北朝鮮の手の上で踊った韓国の民主化運動2014/06/07

 拙ブログに次のようなコメントが投稿されました。

韓国のその時を生きた人達がまだたくさん生きています。       「アカ」という名のもとに、人権が蹂躙されていた時代です。         tsujimotoさんはその時、韓国で生活していたのでしょうか? その時、韓国語が理解できたのでしょうか?当事者が身近にいたのでしょうか? 自由を求める人がすべて「アカ」でしたか。 あの時代の絶望がわかりますか。

韓国映画 『南営洞1985』  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/05/20/7316008

 1970~80年代のいわゆる軍事独裁政権時代、民主化運動が盛んでした。 当時の朴正熙・全斗煥大統領は軍人出身で、その政治手法はおよそ民主主義とは程遠いものでした。 これに対して反独裁・自由を求めて民主化運動が起きるのは当然なことでした。

 しかし問題を複雑化させたのは、この民主化運動に北朝鮮が関わっていたことです。 北朝鮮の金日成は、1970年の第5回労働党大会で次のように述べています。

(朝鮮)北半部人民は同じ民衆として、南朝鮮人民の革命闘争を積極的に支持応援すべき義務と責任をもっています

 ここでいう「南朝鮮人民の革命闘争」とは、まさに民主化運動を指します。 だから北朝鮮は南朝鮮(韓国)の民主化運動を、国家を挙げて「支援応援」すると明言したのです。 つまり北朝鮮は、南朝鮮解放路線(赤化統一)に民主化運動を位置づけたのでした。

 民主化運動をしていた人は純粋に独裁を終らせたいだけで主観的には北朝鮮とは関係ないと思っていたとしても、現実には北朝鮮が支援応援していました。 具体的には工作員の潜入や民主化運動指導者のオルグといったような秘密裏に行なう支援から、賞賛の言葉だけで応援する場合まで、様々な形態の支援応援をしました。

 当時の韓国は独裁国家と言ってよかったのは確かですが、それでも野党が存在し、一定範囲内では言論・思想の自由がありました。 一方北朝鮮は言論・思想の自由が一定範囲どころか全くないところでした。 ましてや野党の存在はあり得ません。 韓国を軍事独裁ファッショ政権と批判するなら、北朝鮮はもっと過酷でエゲツない軍事独裁ファッショ国家です。 

 しかし韓国で民主化運動を果敢に闘っていた人たちは、このような北朝鮮を批判することがほとんどありませんでした。 民主化運動の理念からすると、韓国だけでなく北朝鮮の民主化にも取り組むべきものですが、そんなことはしませんでした。 そして北朝鮮の金日成が自分たちの活動を支援応援すると表明していたことに対し、彼らはダンマリを決め込んでいたのでした。

 韓国の民主化運動はなぜ北朝鮮の民主化に取り組まなかったのか、あるいはまた自分たちが北朝鮮と関係のないことを示すパフォーマンス (例えば金日成の写真を焼くなど) をしなかったのか。

 結局は、韓国の民主化運動は北朝鮮の手の上で踊っていたと言わざるを得ません。

【拙稿参照】

1970~80年代の韓国民主化闘争 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2011/01/16/5639024

1970年代の北朝鮮=総連の手口 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2011/11/12/6199653

韓国に親北民主政権=人民革命政権が樹立される可能性                 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/02/01/6315655

自主的、民主的、平和的統一  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/04/22/6421457

『現代韓国を学ぶ』(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/06/02/6465710