韓国映画『チスル』2014/06/01

 韓国映画『チスル』を鑑賞。チスルとは韓国済州島の方言で、ジャガイモの意味だそうです。 韓国の『標準国語大辞典』を調べてみたら、確かに済州方言に「지슬」があります。 映画は1948年に起きた済州島4・3事件をテーマにしています。映画のチラシでは、次のように説明しています。

許されざる慟哭の歴史が、劇映画として初めて完成。 第二次世界大戦で日本が連合軍に降伏すると、アメリカ軍とソビエト連邦軍が朝鮮半島を北緯38度線で南北に分割占領した。 アメリカ主導で進められていた南だけの単独選挙が国の南北分断を決定的にするとして、1948年4月3日、選挙に反対する済州島民が武装蜂起。 それが発端となり、米軍が作戦統治を行っていた韓国軍と警察は、海岸線5㎞より内陸にいる人間を暴徒と見なし、鎮圧の名の下、無差別に虐殺する。 事態は熾烈を極め、7年もの間に約3万人が犠牲となったが、その大半は政治やイデオロギーとは無縁な人々であった。 日本に逃れた島民も多く、事件前に28万人いた人口は激減した。 「済州島4・3事件」は時の体制に“アカの島”で起きた“共産暴動”と烙印を押され、近年まで語ることさえタブーとされてきた。

 映画の題名『チスル』は、チラシでは「優しい気質の島民は、負傷した軍人にまでジャガイモを差し出したという」ところから付けられたとしています。

 この映画で一番の疑問は、武装蜂起を決行した南朝鮮労働党(以下「南労党」)が全く出てこないことです。 これについては平凡社の『韓国・朝鮮を知る辞典』の「済州島4・3蜂起」の項に、

4月3日、南朝鮮労働党は武装蜂起を決定し、党のもとに人民遊撃隊を組織した。 その規模は300人余り。 警察から奪取した武器、弾薬で武装した遊撃隊は、政治犯を釈放し、西北青年会など右翼テロの粛清を行うなど、一時はほとんど全島を掌握し、5月10日の単独選挙の実施を阻止した。

と書かれているように、この事件は南労党が島民を巻き込んで起こしたものと言っていいでしょう。 しかしこれを映画では「島民の武装蜂起」と表現しています。 そして幼い子供や女性までが武装蜂起側に付いていって、最後はみんな犠牲となったとしています。

 4・3武装蜂起の結果は3万人もの犠牲者を出して敗北しました。 犠牲者には女・子供が多く含まれていたというのですから、鎮圧した韓国軍や警察だけでなく、蜂起を決定し指導した南労党の責任も大きいと思うのですが、この南労党が映画では出てこないのは何故なんだろうか?と思いました。

 南労党は敗北が決定的になった時点で、島民の犠牲を最小にするために「全責任は我々にある。島民には責任はないから殺すな」として白旗を掲げるべきだったのではないか、あるいは島民たちは生かして自分たちだけで玉砕すべきだったと思うのですが、最後まで島民を抱え込んだまま徹底抗戦してしまったという事件でした。

 人民遊撃隊=人民戦争は軍隊と人民大衆とが有機的に結合して戦う方式で、4.3事件はこの戦争方式を取り入れたものです。 映画ではこの事件を「南労党の武装蜂起」ではなく「島民の武装蜂起」と表現したのは、この故だろうと思います。 しかし一般人を巻き込んで犠牲にする軍隊は、果たして正当化できるのかどうかという疑問を持ちます。

 次にこの映画のもう一つの疑問は、ある韓国軍兵士が暴徒鎮圧をためらったために罰として厳寒の屋外に裸で放置されるという場面です。 この時代は南労党員が多数韓国軍に入隊し、軍隊内反乱を狙っていた時代です。 実際に麗水・順天でそのような反乱事件が発生しました。 従って韓国軍は内部に入り込んだ南労党員の摘発に全力を挙げていたのです。その最中に暴徒鎮圧をためらう兵士がおれば当然南労党員を疑いますので、裸で屋外に放り出す程度の罰では済まなかっただろう、と思います。

 実際の鎮圧の際には、女・子供にまで銃を向けなければならなかったのですから、各兵士には躊躇いの気持ちは出てくることもあったでしょう。 しかし、そんなことを素振りにでも出したら自分が南労党員を疑われて処刑される可能性があった、そんな時代だったのです。

