韓国と北朝鮮の崩壊論2014/05/25

 朝鮮半島にある二つの分断国家を名指して、「この国はまもなく崩壊する」というような主張は昔から多いものです。 しかも予言者ではなく、れっきとした専門家がそれを言います。 しかし、それが当たった験しはないと言わざるを得ません。

 1970年代の韓国はいわゆる朴正熙の軍事独裁政権時代で、米国と日本という大国に従属し、国内では民主人士を弾圧する暗黒国家だ、このような国は長く続くことはあり得ず、まもなく崩壊するだろうという主張が大きかったものです。 日本では日本の左翼・革新系の専門家が主張していたし、岩波の月刊誌『世界』では毎号大きなスペースを割いていました。 しかし韓国は国家危機に陥ったことはありましたが、崩壊することなく、現在まで続いています。

 一方1989年から始まった東欧・ソ連の社会主義の崩壊により、朝鮮半島でも北の社会主義はまもなく崩壊するという主張が大きくなりました。 1994年には金日成が死去し、大飢饉が訪れ、国際的制裁もあって、確かにこれでは崩壊するだろうと誰もが思うほどでした。 しかし「苦難の行軍」を呼号する北朝鮮は、数百万人の餓死者を出しながらも崩壊することなく現在まで続いています。

 北朝鮮崩壊論は、もはや耳に蛸が出来るほどです。 北朝鮮を素直に見れば、こんな社会が20・21世紀のこの世にあるんだと妙に感心するとともに、これではいつかは破綻するだろうと確信はします。 しかし、‘まもなく崩壊する’、‘崩壊は時間の問題’、‘数年も持たない’などと言われ続けて20年以上経って、今なお存続しています。 三代目世襲政権は、今のところ揺るぎは見えません。 「崩壊論は信じてはいけない」の典型例です。

 以上から「崩壊論」を主張することは慎重にならねばならないと思うのですが、現在も手を変え品を変えて「崩壊論」が跋扈しているのが現状です。

 この2年ほど前から出てきたのが、三橋某の韓国経済崩壊論。嫌韓ブームに乗っているのか、本をかなり出しており、また雑誌にもよく登場します。 しかしこのような韓国崩壊論は、上述したように40年前の1970年代に盛んに流布されていたのと二番煎じに過ぎないように私には思われ、これを主張する論者は嫌韓ブームに踊るピエロのような印象しかありません。 それでもこの論者はこれでお金が儲かって生活できるのですから、日本はいい国だと思います。

 朝鮮半島だけでなく、日本でも1年半前に安部政権が樹立された当初、政権すぐさま崩壊論がたくさん出てきました。 しかし今はこの政権の長期化は避けられそうにありません。 また中国も数年前から、バブル経済が深刻化により経済崩壊すると予想する人が多かったですが、そんな気配は見せないまま今に至っています。

 崩壊論は地震予知と似ています。 大地震は数百年・数千年の単位で考えると、いつかは必ずやってきます。 これは確実なことです。 しかしそんなことは素人でも誰でも言えることです。 これから十年以内に大地震がおきると予知すれば、何%かの確率で実際に起き、残りの90%以上は外れます。 これでは当たるも八卦、当たらぬも八卦の世界と同じですから、人騒がせだけで、役に立たない予知です。

 崩壊論も同じです。国家史を数百・数千年ほど遡れば、革命・内戦・侵略・敗戦など崩壊情況に陥った歴史の繰り返しです。 だからどんな国でも数百・数千年の単位でみると「いずれ崩壊する」とは誰でも言えるほどに確かなことです。 北朝鮮や韓国、日本も同じく、これから数百・数千年先を考えるならば、いつかは崩壊して今とはぜんぜん違う社会になる、あるいは北朝鮮、韓国、日本という国家そのものが存在していないだろう、というのは確実だと言えますが、そんなことを幾ら言っても全く意味をなさないものです。

