日本語版『反日 種族主義』で抜け落ちた章節(6)2020/03/06

 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/02/25/9217537 の続き

 17章の後半です。 今回で終わりです。

機会主義で一貫する高宗

高宗は体の調子が悪いと言って謁見を拒否して大臣たちと御前会議を開き、林公使は休憩室で待つ状況になりました。この日の御前会議で高宗は「伊藤大使が言うには、今度の条約文と関連して字句を加えたり直そうとすれば協議の道があるが、拒絶すれば隣国間で良好な関係を維持できないという。条約の字句を変更することが可能なようだ」と発言した。

御前会議が終わり、大臣たちが休憩室に出ると、林公使が会議の結果を尋ねました。韓圭卨は「皇帝陛下は協議して、ちゃんと処理せよとの意で指示しましたが、私たち8人は反対意見を繰り返し申し上げました」と答えた。林公使は「あなたの国は専制君主国であるから、皇帝陛下の指示があったならば、この条約はそのまま締結されねばならない。8人の大臣らが陛下の命に背くのか?こんな大臣らは朝廷に置くわけにいかない。特に参政大臣と外部大臣を変えなければ」と暴言を吐きました。

11月17日午後8時頃、伊藤特使が朝鮮駐屯軍司令官を率いて宮中に入りました。伊藤が高宗に謁見を要請しましたが、高宗は「大臣たちに、協商してよく処理するように命じたので、大使が妥協の方法を解き明かしてやること望む」というメッセージを送ります。高宗のメッセージを受けた伊藤は、韓国の大臣たちと会議を開き、個々人に条約締結についての賛成反対意見を問いました。高宗の了解の下に、伊藤特使が大臣会議を主管するという、とんでもないことが起きたのでした。その結果、条約の締結に反対する大臣は、参政大臣の韓圭卨と度支部大臣の閔泳綺の二人で、残りの六人は賛成あるいは黙示的賛成の立場を見せました。

しばらくして、高宗は「条約文のうち、加えたり削るところは法部大臣が日本の大使、公使と交渉せよ」という王命が下りました。大韓帝国皇帝が条約締結を承認したのです。そうして条約文修正作業に入ることになりました。李夏栄法部大臣が、第1条の「日本政府が、外国に対する関係および事務を監理指揮する」という条項のうちで、「全て自分の意のままに」という表現の削除を要求し、伊藤がこれを受け入れました。李完用学部大臣は第3条の統監権限を明らかにせねばならないと言って「外交問題に局限させて、内政は干渉しない」という内容を明記することを要求しました。伊藤はこの意見の受け入れを拒否して「外交に関する事項を監理するために、京城に駐在して」という字句を挿入する線で同意しました。統監の内政干渉不可を明文化しようとした李完用の意見を、伊藤博文が拒否したのです。

権重顕農商工部大臣が「皇室の安寧と尊厳維持を保障する」という条項の挿入を提案すると、伊藤は受け入れて、関連内容を含めた第5条を新設しました。その結果、日本があらかじめ準備してきた条約内容は四つの条項から五つの条項に増えることになりました。

李完用ではなく高宗が「条約締結」の王命を下す

伊藤が直接筆を取って文案修正作業をし、この内容を浄書した後に高宗の裁可を受け、外部大臣の朴齊純と日本公使の林の間で公式に条約を締結した時間は、11月18日午前1時でした。条約締結直後に高宗は伊藤特使に「新しい協約の成立は、両国のためにめでたいことだ。朕は病で疲れているが、お前は夜遅くまで苦労したから、どれほど疲れたであろう」と慰労の勅語を下しました。

これが主要な史料を通して精密に復元した乙巳条約締結の経過です。その過程を詳しく見れば、乙巳条約締結を決定した人は、李完用等の「乙巳五賊」ではなく高宗であるという事実が明白に出てきます。それにも拘わらず、李完用と四人の大臣が「乙巳五賊」だと追及されるようになった理由は何か?