北朝鮮の手の上で踊った韓国の民主化運動2014/06/07

 拙ブログに次のようなコメントが投稿されました。

韓国のその時を生きた人達がまだたくさん生きています。       「アカ」という名のもとに、人権が蹂躙されていた時代です。         tsujimotoさんはその時、韓国で生活していたのでしょうか? その時、韓国語が理解できたのでしょうか?当事者が身近にいたのでしょうか? 自由を求める人がすべて「アカ」でしたか。 あの時代の絶望がわかりますか。

韓国映画 『南営洞1985』  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/05/20/7316008

 1970~80年代のいわゆる軍事独裁政権時代、民主化運動が盛んでした。 当時の朴正熙・全斗煥大統領は軍人出身で、その政治手法はおよそ民主主義とは程遠いものでした。 これに対して反独裁・自由を求めて民主化運動が起きるのは当然なことでした。

 しかし問題を複雑化させたのは、この民主化運動に北朝鮮が関わっていたことです。 北朝鮮の金日成は、1970年の第5回労働党大会で次のように述べています。

(朝鮮)北半部人民は同じ民衆として、南朝鮮人民の革命闘争を積極的に支持応援すべき義務と責任をもっています

 ここでいう「南朝鮮人民の革命闘争」とは、まさに民主化運動を指します。 だから北朝鮮は南朝鮮(韓国)の民主化運動を、国家を挙げて「支援応援」すると明言したのです。 つまり北朝鮮は、南朝鮮解放路線(赤化統一)に民主化運動を位置づけたのでした。

 民主化運動をしていた人は純粋に独裁を終らせたいだけで主観的には北朝鮮とは関係ないと思っていたとしても、現実には北朝鮮が支援応援していました。 具体的には工作員の潜入や民主化運動指導者のオルグといったような秘密裏に行なう支援から、賞賛の言葉だけで応援する場合まで、様々な形態の支援応援をしました。

 当時の韓国は独裁国家と言ってよかったのは確かですが、それでも野党が存在し、一定範囲内では言論・思想の自由がありました。 一方北朝鮮は言論・思想の自由が一定範囲どころか全くないところでした。 ましてや野党の存在はあり得ません。 韓国を軍事独裁ファッショ政権と批判するなら、北朝鮮はもっと過酷でエゲツない軍事独裁ファッショ国家です。 

 しかし韓国で民主化運動を果敢に闘っていた人たちは、このような北朝鮮を批判することがほとんどありませんでした。 民主化運動の理念からすると、韓国だけでなく北朝鮮の民主化にも取り組むべきものですが、そんなことはしませんでした。 そして北朝鮮の金日成が自分たちの活動を支援応援すると表明していたことに対し、彼らはダンマリを決め込んでいたのでした。

 韓国の民主化運動はなぜ北朝鮮の民主化に取り組まなかったのか、あるいはまた自分たちが北朝鮮と関係のないことを示すパフォーマンス (例えば金日成の写真を焼くなど) をしなかったのか。

 結局は、韓国の民主化運動は北朝鮮の手の上で踊っていたと言わざるを得ません。

【拙稿参照】

1970~80年代の韓国民主化闘争 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2011/01/16/5639024

1970年代の北朝鮮=総連の手口 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2011/11/12/6199653

韓国に親北民主政権=人民革命政権が樹立される可能性                 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/02/01/6315655

自主的、民主的、平和的統一  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/04/22/6421457

『現代韓国を学ぶ』(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/06/02/6465710

韓国の新聞に旭日模様2014/06/08

『朝鮮日報』2014年6月5日付けA30頁

 韓国では「旭日旗」を日本軍国主義の象徴とみなして、かなり否定的な反応を示します。中には、単に放射状に広がっているだけの模様にも「旭日旗」だとして、反対する運動を起こしている韓国人もいます。

 しかし旭日模様は、韓国でも違和感なく使われているものです。最近では2014年6月5日付の『朝鮮日報』のA30頁に出ていました。↑ 内容は統計学の初歩を勉強するために選挙を具体例に挙げているもので、子供向けの記事です。ここに旭日模様が出ています。

出口調査の結果、○○○候補が支持率45%で、当選が有力視されています。今度の出口調査は選挙当日の午前6時から午後5時まで、全国の投票所で有権者8万人を対象に行ない、回答率69%、信頼度95%、誤差は±0.9%の範囲です。

