、今はしゃれたデザインの「忍び返し」が販売されています。
古田さんはおそらく勘違いして、オーバーハング(或いは「持ち送り」とも言います)という意味で「忍び返し」を使ったのかなと思うのですが、日本の城の石垣でオーバーハングのものはありません。
日本の城の石垣は単独で立っているのではなく、高台に作られたお城の斜面、あるいはお堀の斜面に石を積み上げています。石垣の下部は横方向の土圧が相当にかかりますから、これに耐えるためには石垣の勾配を緩めて広がるようにしなければなりません。だから日本の城の石垣は斜めか八の字に広がっています。上に行くほど土圧が少なくなりますから垂直にすることができますが、持ち送ってオーバーハングにすることはありません。
朝鮮の城の石垣が真っ直ぐなのは、高さが低いので土圧がそれ程かからず垂直でも耐えられるからと思われます。あるいは石を積み上げた塀なのかも知れません。これなら土圧が全くなく、石自体の重みで維持できますので、真っ直ぐな石垣になります。
ところで石垣は手や足を引っ掛ける隙間がありますから、登るのは比較的容易です。敵の侵入を防ぐのであれば、石垣はないほうがいいです。素掘りの堀で、手足の引っ掛けるところがないように滑らかな急斜面を作るほうが実戦的です。ただしこの場合は、草が生えたり雨で斜面が抉れたりすると簡単に侵入されますから、ごく短期間の戦闘にしか使えません。従って敵と遭遇することが予想される場所で、その時の戦闘のみに使おうとするならば、素掘りで築いた堀の方が短時間で築造できることもあり、優れているのです。
築城する際に素掘りの堀ではなく石垣を築くということは、この城が一時的なものではなく、かなり長期間維持しようとする意図があります。つまり城に石垣を築くのは、単に敵との戦闘をするだけのためではなく、その一帯の領地を経営しようするからです。
韓国には豊臣秀吉の朝鮮出兵(壬辰・丁酉倭乱)の際に日本軍が築いた倭城がいくつかあり、日本風の石垣が残っています。これについて古田さんは、
(日韓歴史共同研究の)会議の際に豊臣秀吉の朝鮮出兵の話題が出た。最近は研究が進んできて、日本の占領地にどんどん朝鮮農民が逃げてきていたことが分かっている。朝鮮の李朝はひどくて、日本のほうがずっといいから、占領地に城下町もできてしまった。(32頁)
と書いていますように、それは日本軍に石垣を持った城を築いて領地経営しようとする意図があったからと言えます。
ところで最初の話に戻ると、石垣をよじ登る敵を撃退するのは「忍び返し」ではなく、「石落とし」です。これについては以前に論じたことがあるので、ご参考ください。歴史の雑学にしか過ぎませんが‥‥。
「石落し」は石を落とすものではない http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2010/11/13/5499534
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