最初の韓流ブーム2018/08/06

 韓流ブームといえば、2003年の「冬のソナタ」から始まったとされています。 確かに冬のソナタの「ヨン様」は韓国への関心を爆発的に高めました。 特に日本の中高年女性がこのブームを牽引し、日本各地の韓国語教室は彼女たちで超満員となったものでした。

 ところでそれ以前はどうだったのでしょうか。 1960年代までは、日本人で韓国に関心を持つ人はほとんど全くいなかったと言っていいでしょう。 左翼・革新系の人たちは社会主義国北朝鮮への幻想を有しており、いずれ韓国は北朝鮮によって統一されて消滅すると信じていましたから、韓国への関心を持ちませんでした。 また右翼やヤクザの一部では裏側で韓国と人的交流があったようですが、極めて特殊な場合でした。

 韓国が日本人の関心の対象となったのは、やはり1965年の日韓条約締結後のことになります。 時の朴正熙政権が、日本から資本と技術を導入して産業化を図るという経済政策を推進しましたから、日本から主に産業界の人士が多く訪韓し、韓国人と交流し、韓国文化に接したのでした。 それまで皆無と言っていい程だった韓国への関心が、この時から始まったのです。 従ってこれを、最初の韓流ブームと言えると思います。

 それではこの当時に訪韓した日本人は、韓国へどのような関心を持ち、どのような交流を展開していったのかです。 そこには今では信じられないような交流があったことは、皆さんの記憶に止めてほしいと思います。 

 安福基子『赤坂魔境』(亜紀書房 1994年10月)に次のような記述があります。

1965年日韓会談が成立すると、日韓経済交流が始まった。    69年9月、日韓合弁企業の第一号韓国工作機械株式会社が釜山に設立されたのをかわきりに、安い賃金の労働力を求めて日本企業の韓国進出が猛烈な勢いで広がった。 経済協力とビジネスの看板を背負って韓国入りした日本の男たちが、最初に覚えたのが女遊びだった。

60年から70年は、日本企業の駐在員の大半が韓国人の現地妻を持った時代だった。 一方で、軍事政権は外貨稼ぎとして観光客を誘致した。 その目玉商品が妓生だった。 たちまち日本の男たちが、団体で韓国旅行に走った。 売春ツァーである。

70年代になると、本場で韓国女と遊びなれた日本の男たちが、コリアンクラブを占領しはじめた。 コリアンクラブ・ブームの幕開けだった。  日本の歓楽街で市民権を得たコリアンクラブめざして、女衒会社である芸能プロダクションがあの手この手で女たちを運んできた。 (以上 20~21頁)

 その後、日本はバブル経済に浮かれ、国内のコリアンクラブは盛行を極め、また韓国への買春旅行も盛んでした。 当時韓国へ行く飛行機乗客の大半が男性で、たまたま乗り合わせた日本人女性が、周囲の男性が女を買う話ばかりするのでビックリして怖くなったと話していたことを覚えています。

 またある日本人女性は、ソウルのホテルのエレベーターで偶然に乗り合わせた日本人男性二人がこっちを韓国妓生と思い込んで、今度はこんな太っちょの女もいいなあ、などと日本語で話し合っていたという体験談をしてくれました。 エレベーターから降りる際に、私は日本人なんですがねえ、と言ったら顔色を変えて追い掛けてきて、すまん、誤解しないでくれと言ってきたが、余りに腹が立って無視したそうです。

 このころの日韓交流は男性が中心で、このように性的な交流が大きな比重を占めていました。 これが最初の韓流ブームと言えるでしょう。 そしてこの交流の味が忘れられない日本人男性は、バブル後も形を変えて交流します。 同じく安福基子『赤坂魔境』です。

1989年ごろから、日本の男たちが数人寄り集まって、韓国で女を囲っている話を聞くようになった。   それ以前は韓国に妾を囲うのは、大手企業の駐在員や中小企業の社長クラスの流行だった。 ところがバブル経済が弾けた後の不景気から、少ない金で今まで通りの女遊びを考えだしたのが、共同妾ということらしい。

私の知人の男も、仲間五人で、一人三万円ずつ出しあい、十五万円の手当てでソウルに一人の女を囲っていた。彼らはゴルフに行く、ちょっと観光、といっては入れかわりたちかわり韓国通いをした。 共同とはいえ、たった三万円で女房の目が届かない海外に、専用の女が持てるのだから、男として有頂天になるのも当然だろう。 帰って来ると、微に入り細に入り女との関係を、人前で話しては自慢した。 (以上 ⅰ頁)

 当初の韓流ブームは1990年代までの長い間、このような性的なブームだったのです。 それが2000年代に入って「ヨン様ブーム」となりましたから、何と明るい日韓交流だろうと感心すること、しきりです。 韓流ブームは中年男性から中高年女性へと主役が替わり、‘暗くて陰湿’から‘明るく健康的’へと質が変わったと言えます。 

 そして韓国からの日本旅行者は年間700万人と、韓国国民7人に1人の割合です。

 以上のことを思うと、これからの日韓関係は庶民の交流レベルではもっと楽観的に見てもいいのではないでしょうか。

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