 ちょっと難しい記事ですが、これを子供向けに分かりやすく描いた漫画の一部(↑)に旭日模様があります。このように旭日模様は韓国でも日常的に違和感なく使われています。

 一部の韓国人が旭日模様を軍国主義の象徴と見て反対するのには、眉をひそめてしまいます。また彼らが朝日新聞の社旗や統一教会のシンボルを取り上げないのは、何か意図があると見た方がいいのかも知れません。

 【拙稿参照】  旭日は軍国主義のマークか? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/09/06/6566528

拉致問題の怪情報2014/06/14

ある人が、北朝鮮と日本政府は週の初めに拉致被害者や特定失踪者、日本人妻などの数十人の名簿(第一次)を発表するだろうと予想した。      北朝鮮が名簿を日本側に手渡すのが土曜か日曜日で、その後本国に持ち返ってから同時発表するという。      日本側は外務省の高官で、マスコミに気付かれないように動く必要があり、平日ではバレる可能性が高い。だから土・日曜日に北朝鮮側とどこかで秘密裏に会って名簿を手渡され、発表は月曜日か火曜日になるからだという。         北朝鮮は、2002年の小泉首相訪朝の際に13人の日本人拉致を認め、うち横田めぐみを含む8人が死亡とした。北朝鮮はこれで日本側世論が軟化し、譲歩するだろうと期待したのだが、逆に極度に悪化した。この経験があるので、今度は拉致被害者をかなりの数で発表することによって、日本側世論を一気に変えようとする可能性がある。          だから横田めぐみや、他に死亡とされた拉致被害者を生き返らせて発表するかも知れない。         少なくとも、なんだ!この程度か?!と思われてしまう程度の名簿ではないだろう。もしその程度の名簿なら、日本世論はさらに強硬になると予想されるからだという。

 北朝鮮に関しては、根拠があるのかないのか分からない情報が飛び交います。 大抵が根拠のないものです。 以上の情報も、話した人は自信たっぷりでしたが、やはり眉に唾をつけて聞くものです。

毎日新聞 「“強い国”こそが寛容に」2014/06/15

 2014年6月13日付の毎日新聞に、欧州総局の小倉孝保記者がコラム『記者の目』で、「英国・アイルランドの歴史的和解 “強い国”こそ寛容に」と題する意見記事を出しました。 http://mainichi.jp/shimen/news/m20140613ddm005070003000c.html  その内容は

一方による他方の併合という「負の遺産」を両国はどう克服したのか。日韓関係を考えるうえでも参考になることがあるはずだ。   日韓の歴史的和解を語るとき独仏関係を参考にすることがあるが、独仏は互いに戦った関係だ。「併合」を経験した点でも英・アイルランド関係の方が参考になる。

というもので、英・ア関係を参考にしながら、日韓関係をどのような視点で扱うべきかを論じたものです。その部分を引用すると

日韓関係について2人(アイルランドの有識者)に聞くと、「歴史的体験を完全に払拭することはできないことを知ったうえで関係を作ったらいい」(クーガンさん)、「強い国は誇りをポケットにしまい、寛容になるべきだ」(ハーディマンさん)とのことだった。最近、日本側には誇りを傷つけられたと感じることも多い。ただ、そういうときこそ誇りを声高に主張せず、冷静に対応すべきだと私は思う。それが「強い国」の責任である。

 これは、日本は「強い国」、韓国は「弱い国」だから、我が日本の方が寛容になるべきだということです。このような考え方は、同じ毎日新聞が社説でかつて

安倍政権は韓国や中国に対しては、成熟した民主主義国家として関係改善に積極的に動き、アジアに貢献する姿を示すべきだ」(2014年02月17日付け社説)

と書いたように、日本は成熟した民主主義国家、それに対して韓国・中国はそうではないのだから、日本側から仲良くしましょうと手を差し伸べるべきだという主張と軌を一にするものです。

 これはまた、民主党政権時代に大蔵大臣・財務大臣を歴任した藤井裕久さんが 「中韓は子供と思って我慢すればいい」 と言ったのと同一レベルです。

 しかし韓国や中国はそうような見方をしていません。 韓国の李明博大統領は2012年8月に竹島に上陸し、天皇謝罪を要求した際、 「日本はかつての日本ではない」と発言しました。 つまり日本はもはや大国ではないから遠慮しないということです。 また中国も、日本は大国の地位から転落して代わりに我が中国が大国となったと露骨に主張しています。

