4・3事件-南労党を隠ぺいする読売解説2018/11/19

 読売新聞2018年11月18日付けに、4・3事件犠牲者の慰霊碑が大阪に建てられたという記事が載っています。 https://www.yomiuri.co.jp/local/osaka/news/20181117-OYTNT50123.html

 この記事で私が一番大きな違和感を感じたのが、4・3事件の一方の主役であった南労党(南朝鮮労働党)が全く出て来ないことです。 事件の解説は次のようになっています。

◇四・三事件 1948年4月3日、朝鮮半島の南北分断につながる「南朝鮮」単独での総選挙に反対する島民らが警察署を襲撃。54年にかけ、軍や警察による鎮圧で、島民3万人が犠牲になったとされる。文在寅大統領は今年4月3日の追悼式典で「国家による暴力」だったとして謝罪した。

 4月3日に警察署を襲撃したのは、南労党という共産主義者組織の武装隊(遊撃隊、山部隊ともいう)だったのですが、記事ではそれを「島民らが襲撃」と記したところに大きな誤解を生むものと考えます。 更には、これは歴史の隠ぺい・ねつ造と言ってもいいのではないかとさえ思います。 なぜなら記事では、事件をまるで「軍・警察」対「島民」の対立のように描いているからで、 実際は「軍・警察」対「南労党」の対立だったのです。

 4・3事件はこの読売記事に限りませんが、警察や軍による白色テロばかりがクローズアップされて、南労党による赤色テロが全く無視されているのは、いかがなものかと思います。 「軍や警察による鎮圧」という白色テロが過酷なものだったのは間違いないですが、南労党の武装隊による赤色テロもまた過酷なものだったのです。 両方を見てこそ事件の真相が理解できるものでしょう。 

 赤色テロに関しては、下記の拙稿を参照頂ければ幸甚。

【拙稿参照】

済州島4・3事件の赤色テロ(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/06/10/8890890

済州島4・3事件の赤色テロ(2) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/06/18/8896622

済州島4・3事件の赤色テロ(3) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/06/23/8900976

済州島4・3事件の赤色テロ(4)-警官家族へのテロ http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/06/30/8906338

済州島4・3事件の赤色テロ(5)―右翼家族へのテロ http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/07/05/8909472

済州島4・3事件の赤色テロ(6)―評価は公平に http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/07/10/8912907