朴大統領は退陣するか?2016/11/19

 韓国では朴大統領の親友とされる崔順実の事件で、大変なことになっています。 大統領は国民の支持を失い、国会では与党からも見放されて、ほとんど孤立無援状態です。大統領は謝罪会見ではかなり疲れ切った表情をみせていました。 精神的に追い込まれているようで、極端な行動に出なければいいが‥‥と思いました。

 ところで国や野党、マスコミが大統領退陣を要求し、与党までもが同調しています。 退陣とは大統領職を辞任するという意味ですが、韓国の憲法を読むとこれは可能なのかと疑問になります。

 実は韓国の憲法には、大統領が任期途中で自ら辞任することは想定されておらず、果たして大統領が自分の意志で辞めることが出来るのか疑問なのです。 大統領は死ぬか弾劾か等の特別な事情がない限り任期を全うするというのが憲法の考え方ですから、任期途中の辞任は憲法の枠組みから外れるものです。

 憲法に基づいて民主主義的に選出された大統領が、デモ等の圧力によって憲法に基づかない辞任をするとなれば、これは革命かクーデターと同じことでしょう。 憲法を守るなら憲法に明記されている弾劾の手続きをすべきだと思うのですが、野党が弾劾に反対しています。 反対の理由がよく分からないのですが、弾劾に必要な国会議員の三分の二以上の賛成が見込めない、あるいは憲法裁判所の採決に必要な六人(裁判官は九人であるが、来年初めに二人が任期切れで辞めるので、七人中の六人の賛成が必要となる)が見込めない、例え見込みがあったとしても半年以上かかる、というのが理由のようです。 要するに野党側に有利な状況下で弾劾が成立するのか分からないし、弾劾を提起して成立しなかったら今度はこちらが打撃を受ける、これが本音の理由だというのですが、どうなんでしょうかねえ。

 朴大統領は形の上でお飾りとして留まって、実質権限をすべて大統領代行者である首相に任せる案もあるようです。 しかしこれも憲法に沿うものか、疑問です。 首相は大統領を代行できますが、それは「大統領が欠位になり、又は事故により職務を遂行することができないとき」(第71条)に限られます。 体がいたって健康で書類を読むことができて官邸に常住する大統領がいるのに、その業務を首相が代行できるのか、憲法上においてかなり疑問です。 こんな体制になれば、お飾りでも大統領は憲法に定められた強大な権力を行使することが可能ですから、かえって混乱を呼ぶように思えるのですがねえ。

 朴大統領はこのまま辞めることなく任期を全うすることも考えられます。 この場合は国民からの支持がほとんどなく、国会で与党からも見放されたまま残りの任期1年4ヶ月の間、大統領職を続けることになります。 これまで選挙等が正常・常識的に行なわれてきた民主主義国家ではこんな事態が長期間続くことは極めて珍しい例となりますので、これはこれで興味深いものです。