 “溝に溺れた犬はさらに叩け”という諺があるように、韓国・中国は、大国でなくなった国の言うことなんかは聞くものではない、逆にこちらの言うことを聞かせねばならない、そしてもっと叩いて更なる譲歩をさせよう、という考え方で日本に対応してきています。

 こんな情況なのに、毎日新聞の記者が「強い国こそが寛容になるべきだ」と主張することは、韓国・中国はこれをチャンスとばかりに日本から「寛容」を引き出して自分らの要求を貫くだけでしょう。 そして我が日本側は、こちらは「強い国」なんだから「寛容」の精神を発揮して譲歩して上げるんだと自己満足するということです。

 大手の新聞記者が、日本はこんな外交をしろと主張しているのです。

 日本は韓国・中国とは対等であるから、互いを尊重した上で毅然とした態度で臨むべきだと思うのですが、いかがなものなんでしょうかねえ。

【拙稿参照】

実は韓・中を見下している「毎日新聞」社説 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/02/19/7226754

「中韓は子供と思って我慢すればいい」 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/12/27/7157809

“統一大当たり論”―バラ色の夢に酔う韓国(1)2014/06/21

 韓国の朴大統領が今年初めに「統一テバク論」を打ち出しました。 「テバク」とは韓国語で「대박」と書きます。最近流行した言葉ですので、韓国語辞典には採録されていないでしょう。 「大当たり、大儲け、幸運」の意味です。 一説では漢字語「大博」となり、博打で大儲けすることの意味だといいます。 言葉の由来はともかく、韓国では主に若者が使う流行語で、例えば新年の挨拶に「대박이 나세요(大当たりして下さい)」と言ったりします。

 この最近の流行語を朴大統領が南北統一問題に使ったので、ちょっとした話題になっていました。 それは、統一すればこんないいことがあるとバラ色の宣伝をして、統一に対して熱意を持たなくなって来ている自国民に関心を持たせ、更には北朝鮮を韓国主導の統一に引き込もうとする意図があるようです。

 こんなことは大統領の思い付きに過ぎないと思っていたら、そうではなく韓国政府内で真剣に議論されていると知って、ちょっとビックリ。

 国立外交院という部署が担当しており、この程報告書を出したそうです。『朝鮮日報』(2014年6月16日付け)に要約紹介の記事が出ていました。その記事の一部を訳してみました。

G7 統一韓国、国家ブランド価値も7位に上昇      人口8000万・世界第7位の経済国    2040年に北朝鮮住民所得5万6千ドルに    ドイツ統一より強い相乗効果    国立外交院は、南北朝鮮が2030年に平和的統一を成す場合、韓国の資本・技術力と北朝鮮の資源・労働力、ここに海外からの投資を加えて2040~2050年には人口8000万人の世界第7位の経済大国の座に上るという見通しを明らかにした。     国立外交院の『2040年 統一韓国ビジョン報告書』によれば、統一韓国はイギリス、フランス、ドイツなどG7国家の平均である人口8000万人の水準に上昇し、ここに海外の人材を積極的に迎え入れる“開かれた政策”を行なえば、現在の輸出依存型経済から内需が経済を引っ張っていくことが出来ると予測した。       また東アジア経済共同体構想を主導し、ITなど先端技術の力量と、ユーラシア大陸と太平洋を繋ぐ架け橋となる国家としての地政学的な強み積極的に活用すれば、世界第7位の経済大国として浮かび上がって来るとした。 北朝鮮の豊富な天然資源を開発し、内需の50%以上を国内で自給できるようになる。         また北朝鮮に押し寄せる海外投資が韓国の資本・技術力、北朝鮮の資源・労働力と結合して、ドイツ統一の時よりも強力な相乗効果が起きるというのである。     報告書は2040年代中頃になれば、北朝鮮住民の一人当たりGDPは韓国の70%水準である5万6000万ドルの水準に上昇するものと予想した。 2013年に854ドルの水準である北朝鮮の一人当たり国民所得は30年経つと65倍に増えるというのである。 韓国の一人当たりGDPも2万3838ドルから8万ドルに上っていく。 しかし統一が成されない場合、GDP基準で世界15位水準である韓国経済は、高齢化などで今よりもっと水準が下がるものと分析した。      国立外交院は、統一韓国が域内成長の牽引車の役割をしながら、ユーラシア大陸と太平洋の共同繁栄を先導することができるという。 中国・ロシアで塞がっていた鉄道・道路を連結し、電力網とガス管を連結することによって、中国・日本などと共に世界最大の経済圏である東アジア共同体を形成するようになり、東アジアの交通・物流・エネルギー観光の中心軸として跳躍するであろうと語った。       統一韓国が東北三省および沿海州、日本と連携すれば、3億~3億5000万人規模の実質的内需市場が開かれる効果が生まれるものと語った。       統一韓国の国際的地位も高くなり、国家ブランド価値が現在世界16位から7位まで駆け上るという見通しである。 非核平和国家、グローバル・ガバナンス先導国家、域内成長牽引車、ユーラシア大陸・太平洋の中心軸、分断克服など統一韓国の多様なイメージが融合し、国家ブランド価値が大きく上昇するというのである。 これはさらに有形無形の経済的価値を生み出すことに繋がるものと予想される。

