昔読んだ懐かしい一文2017/07/07

 本棚に積ん読していた鄭大均『韓国が「反日」をやめる日は来るのか』(2012年12月 新人物往来社)を取り出して読んでいると、1970年代に宋建鎬という方の次のような一文が紹介されていて、これは私も読んだことがあると思い出し、懐かしく思いました。

海外へ出たことのある人なら、20・30人と群れをなして観光旅行をする日本人を見かけたことがあるに違いない。日本人は海外へ出かけるとき集団でいくことが多く、単身でいくのを見るのはむずかしい。彼らには妙なコンプレックスがある。語学力の不足からくるのかもしれないが、個人的に接するときは比べるべくもないくらい善良な彼らがいったん集団になるや、たとえようもないくらい残忍非道な行為を平然とやってのける。このような性向は激しやすいその国民性とあわせて、いっそうあらわになってくる。(142~143頁)

 鄭さんによれば、これは1973年に発表され、1975年に日本語に翻訳されて『アジアからの直言』という本に所収されています。

 当時の日本は海外旅行の自由化がなされて数年ぐらいしか経っていない時期で、海外旅行先で恥をかく日本人がよく報道されていました。 特に揶揄されていたのが、農協が扱っていた団体旅行でした。

 例えば、バスで田舎道を移動中、バスを止めさせてぞろぞろと下りて、道端に並んで畑に向かって一斉放尿。 現地のガイドさんがビックリ仰天したという話。

 土産を買おうとちょっと高級な店に立ち寄った出来事。 このごろは見かけなくなりましたが、中高年男性は財布や貴重品を腹巻に入れる人が多い時代でした。 土産を買う際に女性の店員さんの前で、腹巻から財布を出そうとベルトを外し、ズボンのチャックを下したという話。

 おそらく実話で、我が日本人は何と野蛮な国民なのかと慨嘆していたので、あの韓国人の一文も成程そうだと納得して読んでいました。だから記憶に残っていたわけです。

 しかしよく考えてみれば、海外旅行に慣れていない時代でしたから団体旅行が多いのは当然のことだし、その際に様々なトラブルが生じるのは仕方のない面があります。

 近頃の日本では中国からの旅行客のマナーの悪さが話題になることが多いです。 私も一日百万人以上の乗降客のある駅前の交差点で、子供に堂々と立小便させている母親を見て、目が点になりました。

 しかし日本人も数十年前に海外で大恥をかいていた時代があったのです。 だから、彼らはまだ海外旅行慣れしていないのだなあ、いずれ落ち着いていくのだろうと思います。

 少なくとも国民性や民族性と結びつける議論は、してはならないことです。