若者世代の大きな変化2019/07/30

少年犯罪統計

 インターネット記事を見ていたら、少年犯罪が2003年以後に急速に減っているという統計がありました↑。 その減り方があまりに劇的です。 10万人当たりの検挙少年が2003年に16人、2017年に4人と、15年ほどの間に四分の一に減っているのです。 少年というのは学年で言えば小学校高学年くらいから高校卒業時くらいまでですから、この世代は今10代後半~30代前半の若者世代ということになります。 犯罪が減っていることは非常に喜ばしいのですが、何故そのような現象が起きているのか、その理由がなかなか分からないようです。

 ところでこの世代のもう一つの特徴は、安倍政権への支持率が他世代よりはるかに高いことです。朝日新聞の『論座』がこれを取り上げていました。

https://webronza.asahi.com/culture/articles/2019071600014.html?page=1

リベラルな若者が政権を支持するネジレの謎を追う   イデオロギーを凌駕する「権威ファースト」の出現

若者の安倍政権支持率はあらゆる世代の中で最も高い――。

もはや常識と化したこの傾向に対して、「なぜ、若者は政権を支持するのか」という視点の分析記事がたくさん出ています。     私は、そのような記事を見つけ次第、なるべく目を通してきました。確かにどの記事も一部の若者の声を代弁していますが、その一方で、何かまだ一つ、決定的なピースが欠けているように感じるのです。

若者の権威主義化の問題を指摘しています。儒教的な上下関係の概念が根強く残り、人権、個人の尊厳等に対して理解の乏しい日本でその特徴がより強く出るのも頷けます。 ‥‥つまり、「自分の政治的価値観ファースト」ではなく、「権威ファースト」です。これが、リベラルな価値観の強いはずの人までもが安倍政権を支持するという「ネジレ現象」が生まれるクリティカルな要因のように思うのです。

 記事は若者世代が安倍政権を支持するのが理解できず、何とか理由を求めようとしています。 それが「権威ファースト」だそうです。 これによれば若者世代には権威に阿るような「権威ファースト」が生まれているとありますが、果たしてそうなのでしょうか? また若者世代の権威ファーストが「儒教的な上下関係の概念が根強く残っている」ことに源を求めるのは、いかがなものなのでしょうか?

 若者に「儒教的な上下関係の概念」が残っているのなら、漢文授業で孔子をいっぱい学んだ高齢者にはもっと強く残っているはずです。 しかし記事では高齢者世代よりも若者世代に「儒教の概念」が強く残っているとしており、とても信じられるものではありません。 学校の運動クラブや職場などでは監督や上司・先輩に絶対服従するような「権威ファースト」がありますが、これは若者世代も高齢者世代も変わりないでしょう。 「権威ファースト」を世代論的に論じるは間違いだと言えます。

 「権威ファースト」が若者の特徴だと言うのは根拠となるデータがないもので、単にそんな風に見えるという印象論です。 これは老人が「近頃の若い奴は、なっとらん」と繰り言を言っているのと変わりありません。 客観的事実は、この若者世代の現政権支持率が他の世代よりもはるかに高いということだけです。

 ところで更に、若者世代はいわゆる「ゆとり世代」と重なります。 狭義の「ゆとり世代」は2002年以降に実施された学習指導要領に基づく教育を受けた世代です。 小学校から高校までの12年間のうち、この‘ゆとり教育’を受けた「ゆとり世代」は、今は20代~30代前半ですから、まさにこれまで論じてきた若者世代です。 「ゆとり教育」は、実施期間は短かったですが、意外と大きな影響を与えていると言えるかも知れません。

 世間には若者世代の特徴を表現するものがありますが、たいていが客観的ではありません。 自分の体験やニュースを見ての感想程度の主観的なものが多いようで、参考になりません。 例えば上述の「権威ファースト」論なんかは、その典型例です。

 客観的データに基づくと、この世代の特徴は、①少年犯罪が少ない、②現政権支持率が高い、③ゆとり世代である‥‥ということは言えそうです。 他にもデータに基づいた特徴を探せば色々出てくると思われます。 しかしこれらにどんな相関関係があるのか? これをうまく説明してくれる論者がいませんねえ。

 これから10年・20年経つと、この世代が各界の指導者となって社会の中枢を担います。 その時に日本は、今の日本とは相当に違った社会様相を示すことになるではないでしょうか。