“統一大当たり論”―バラ色の夢に酔う韓国(2)2014/06/25

統一韓国、外交・安保でもP5(安保理常任理事国)に加わることも       国際外交の先導国家となる可能性         東北アジア政治・経済統合を主導       2040年に統一韓国は経済的にG7に加わるだけでなく、外交・安保面での国際的地位も非常に高くなり、国連安全保障理事会の常任理事国になるものと予想        国立外交院は『2040年 統一韓国ビジョン報告書』で、統一韓国が外交・安保面でP5(常任理事国五カ国)に加わることもあると予想した。 100年という短い期間に産業化と民主化、分断克服をすべて成し遂げた唯一の国という点で、経済的にも外交・安保の面でも世界の指導国の資格を十分に認められるだろうという話だ。 統一を通して非核平和国家の道を進めながら、東北アジアの緊張緩和の主導国となることができるという。 東北アジアの政治的・経済的統合を主導するようになるというのだ。        P5とG7となる統一韓国は高くなった国際的地位を基に核安保、テロ、サイバー保安、環境、気候変化等のグローバルな問題の解決と国際社会の集団的意思決定に先導的役割をするものと期待される。 また開発途上国と先進国の間を橋渡ししながら新しい外交・経済的モデルを提示するだろうと予想する。 報告書は「極度の貧困と同族同士が殺し合ってきたという悲劇を経験した統一韓国は、経済的発展と民主化、平和構築、分断克服と関連する多様な韓国型開発モデルと和解プログラムを低開発国家に伝授することとなる」とした。        統一韓国は地政学的危険要因を減らすために、アメリカとは包括的な同盟関係を継続維持するが、中国・日本・ロシアとは戦略的協力関係を強化する両面政策をとるものと予想される。 これを通して大陸と海洋勢力を連結調整し、アジア・太平洋の外交・安保の中心軸国家となることができるというのだ。 報告書は、東アジア地域でOSCE(ヨーロッパ安保協力機構)のような制度化された多国間協力安保体制を統一韓国が主導するだろうと記した。

 韓国は統一すれば先進七カ国の仲間入りをし、また国連安保理事会の常任理事国になれるんだという‘夢’の「統一テバク(大当たり)論」。

 おとぎ話というか夜郎自大というか、そういうレベルのものです。 客観情勢を冷静に分析せねばならない政府部署が、こんなことを真剣に議論して報告書まで出すものなのだろうかと思います。 しかし韓国人にはこのような話が耳に心地よく聞こえるのかも知れません。

