蓮舫の二重国籍問題―産経の間違い ― 2016/10/14
蓮舫の二重国籍問題で、国籍選択宣言をしたことが書いてある戸籍を何故見せないのか、という主張が目立ちます。 特に産経新聞が執拗に書いています。
http://www.sankei.com/politics/news/161013/plt1610130047-n1.html
民進党の蓮舫代表は13日の記者会見で、日本国籍と台湾籍のいわゆる「二重国籍」問題をめぐり、国籍法に基づき日本国籍を選択する宣言をした時期について明言を避けた。蓮舫氏は宣言日が明記された戸籍謄本を公開しない考えを示しているが、安倍晋三首相は13日の参院予算委員会で「自身の責任で、国民に証明する努力をしなければならない」と対応を批判した。(清宮真一) ‥‥‥国籍法14条は、20歳未満の人が日本国籍と外国籍の二重国籍になった場合、22歳になるまでにいずれかの国籍を選択しなければならないと規定している。かつての蓮舫氏のように、外国籍のみを有する人が日本国籍を単独で取得する場合、(1)日本国籍を取得(2)日本と外国籍のどちらを選択するか宣言(3)日本国籍を選ぶ場合、速やかに外国籍の離脱手続きを行い、手続きを終えた証明書を自治体に提出する-という手順を踏まなければならない。
この最後にのところにある「踏まなければならない手順」が間違いです。 蓮舫は17歳の時に(1)の日本国籍の取得をしましたが、国籍法によれば、その後のすべき手順は(2)の国籍選択宣言か、(3) の外国籍の離脱かの二通りの方法のうちを一つをする、ということです。 この産経の記事のあるような(1)→(2)→(3)という手順だけでなく、(2)のない(1)→(3)の方法をも提示しているのが国籍法14条16条です。
第十四条 2 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。
第十六条 選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。
つまり産経は国籍法を間違って解釈して、蓮舫を批判していることになります。 ところで蓮舫は実際にどのような手順を踏んできたのか。 彼女自身は次のように述べています。
「私は日本国籍を取得した時点で、全ての事務作業が終わったと思っていた」と説明。
つまり上記の産経記事を使って言えば、(1)の日本国籍取得に留まって、それ以上のことはしていない、ということです。 だから(2)の国籍選択宣言も(3)の外国籍の離脱もしていなかったのです。
産経は「蓮舫氏は宣言日が明記された戸籍謄本を公開しない考えを示しているが」と書いていますが、宣言そのものをしていないのですから、そんなことは戸籍に明記されていません。 明記されていないのに明記しているんだとして公開を迫るのはいかがなものか思います。
しかし産経は次のように書いて批判を繰り返します。
http://www.sankei.com/politics/news/161013/plt1610130038-n1.html
国籍法で義務づけられた日本国籍の選択を宣言した時期への言及を避け続けた。
蓮坊は国籍選択の宣言をしていないと言ってるのに、何故このような批判になるのか、理解できないところです。
産経のことはこれで終わりにして、次に蓮舫はこれが問題化した最近になって、台湾籍の離脱手続きをしたと言っていますから、今は(3)の「外国籍の離脱」の段階が終了したことになります。
この次にすべき手続きは、台湾籍の離脱を日本の役所に届けることです。 これについては蓮舫は次のように述べています。
http://www.sankei.com/politics/news/161006/plt1610060046-n1.html
「ただ今回、いろいろご指摘があって、台湾籍が残っていることが明らかになったので、台湾籍の放棄を急ぎ、実際に籍が抜けたことになったので、区役所に届けたまでだ」と述べた。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2890048.htm
届け出による日本国籍の取得をしました。(戸籍法)106条にのっとって適正な手続きをしているところ」(民進党 蓮舫代表)
この戸籍法106条とは次の通りです。
第一〇六条 外国の国籍を有する日本人がその外国の国籍を喪失したときは、その者は、その喪失の事実を知つた日から一箇月以内(その者がその事実を知つた日に国外に在るときは、その日から三箇月以内)に、その旨を届け出なければならない。 2 届書には、外国の国籍の喪失の原因及び年月日を記載し、その喪失を証すべき書面を添付しなければならない。
現在、この手続きが進行中ということです。このことが実際に戸籍に記載されるまでは、もう少し時間がかかるようです。
蓮舫が(1)の日本国籍取得によって二重国籍になったら、22歳までに国籍選択をしなければならないのに、それを怠ったという批判があります。 これはその通りなのですが、本人がこれで全て済んだと思い込んでいますから、悪意があるものではありません。 こういう場合には、日本の法律は親切なもので、戸籍法104条の3と国籍法があります。
第一〇四条の三 市町村長は、戸籍事務の処理に際し、国籍法第十四条第一項の規定により国籍の選択をすべき者が同項に定める期限内にその選択をしていないと思料するときは、その者の氏名、本籍その他法務省令で定める事項を管轄法務局又は地方法務局の長に通知しなければならない。
第十五条 法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期限内に日本の国籍の選択をしないものに対して、書面により、国籍の選択をすべきことを催告することができる。
蓮舫の場合、国籍法に基づく「催告」をされていません。 おそらく、それ以前になされるべき戸籍法104条の「通知」もされていないでしょう。 つまり22歳を過ぎても国籍選択しない二重国籍者に対してなされるべき行政側の業務が何もなされていないのです。
本人は全て済んだと思い込み、行政は何もしなかったのですから、自分が二重国籍であることに気付いてこなかったのです。 この問題、一概に蓮舫本人の責任に帰すべきことではないでしょう。