11月18日朝、外交権を日本に渡す保護条約が昨晩に締結されたという知らせが伝わると、都は悲憤とため息で沸き立ち、市場は抗議のために一斉休業しました。あちこちで朴齊純、李完用、李址鎔、権重顕、李根澤を「乙巳五賊」と名指しして、「この逆賊たちを処断せよ」という上訴が殺到しました。その中でも一番激烈な非難の標的になったのは、李完用ではなく外部大臣の朴齊純でした。当時の李完用は何日か前に入閣した新参の学部大臣に過ぎませんでした。ほとんどの上訴文は「陛下が宗廟社稷を守るために命をささげようと誓ったが、逆賊どもが王様の意に反して条約を締結したとは!王様に恥をかかせた臣下は処断せよ」という内容でした。

イギリス人ベセルが創刊した『大韓毎日申報』を始めとしたメディアは、実は確認もしないで提供された上訴文を勝手に「皇帝は最後まで反対したが、乙巳五賊が日本に屈服して保護条約を締結した」と報道しました。その結果、「高宗が乙巳条約に反対した」という虚構の神話が作られて、これが今日まで伝えられて歴史的事実となってしまったのです。

条約締結当時の新聞が、それに関する誤報を出したり、それに一般庶民たちが激憤して李完用を始めとする「乙巳五賊」を亡国の主犯と呪ったのは、それなりにあり得ることではあります。ところが114年経った今日までも、わが韓国人が亡国の責任を「乙巳五賊」に問うならば、それは深刻な精神文化の遅滞を意味します。朝鮮王朝の滅亡は、朝鮮の国家体制が総体的に失敗したことを意味します。これに対する自覚的認識が今なお欠如している我々韓国人が、相変わらず大韓民国の建国を含めた、過去の20世紀の歴史を十分に理解できていないことを意味します。これはもう一回大危機をもたらすことになる、本当に心配の種なのです。

 産経新聞の久保田るり子さんが、この『反日 種族主義』を激賞していますね。 そこまで高く評価できるような本かどうか、私には疑問です。

日本語版『反日 種族主義』で抜け落ちた章節(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/01/12/9200912

日本語版『反日 種族主義』で抜け落ちた章節(2) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/01/21/9204587

日本語版『反日 種族主義』で抜け落ちた章節(3) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/01/26/9206635

日本語版『反日 種族主義』で抜け落ちた章節(4) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/02/05/9210404

日本語版『反日 種族主義』で抜け落ちた章節(5) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/02/25/9217537

新型コロナ検査の信頼性 ―韓国と日本では違うのか?2020/03/10

 新型コロナウィルス感染症について、韓国では検査数が非常に多いことを理由の一つとして、韓国政府が自国の防疫体制は優れていると誇っているというニュースがありました。 『朝鮮日報』はこれを「自画自賛」だとして、批判していましたねえ。 こんなことは皆さんご存知だと思いますので、今さら書くこともないでしょうが。

 ところで日本では新型コロナ検査の信頼性について、それほど高くないとされています。 たとえば毎日新聞の3月9日付の「超高齢化時代を生きるヒント PCR検査は絶対か?」という記事では、次のように報じています。     https://mainichi.jp/premier/health/articles/20200306/med/00m/100/016000c

新型コロナウイルスのPCR検査 ‥‥実はこの検査、今言われている検査の信頼性でいうともう一つなのです。

 PCR検査の感度を高く見積もって70%としてみましょう。感度70%ですから、10人のうち、7人が陽性と判断され、3人は見逃されます。 ‥‥ たとえば、あなたが新型コロナウイルスの感染者で、検査を受けたとします。本当は感染しているのに30%もの確率で、陰性と判断されてしまいます。

実は検査は万能ではないのです。特に今回の新型コロナウイルスで用いられているReal time PCR法という検査の感度はかなり低く、新型コロナウイルスに感染していても陰性と判定されてしまう確率が高いのです。