 逆に誰もが全く予想しない時に、崩壊が起きます。 典型的なのが1989年から1990年代に起きた東欧・ソ連の社会主義崩壊です。

 多くの人が崩壊を予想する時には崩壊は起こらず、誰もが予想しない時に崩壊が起きるというのが「歴史の教訓」です。 だから北朝鮮や韓国は、もうこれでは崩壊しないだろうとみんなが思った瞬間に崩壊することでしょう。

 そこで誰もが予想しない、私だけの崩壊予言をしてみます。 それは「南北共倒れ説」です。 シナリオは二つあります。

【シナリオ1】

① 北朝鮮の崩壊が始まり、韓国が統一事業着手。

② 北朝鮮人民軍の武装解除に失敗し、韓国国軍と北朝鮮人民軍間で戦闘激化。

③ 北の住民の生活保障が困難となって流民化。 治安の悪化が韓国まで波及。

④ 朝鮮半島全体が大混乱に陥り、韓国政府の機能が喪失する。

【シナリオ2】

① 韓国で親北民主政権が樹立され、韓米同盟を解消し、北朝鮮と統一協議を始める。

② 北朝鮮が統一事業の主導権を握り、韓国政府は北朝鮮政府の影響下に置かれる。

③ 北朝鮮の主導のもと選挙が実施され、統一人民政府樹立される。

④ 新政府の軍隊・警察の指揮権を北朝鮮が掌握。

⑤ 旧韓国地域では治安悪化、旧韓国民が大量亡命。

⑥ 朝鮮半島全体が大混乱に陥り、新政府の機能喪失。

 このような「南北共倒れ説」は今のところ誰も予想していないので、先の「歴史の教訓」からすれば一番よく当たるのではないかと勝手に思っているのですが‥‥。 しかしここまで来れば、未来小説と同じですねえ。

コメント

_ ryochu ― 2014/05/26 18:23

1990年代の初めでしたか、西岡力氏の講演を聴いたことがあります。「いよいよ今年の冬が危ない、食糧危機を乗り越えられるか、北朝鮮崩壊3つのシナリオ」みたいな私にとっては初めて知るような内容で、とても興味深く拝聴しました。北朝鮮の「内情」にとても精通している印象を受け感心しました。日朝友好協会?人でしたか、えらく反発していたのを覚えています。
 さてその年、結構「期待」していたんですが、何も起こりませんでした(^^;)
ちょっと「残念」だったので色々調べてみると,毎年同じようなことを主張してるんですね!
 「中国崩壊」を云々する長谷川慶太郎氏なども同じような感じですね。「北京オリンピックの後が危ない」「上海万博の後が危ない」等々、タイトルに釣られて「今年こそは!」とばかりに本を一杯買ってしまいました。
 崩壊崩壊って言われていったい何年経ってますでしょうか? ホント、いつになったら潰れてくれるんですかねえ(^^;)
 いっぽう「日本経済、今年が危ない!」みたいな本を毎年出している学者もいますよね。
 中国共産党だって北朝鮮だって、体制維持のため必死に頑張っているんですから、そこを侮ってはいけないと思います(^^;)
 長谷川氏とか故・佐藤勝巳氏とか、元共産党系の方々とか若い頃マルクス主義の影響を強く受けた方々には、常に機は熟しているとする「万年革命前夜論」的な発想が形を変えて残っているのかな、などと思ったりしています。

_ 日本国公民 ― 2014/05/29 08:24

 ソ連崩壊を予測していたのは、小室直樹、エレーヌ・ダンコース
エマニュエル・トッド、そして、ポール・ヴァレリーの知見をもとにした
エリック・ホッファーですか。いずれも、生粋のソ連の専門家でないところに特徴があります。韓国・朝鮮の非専門家で、社会や人間を探求する研究者からのほうが、卓見が出て来る可能性があると思います。

_ (未記入) ― 2014/05/30 06:47

 崩壊予想は外れても責任を問われない。
 だから気楽に言える。
 株や競馬の予想は、実際に買って外れると損をする。
 だから真剣に調べる。
 予想するにしても、心構えが違う。
 素人の予想は当たってもまぐれ当たりと同じ。
 専門家の予想が当たって、初めて先見の明があったと言うべきだろう。
 しかし専門家の予想レベルは素人の予想レベルと変わらないのが現状。

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