“統一大当たり論”―バラ色の夢に酔う韓国(3)2014/06/29

統一韓国、志願兵制に転換 ‥‥南北兵力182万から35万に縮小        外交部国立外交院『2040年統一韓国ビジョン報告書』       国立外交院は『2040年統一韓国ビジョン報告書』で、現在180万余人である南北韓の兵力数は統一以降、職業常備軍35万人水準まで大きく減らすものと予想した。 また統一韓国が韓・中・ロの協力を通して信頼を構築し、韓・中、韓・ロの国境両側に25㎞ずつ、合わせて幅50㎞地域に軍事力を配置しない非武装平和地帯を設定できるだろうと予想した。        統一韓国の兵力数182万→35万人           南北韓兵力数は韓国63万3000人(2013年末現在)、北朝鮮119万人(2012年1月現在)である。 南北を合わせれば、中国(228万人)よりは少ないが、アメリカ(156万人)、ロシア(95万人)、日本(24万人)より多い。 国立外交院は、これを5分の1の水準である35万人に減らし、兵力維持費を大幅に減らすことが出来ると記した。 また徴兵制が職業軍人制(募兵制)に替わり、青年労働力100万人以上を経済部門に回して生産に活用できると記した。        ドイツは統一前には兵力を西ドイツ49万5000人、東ドイツ10万3000人を維持していた。東西ドイツはアメリカ・旧ソ連・イギリス・フランスの「2+4」会談で、統一ドイツの兵力を1994年までに37万人に減らすこととし、現在は約25万人である。         国立外交院は朝鮮半島の統一時、国内総生産(GDP)に対する国防費の割合が2.6%から2%程度に低くなるなど、国防費を最大20%縮小し、これを福祉等に活用できると期待した。 今年の国防費の規模(35兆ウォン余)に照らしても、年間予算7兆ウォンを節約できる。

朝鮮半島周辺1000㎞を非核地帯に         国立外交院のこのような構想は、統一韓国が非核国家として中国・ロシアと平和的関係を維持するという見通しとかみ合っている。        報告書は朝鮮半島を中心に1000㎞以内に核兵器配置を禁止する非核地帯 を構築して、地域内平和体制を先導することができるというのである。更には東北アジアで射距離3000㎞以上の中長距離弾道ミサイルを完全に除去する内容の協定を主導する必要があると記した。 この場合、中国東部海岸とロシア極東地域にある弾道ミサイル基地が中国内陸やシベリア北西部の方に移動する効果が生じる。         報告書はまた統一韓国が、中国・ロシアが参加する多国間安保協力体制を構築するのに触媒の役割をするだろうと見通しを立てた。 統一韓国と中国・ロシアの安保協力は、アメリカ・日本の対中国・対ロシア関係にも密接に関連することになる。       現在中国はアメリカのアジア回帰戦略を対中国閉鎖政策と見なして対応しており、韓国とアメリカのミサイル防御協力問題に敏感になっている。 ロシアはウクライナ事態以後、アメリカに対抗して中国と軍事協力を強化している。中国とロシアは、日本と領土・領有権紛争中である。           国立外交院の崔ウソン教授は「南北韓の在来式兵器と大量殺傷兵器縮小過程で、周辺国の兵器縮小も一緒に進めるように説得することができる」と語った。 崔教授は「韓国はアメリカの同盟国であると共に、中国と戦略的協力同伴者関係を維持している」「統一韓国はアメリカと中国の間で仲裁者としての役割を果たし、地域安保に寄与することができる」と語った。

3000人の常備平和維持軍が必要        国立外交院は統一韓国に対する国際社会の期待が高まるものと予想した。 この期待に応えるために、海外で流血衝突などの紛争が発生した時、即刻に投入することが出来る3000人規模の常備平和維持軍を維持せねばならないという。 現在韓国は国連平和維持活動(PKO)637人等、全部で1450人を海外に派兵しているが、常備体制ではない。 国立外交院は、統一韓国が国際災害および救護部門でも先導的役割を果たさねばならないとした。

 統一韓国は「朝鮮半島を中心に1000㎞以内に核兵器配置を禁止する非核地帯を構築して、地域内平和体制を先導」し、「東北アジアで射距離3000㎞以上の中長距離弾道ミサイルを完全に除去する内容の協定を主導」するというのですねえ。 韓国は東アジアの盟主になるんだという決意表明のようです。 こんな夜郎自大としか言いようのない話を、酒席の与太話ではなく、外交を担当する部署が業務としてやっているとは、ビックリです。

 こうなったら北朝鮮も対抗して、偉大な金正恩将軍様の革命領導によって朝鮮統一の偉業を成し遂げ、凶悪な帝国主義との闘いに勝利して国際平和体制を樹立し、世界の人民は将軍様の慈愛深い懐の中で幸せに暮すことになる、とか言い出すんじゃないでしょうかねえ。