女性解放が賃金低下をもたらした(再録) ― 2020/08/09
前回の拙ブログで、
男は外で働いて稼ぎ、女は家をしっかり守る、妻が働くのは夫に甲斐性がないからだ、なんて堂々と言われていた時代があったのです。 子供も大きくなったし、家計の足しにパートで働きたいという妻を殴ったという男がいましたねえ。
と書きました。 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/07/24/9271182 これに関連して12年ほど前に拙ブログで「女性解放が賃金低下をもたらした」と題する論考を発表していたことを思い出しました。 今読みかえしてみて、それなりに当たっているのではないかと思い、再録します。
1970年代の記憶として、当時の労働運動における賃上げ闘争の理由は、「こんな給料でヨメさん子供を食わせられるか?! ヨメさんが働かなくてもやっていける給料を出せ!!」 というものでした。 つまり共働きは給料が安いために仕方なくやるものであって、豊かな生活とは主人が働き、妻は専業主婦として一家を切り盛りする、というものでした。
これは労働者だけでなく、資本家(=雇用者側)も同じ認識でした。だからこそ、賃上げ闘争がかなり成功してきた、というのが当時のことだったと思います。
ところがこの同時期に知り合いが勤めていた某生活協同組合(理事長が革新系の議員さんで、各理事・管理職もゴリゴリの党員・支持者が多かった)でその内実を聞いた時、驚きでした。 左翼系でいわゆる「搾取」というものはないのだから、そこで働く労働者はそれなりに豊かであろうと思い込んでいたのですが、かなりの低給料でした。
そしてその生協の専務理事自身が、「うちの職員には、20万円の給料しか出せないのなら20万円分の生活をしてもらう、15万円の給料しか出せないなら15万円分の生活をしてもらう。 共働きは当たり前だ」という話を公の席で堂々と発言したのを聞きました。
利益を目的とする企業(資本主義そのもの)では、社員が共働きしなくても生活できるような給料を出そうと、会社も労働組合も頑張っていたのですが、 他方利益を求めない革新系の事業所(資本主義を否定して社会主義をめざす)では、低給料・共働きは当たり前のところでした。
このような30年前の状況を知るものにとって、女性解放運動(あるいは男女共同参画とも言うらしい)は、賃下げの理由にはなっても、賃上げには繋がらないのではないかと思えます。 女性解放とは自立を意味するのですから、女性も働く(=共働き)が当然の考え方になるからです。
もし私が会社側の人間であれば、賃上げ要求する労働組合に対しては、それで生活できないならヨメさん働かせなさい、自分の給料では苦しくても共働きすれば生活できますよ、と同情することなく突き放すことでしょう。
女性解放(=自立)は労働者の賃金低下をもたらした、と私には思えてなりません。
これは12年前の論考ですから、上記の状況は40年以上の前の話です。 「女性解放が賃金低下をもたらした」は取りたてて根拠のないのもので、私の印象論でしかありません。 それでも女性の地位向上と賃金の関係については私なりに言い当てていたと感じているのですが、そういった方面での研究はなされていないようですねえ。
ところでヨメさんが働くという風習は、地域差があるように感じられます。 これも私の狭い範囲の体験談ですが、ヨメさんが働くことに強い抵抗感を持っていたのは九州男児でしたねえ。 子供が大きくなったし私も働きに出たいという奥さんに、俺に恥をかかせるのか!と怒って殴ったという話を聞き、どうやら九州ではそういう考え方をする男が多いようでした。 今は昔の話、今ではそんな男はいないでしょうが‥‥。
【拙稿参照】
女性解放が賃金低下をもたらした http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2008/02/16/2632230