 一方、韓国では検査の信頼性について、どのように報じられているのか。 探してみるとなかなか見つからないのですが、『韓国経済』の3月6日付の「10分でコロナ19の診断をする抗原診断キット、信頼性に論難、何故か?」と題する記事がありました。    https://www.hankyung.com/it/article/202003062137i

 韓国では、コロナ検査には日本と同様のPCR検査以外に、抗原・抗体を利用して行なう検査もあるようです。 これが10分で出来るという優れものだということなのですが、

専門家たちは抗原診断キットの正確度を大体80パーセント内外と見ている。 (전문가들은 항원 진단키트의 정확도를 대략 80% 안팎으로 보고 있다)

 つまりこの検査法は正確度が低く、韓国では批判されているという記事でした。 それでは韓国で一般的に行われている検査法は日本と同じPCR法なのですが、これの信頼性はどうなのか? 記事は次のように報じています。

現在の防疫当局が使用しているRT-PCR検査法は ‥‥ 正確度は95パーセント以上と高いのであるが‥‥(현재 방역당국이 사용하고 있는 RT-PCR 검사법은 ‥‥ 정확도는 95% 이상으로 높지만‥‥)

 つまり韓国ではPCR検査法はかなり高い信頼性があるとされているのです。

 同じ検査法なのに、日本と韓国では信頼性の違いがあるのは一体なぜなのでしょうか? これを説明してくれる記事が見当たりませんねえ。

 ところで韓国ではドライブスルー検査といって、運転者が車から下りずに新型コロナ検査をする方式が報道されていました。 素早く検査できるとあって、世界から注目されているようです。 被検者が運転席で上半身と頭を横にひねって顔を向け、防護服を着た検査者が鼻やのどに長い綿棒を突っ込んで粘液を採取する様子が出ていました。 果たしてあんな格好で検体を十分に採取できるのだろうかと、素人ながら疑問を感じました。

新型コロナ検査の信頼性(2)2020/03/16

 前回で新型コロナの検査法であるPCR法について、日本では信頼性がそう高くないとされているのに、韓国ではそれが問題にされていないようだと論じました。  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/03/10/9222614

 その後も韓国の新聞記事などを見ていますが、PCR法の信頼性について報じているものがなかなか見あたりませんねえ。 そんななかで『韓国日報』3月15日付 「韓国の診断キットの信頼性 論難、アメリカ議員『適切でない』vs疾病管理本部『WHOが認めた診断法』」という記事が目に入りました。  https://www.hankookilbo.com/News/Read/202003151135772990

 それは、新型コロナについて抗原・抗体から検査する方法が韓国で新たに開発されたのだが、アメリカでは議員がその信頼性に疑問があるので導入するなと主張しました。それに対して韓国側は問題ないと反論したという記事です。

 韓国側の反論のなかで、PCR法が言及されています。その部分を訳してみます。

(韓国の)福祉部関係者は「アメリカの聴聞会で議論された検査法は抗体に関連したものであるが、現在使用中である診断キットはそれとは違う遺伝子検査法(RT-PCR)だと語った。 FDAが書面で言及したという診断キットは、韓国で使用している診断キットではなく、だから国内で現在使用中の診断キットの正確性は問題がないという主張だ。

青瓦台もやはり「アメリカFDAが承認して現地で使用されている診断キットは、検査方式や検査対象の遺伝子部位を世界保健機構(WHO)と違う方式でしている」「わが国はWHOが勧告した遺伝子認識部位と検査方法の通りに基準を定めて使用しているので、問題にならない。」と明らかにした。 

 つまり、アメリカでは韓国で開発された検査法の信頼性を議論しているが、それは今の韓国で使用している検査法(PCR法)ではないので関係がない。 韓国で現在使われているPCR法はWHOのいう通りになされているので、正確性に問題がないというものです。 だから韓国民は安心してほしいという主張になります。

 やはり韓国では、PCR法は信頼できるとしているようです。 ここが日本とは違っていると思われます。 日本では、検査の信頼性が低いので陰性だったからといって安心するな、本当は陽性かも知れないぞ、と警告する記事が目につきます。

