私の国籍研究史(7) ― 2017/08/23
世界中の国の国籍法には、国籍離脱の定めのない国があります。 つまり国籍離脱ができないのです。 ブラジルやペルーなどですが、最近フィリピンもそうなったと聞きました。 それでは例えば両親が日本人で、たまたまブラジルで子供を出生したとしましょう。ブラジルは国籍出生地主義ですから、ブラジル国内で生まれた子供はすべてブラジル国籍を取得します。 従ってこの子は日伯の二重国籍になります。
そしてブラジル人は国籍離脱できませんから、この子は日本で一生二重国籍者として生きていかねばなりません。 もし二重国籍立候補禁止の法律ができれば、この子は日本国籍を有しながらも日本の議員になる権利がなく、またその権利を得る道も閉ざされることになります。
またヨーロッパでは二重国籍を容認する国が多いですが、逆に国籍離脱が難しいことになります。 これは前に書きましたように兵役と関係があります。 要するに兵役に就いたことがない人は国籍離脱が許可されないのです。 こんな国と二重国籍となっている日本人は、日本単一国籍にしようとしてもその国の兵役を終えないと国籍離脱できないことになります。
だったらその国の兵役に就いて国籍離脱すればいいじゃないかと思われるかも知れませんが、今度は日本の国籍法により他国の兵役(公務員)に就くと日本国籍を喪失することになるでしょう。 つまり日本国籍を維持しようと思えばいつまでも二重国籍のままで行くしかありません。 もし二重国籍立候補禁止の法律ができれば、本人がいくら努力しても日本の議員になる権利がないことになります。
本人の意志で二重国籍になったのなら構わないでしょうが、生まれついた時に既に二重国籍で、それを本人の努力では解消できない場合があります。 彼らに被選挙権がないというのは生まれによって差別するもので、憲法第44条に違反します。
そうなのです。 二重国籍立候補禁止法案は違憲なのです。
【ご注意】 拙文で使っている用語。
「積極的な二重国籍」=(複数のパスポートを所有するなど、二重国籍の権利を生かしている者)
「消極的な二重国籍」=(二重国籍を知りながら単一国籍として行動している者。あるいは二重国籍の権利を行使していない者)
「潜在的な二重国籍」=(二重国籍だがその証明が困難な者。あるいは二重国籍であることに気付いていない者)
これらは二重国籍を説明するために私が作った言葉です。 念のため。 しかし割と分かりやすい言葉だと思っております。
私の国籍研究史(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/07/30/8630904
私の国籍研究史(2) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/08/03/8638755
私の国籍研究史(3) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/08/07/8641528
私の国籍研究史(4) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/08/11/8644295
私の国籍研究史(5) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/08/15/8646853
私の国籍研究史(6) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/08/19/8650171
コメント
_ 河太郎 ― 2017/08/23 09:57
_ 日本国公民 ― 2017/08/26 01:37
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憲法上の権利は無制限でありません。権利どうしの衝突がある時は別の原理で優劣が決まります。
議員という個人の権利と二重国籍者議員がもたらす国益棄損を比較考慮した場合、国益を優先させる考えは合理性があります。二重国籍者に議員という特権を認めないことは、個人の権利の制限理由として合理的です。
憲法の認める権利は無制限ではなく、公共の秩序と福祉という大原則の範囲で認められます。
言論の自由も、プライバシーの侵害や名誉棄損に至る場合は認めていないのがその典型です。
外国が自らの国益のために採用している国籍出生地主義や国籍離脱不可制度に何も日本が合わせる、譲歩する理由も合理的必然性もありません。
国籍強制付与制度や国籍離脱不可制度が、むしろ個人の意思を無視した非人道的、非人権的なものであるので
あり、それらを尊重するというのがオカシイのです。
二重国籍問題が世論の関心を呼び起こし、ブラジル、ペルー、アメリカなどの国籍制度の実態が広まることが、
無知のために国籍問題に泣く日本人を減らすことになるでしょう。
国の制度に個人が思いもかけず翻弄される危険は個人が回避するしかありません。
かって予備校で数学講師が言った言葉が強く印象に残っています。
この公式を知っているか否かで人生が変わるのだぞ!