二重国籍は複雑で難しい2016/10/20

 民進党の蓮舫代表の二重国籍問題については、拙論で「大きく問題にするほどのことではない」と論じました。 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/09/8176022

 しかし一部では二重国籍を有すること自体が悪いことのように執拗に主張しており、また維新の会が国会議員等の二重国籍禁止法案(別名を蓮舫法案というらしい)を出したそうで、問題が大きくなっているのにビックリします。

 国際交流がこれだけ進んできますと、結婚や認知、養子などの国籍が関係する身分行為がそれだけ多くなるし、また子供が生まれる場所が日本でないことも多くなります。 とすると、日本人でありながら外国籍を有する場合(=二重国籍)がかなりの割合で高くなっています。

 国籍の定めは各国の主権に属するものですから、世界約200ヶ国とすれば200種類の国籍法があります。 しかも国籍法はどの国も不変ではなく、時代によって変化しています。 だからどのような場合に二重国籍になるかは様々なケースが考えられ、各国の国籍法を調べると、へー!こんな時に二重国籍になるのかと感心というかビックリする場合もあります。法律上で考えられるケースで例を二つあげてみます。

① 日本人と韓国人の夫婦がアイルランド航空に乗ってアメリカ上空を飛行中に産気づき、子供を産んだとします。 この子供の国籍はどうなるか。        まず両親が日本人と韓国人ですから、国籍父母両系主義によって日韓の二つの国籍を持ちます。 次にアメリカの領空内で生まれたということはアメリカの主権領土内で出生したことになりますから、国籍生地主義によりアメリカ国籍なります。 さらにアイルランドも生地主義ですが、この国は自国の飛行機や船も領土の延長と考える国で、従ってアイルランド航空機内で出生した子供はアイルランド国籍になります。        以上により、この子供は日本・韓国・アメリカ・アイルランドの四重国籍者です。 これは実際例ではありませんが、法律を読むとこんな場合が想定できます。二重国籍でも手間や扱いが複雑なのに、四重国籍は本当に大変でしょうねえ。

② 次に北朝鮮の国籍法を読んでみます。この国は蓮舫さんの台湾と同様に国家として承認されていませんので、法律上は台湾と同様に扱うべきものです。 台湾籍を「国籍」と見なすなら、北朝鮮籍も「国籍」と見なさねばなりません。         北朝鮮は韓国人を含む全朝鮮人を我が公民としています。 従って在日朝鮮人(韓国籍も含めて)はすべて北朝鮮の国籍を有していることになります。 そして北朝鮮は国籍の除籍(離脱と同じ)は最高人民会議常任員会が決定するとなっています。         今まで日本に帰化した韓国人約35万人でこの手続きをした人はおそらく皆無でしょうから、この人たちについて北朝鮮は、我が国の法律に照らして彼らは我が国の国籍を有していると主張することが可能です。 つまり帰化した韓国人は韓国籍から離脱していても北朝鮮国籍が残っており、日本と北朝鮮の二重国籍者になるわけです。

 上述は私が勝手に特定の国を拾い上げて、法律上二重国籍が想定できる例を作ってみました。 200の国があれば200の違った国籍法がありますから、二重国籍になるケースは膨大な数になります。 国際交流が進めば進むほど二重国籍者は増え、一体この人は二重国籍なのかそれとも単一国籍なのか、あるいは他にも国籍を有する多重国籍ではないか、などと首をひねる場合も多くなります。

 各国の国籍法を読んで、どういう場合に二重国籍になるかを想像するのは頭の体操としていいのかも知れませんねえ。 自分は単一国籍者だと思い込んでいる人でもよく調べてると二重国籍だった、という例がいっぱいあるでしょう。

 蓮舫さんの場合でしたら台湾が国家承認されておらず台湾籍は国籍ではありませんので、法律上は二重国籍ではありません。しかし見方によっては二重国籍にもなります。 要するに蓮舫さんの国籍は変てこりんな状態でした。

 それぐらい国籍法は複雑で難しいということです。 二重国籍禁止法案なんて本当にできるのか、疑問です。