 しかし『韓国日報』は、現在の検査の判定について、次のような具体例を報じています。

国内では、最初の検査で陰性判定を受けた人が、後で確診(陽性)判定を受ける事例が続いている。 インチョン市によると、四日前の検査で陰性判定を受けたAさんが、この日に最終確診判定を受け、隔離された。 集団感染が発生したソウルの九老区新道林洞のコリアビルディング11階のコールセンター職員であるAさん(39・女性)は、去る9日に一次検査で陰性判定を受けて自家隔離中だったが、13日に発熱の症状が現れて、疾病管理本部で実施した三次検査で陽性が出て、現在キル病院で隔離治療を受けている。 同居している母親と妹は、検査で陰性が出た。

 このように韓国でも検査結果は安定していないという事例が報告されているのです。

 しかし韓国では、わが国の防疫体制は世界の模範と言えるほど優れているという発言が政府高官からしょっちゅう出てきていますから、検査の信頼性は低いなんて言えないのかも知れません。

【拙稿参照】

新型コロナ検査の信頼性 ―韓国と日本では違うのか? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/03/10/9222614

昔も今も変わらない不法滞在者の子弟の処遇2020/03/21

 ちょっと以前ですが、毎日新聞3月2日付の「希望の聖火」という連載記事①は「『多様性』掲げる聖火リレーだが…日本社会の受け入れ準備は十分か 在留資格ない高校生『周りを見渡して』」と題するものです。    https://mainichi.jp/articles/20200302/k00/00m/050/294000c

 この中で在留資格のない外国人高校生の話がありました。 その部分を引用します。

一方で、ガーナ人の両親を持つ東京都内の私立高1年、ミラクルさん(16)は小学3年からバスケットボールに励むアスリートだが在留資格がなく、聖火ランナーへの応募は「私が選ばれるわけがないから」とあきらめた。

ミラクルさんの両親は1990年代初め、就労できない短期ビザで来日し、オーバーステイ(超過滞在)のまま埼玉県三郷市のゴム製品の工場で働いた。母は43歳で出産。高齢で授かった長女を「ミラクル(奇跡)」と名付けた。

転機は2010年1月。家族の将来を考えて、父が外国人登録(制度は12年廃止)したところ不法滞在として入管施設に収容された。帰国するよう命じられたが、ミラクルさんは日本語しか話せず、生活の拠点も長年暮らす日本にある。拒むと収容期間は約8カ月に及んだ。

現在は一時的に収容を停止し、身柄の拘束を解く「仮放免」の状態が続く。原則、毎月入管に出頭しなければならず、住居や行動範囲も厳しく制限される。就労は禁じられ、毎週通うキリスト教会などの支援で暮らしている。

支援団体によると、ミラクルさんは申請すれば「留学」でビザを取得できる。しかし代償として両親は送還される恐れが高い。在留資格がないこともネックとなり、強豪高からの誘いは途絶え、バスケットボール選手になる夢もしぼんだ。

欧州などでは滞在年数など一定の条件を満たせば、在留資格を与えて合法化する「アムネスティ(恩赦)」を実施する国も少なくない。日本の入管法にも在留特別許可の制度があるが、ハードルは高い。移住連の鳥井代表理事は「五輪憲章に『スポーツをすることは人権』とある。東京五輪の開催地にふさわしい状況であるべきだ」と訴える。移民研究を専門とする栢木(かやのき)清吾さんも「外国にルーツのある人々がこの国で生きていく形はさまざまだが、聖火ランナーに選ばれているのは日本で成功した人たちばかりだ。自治体が多様性を装うために都合よく選んだ印象がぬぐえない」と指摘する。

聖火リレーの幕開けを前にミラクルさんは訴える。「多様性を尊重するというならば、周りを見渡してほしい。この世には私たちのような人間もいる」

 以上ですが、これを読んで50年ほど前の1960年代終わりに、ある高校教師から教え子の韓国人が本国に強制送還された話を聞かせてくれたことを思い出します。 その韓国人の両親はともに韓国からの密入国者で、日本で外国人登録を不正入手し、その名前と在留資格で働いて暮らしてきたようです。 子供が生まれ、その子が高校生になって勉強とスポーツに秀でるまでに成長した時点で、両親の密入国が発覚。 一家は強制送還となりました。

 教師は、子供は何も悪いことしていないし、これまでこの学校で一生懸命に頑張ってきたのだから‥‥と、同僚教師と一緒に何とか学校に残れるようにしてくれと奔走したのですが、結局はダメだったとのことでした。 当時(今もそうと思いますが)は強制送還でも自費で帰国するなら、一週間ほどの猶予が与えられました。 帰国の前日に学校に挨拶に来たそうです。 教師は別れに泣きましたが、その子は「私はもともと日本にいてはいけない人間だから」と涙も流さず、気丈に去って行ったそうです。

 毎日の記事を読んで、この昔の話を思い出した次第。 そして記事にあるガーナ人家庭に疑問を持ちました。 両親は不法滞在で在留資格がないことを自覚していました。 それが子供も含めて家族にどのような結果をもたらすのかも分かっていたはずです。 しかしおそらく子供が小学校に入る時点(2010年は6歳)で、父親は外国人登録に行ったのでした。 子供がいれば、何かの在留資格がもらえると思ったのでしょうか? 

 両親の罪であって、子供には何の罪もありませんが、今の法制度上、どうしようもありません。 家族はこれからも支援者の援助にすがって日本に暮らし続けるのでしょうか?また支援者たちはこの家族をいつまでも支援し続けるのでしょうか? 子供はいずれ卒業して、いつかはどこかに就職するでしょうが、在留資格のない外国人の就職先は極めて限られるというか、堂々と胸を張って勤めることは難しいものです。 

 どこかの時点で法的にすべてをクリアしてすっきりするためには、今の状況に見切りをつけるというか、決断せねばならないと思うのですが‥‥。

新型コロナ検査の信頼性(3)2020/03/23

 朝日新聞3月22日付の「韓国、懸命の感染抑え込み PCR検査が急速に普及」と題する記事  https://digital.asahi.com/articles/ASN3P6CTNN3NUHBI02F.html   のなかに検査キット製造会社代表のインタビューがあり、代表がPCR法の信頼性について次のように述べたというものがありました。

――国外からは、韓国では検査が多い一方、「疑陽性」など判断の誤りもあるとの指摘があります。

「私たちは検査キットに使う試薬の原材料を自社でつくっており、品質管理でも大量生産でも有利だ。試薬は正確さが第一とされ、なかでも感度と特異度がある。感度とは、感染初期の段階でもウイルスを見つけだすことができるか。特異度とは、本当のウイルスだけを選び出すこと。大量生産の場合は特にこうした品質の維持が重要だ」

 朝日記者はPCR法には誤りが多いのではないかと質問したのですが、それに対して会社代表は直接には答えず、自社が製造する検査キットは正確第一で品質維持に努めているというものです。 要するに自社製品は信頼できるということです。 

 日本では、PCR法の信頼性はいま一つだからむやみに検査を多くしても意味がない、医師が慎重に判断して検査を依頼すべきものだという見解なのですが、韓国ではそんな意見は全くといっていい程にありません。 信頼できることが前提で、早期発見のために検査をたくさんやろうということになります。

 今韓国が自画自賛するドライブスルー方式では、問診票に症状等とともに検査を希望する理由を書いて提出し、医師がそれを読んだだけで検査するかどうかを判断するようです。 日本のように医師が対面して診断したうえで判断するということはないとされています。 韓国では検査数が多く、日本では少ないというのは、こういう事情なのですねえ。

 韓国では、早期発見のためにたくさんの検査をすることによって新型コロナ感染の拡大を抑え込んでいると主張し、わが国は世界の模範だとまで言います。 そして日本の安倍政権は感染者数を少なく見せるために検査を抑えているという謀略論的な言い方をする人が多いですね。

 今は韓国と日本では検査に対する考え方や方法が違うとしか言えません。 韓国のように検査を多くするのがいいのか、日本のように絞り込んでするのがいいのか、こういうことは新型コロナ騒ぎが収まってから検証すべきものでしょう。 

 ところで朝日のインタビューでは、この会社代表が検査の「感度」と「特異度」について日本の感染症専門家とは違う説明をしていますね。 このような医学用語は世界共通だと思うのですが、なぜ違いが出てくるのでしょうか? 韓国の検査会社代表の言うことが正しいのか、日本の専門家の解説が正しいのか?

新型コロナ検査の信頼性 ―韓国と日本では違うのか? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/03/10/9222614

新型コロナ検査の信頼性(2)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/03/16/9224844

新型コロナ検査の信頼性(4)2020/03/24

 3月23日付け朝日新聞に、韓国の検査方法について、実際の現場を取材した記事が出ました。   https://digital.asahi.com/articles/ASN3R337WN3QUHBI025.html?iref=comtop_list_gold_n01

受け付けを終えた20代の女性が、一番左のブースに入ってきた。来院者は中でスピーカーホンに向かって話し、医師や看護師はインターホンの受話器を手にとってやりとりする。     

「せきや発熱はありますか? 筋肉痛はどうですか?」「海外旅行を最近しましたか?」「(集団感染の発生した)大邱への訪問歴は?」。女性はどれにも該当しない。なぜ検査を受けたいのか医師が尋ねると「新天地です」と答えた。集団感染が判明した新興宗教団体「新天地イエス教会」の信者のようだ。

左から3番目のブースでは、いつの間にか中年の男性が問診を終え、看護師が鼻と口に、それぞれ細長い綿棒を入れて検体の採取を進めていた。ブースの内側に向かって青い手袋が突き出ており、その上に来院者1人ごとに使い捨てる透明の手袋もかぶせてある。看護師は個人用の黄色い手袋をした手をここに入れ、検体を採る。三重の徹底した保護というわけだ。

透明な樹脂板に開いた小さな穴から内部に向かって、聴診器の先の丸い部分がたれ下がっているのが見えた。外側には耳をあてる部分がある。これで診察もできるのだという。

検査が終わると、すぐに消毒作業が始まった。問診に5分、検体の採取に2分、消毒と換気に10分をかけるため、最速17分間隔で検査ができるらしい。検体はこの病院内で検査するため、4~6時間後には結果が分かる。必ず2回、検査する。「疑陽性」という誤判定を避けるためだ。

 検体の採取方法がかなり合理化されていることが分かります。 そして採取した検体をその病院内ですぐに検査に回せるようになっています。

 ここが日本と違いますねえ。 日本では医師が対面して診察し、一般的な風邪かどうか、インフルエンザではないか、肺炎かどうかレントゲンを撮る、そうした過程を経てようやくコロナの検査をします。

 そして採取した検体は特定検査機関に持っていかねばならず、その運搬にもかなり気を使います。 また検査機関は少ないです。 増やそうにも厳重に管理された検査室を準備するのに、また検査を直接担当するスタッフを研修・訓練するにも、かなり時間がかかります。 6ヶ月以上かかるという記事がありましたねえ。

 韓国のやり方は大いに参考になるでしょうが、日本には直ぐに導入できないようです。

 ところで韓国のやり方で気になるところは、問診がちょっと簡単すぎではないかということと、誤判定を避けるために検査は二回するとしているが、時間を違えて二回検体採取しているという意味なのか、分からないことですねえ。

新型コロナ検査の信頼性 ―韓国と日本では違うのか? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/03/10/9222614

新型コロナ検査の信頼性(2)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/03/16/9224844

新型コロナ検査の信頼性(3)   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/03/23/9227298

新型コロナ検査の信頼性(5)2020/03/28

 新型コロナの検査法として唯一承認されているPCR法の信頼性について、韓国と日本では違いがあることを知り、韓国の報道ではどう扱っているのかに注視してきました。

 今度はハンギョレ新聞の3月27日付けに次のような記事が出ました。日本語版にあります。  http://japan.hani.co.kr/arti/politics/36143.html    この記事ではPCR法は「分子診断法」「リアルタイム遺伝子増幅法」「RT-PCR」などと呼ばれており、

保健当局は分子診断法のリアルタイム遺伝子増幅法(RT-PCR)キットのみ承認し

とありますので、韓国で唯一の承認された検査法であることが分かります。 これは日本でも同じです。 この検査法の信頼性について、記事では未承認の抗原抗体検査法と比べて、次のように書かれています。

診断検査医学界は、このキットを使った検査の精度が50~70%程で、95%以上のリアルタイム遺伝子増幅検査よりも不正確だと見ている。

 つまり韓国ではPCR法は精度が95%以上と高く、正確性があるとしているのです。 日本では感度がせいぜい70%程度で、信頼性が落ちるとされているのと大きな違いを見せています。

 なぜこの違いが出てくるのか? PCR法でも検査方法に違いがあるのか? そこが分からないところです。 もし韓国のPCR法の信頼性が高いのが事実であるなら、日本は韓国からそれを導入すべきだろうと思うのですが、そんな動きを見せるような報道は見当たりません。 一部の自治体で韓国から導入するとしているのは、ドライブスルー方式の検体採取法ぐらいですねえ。

 私は医学には専門外ですが、こんな細かいところに注目して記事を読んでいくと、あまり役に立たないことでしょうが、興味が湧きますね。 

 ところで、これに関する韓国の記事に出てくる言葉として、医学用語の「感度」「特異度」が使われずに、「精度」「正確度」等々が出てきます。 私の印象ですが、韓国のマスコミは定義のはっきりしていない用語を使って、自国検査の信頼性が高いと論じているように思われます。

新型コロナ検査の信頼性 ―韓国と日本では違うのか? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/03/10/9222614

新型コロナ検査の信頼性(2)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/03/16/9224844

新型コロナ検査の信頼性(3)   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/03/23/9227298

新型コロナ検査の信頼性(4) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/03/24/9227621

コロナ騒動の真っ最中に候補者応援の酒席2020/03/29

독자 제공

 韓国の『朝鮮日報』を読んでいると、3月23日付けで↑の写真が出てきました。 クリックすると拡大します。  http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2020/03/23/2020032300110.html

キャプションは

독자 제공/ 경기 안산단원갑에 출마한 더불어민주당 고영인 후보 지지자들이 지난 20일 고 후보 선거사무실에서 환호하고 있다. 테이블 위에는 소주, 맥주 등이 놓여 있다.

訳してみますと、

読者提供/ 京畿道の安山檀園甲(選挙区名のこと)で出馬した‘共に民主党’のコ・ヨンイン候補の支持者たちが去る20日に、コ候補の選挙事務室で歓呼している。テーブルの上には焼酎、ビールなどが置かれている。

 韓国の新型コロナ陽性判定者は大邱での流行が収まりかけたために少なくなったとはいえ、毎日数十~百人以上の感染が報告されていました。 従って3月20日は当然のことながらコロナに対して緊張しなければならないはずですが、選挙活動でこのような酒席が設けられていたのです。

 数えてみると、38人ほどのうち口にマスクをしている人は6人、マスクは下顎にかけているだけで意味をなしていない人が3人、残りはマスクなしです。 そしてこれだけの人々集まって、人と人の間の距離は50センチもありません。 何かスローガンを大声で唱えている場面のようですが、人の口から出てくる飛沫は確実に隣の人にかかっています。

 酒席ですから、1・2時間は集まっていたことでしょう。 しかも室内です。 密閉した空間、人の密集、近い距離での発声。 コロナ感染場所の三条件にぴったり当てはまります。

 何と緊張感のないことかと驚いた次第。 韓国の大統領や与党は「韓国式防疫体制は世界の標準になっている」と豪語していましたが、その与党候補者の選挙活動がこうだと知ると、ちょっと大丈夫かなと心配になります。