韓国の特殊詐欺 ― 2020/08/31
日本では「オレオレ詐欺」や「振り込め詐欺」などの詐欺犯罪を「特殊詐欺」と呼び、以前より横行しており、毎年の被害額が300億円以上だそうです。 この特殊詐欺、日本だけではなく韓国でも横行しています。 韓国では特殊詐欺を「피싱(フィッシング)」あるいは「보이스 피싱(ボイス フィッシング)」と言います。 これらは英語をそのまま使った通称で、法律上では「전기통신금융사기(電気通信金融詐欺)」という用語になります。
3週間ほど前(8月11日付け)ですが、韓国の中央日報に「フィッシング(特殊詐欺)」の記事がありました。 日本語版にも出てくるだろうと思っていたのですが、結局は出てこなかったので、訳してみました。
行く所まで行ったフィッシング、マンションまで入っていって、現金26億ウォンをだまし取る
ソウル城東区に暮らす50代の女性Aさんは、先月31日に「もうすぐ宅配の品物を住所地に配送されます」というメールが来た。 宅配を頼んだことがなかったAさんは、メールの番号に電話をかけ、「どんな品物か?」と尋ねた。
電話を受けた人は自分を「検察職員」だと名乗った。 彼は「あなたの個人情報が犯罪に使われ、口座を検査しなければならない」と言った。 引き続き「すぐに金監院(金融監督院)の職員が家に行くので、お金を渡しなさい」と言った。 金監院職員だという人に会ったAさんは、郵便局から引き出した現金を旅行用カバンに入れて彼に渡した。 同じ方法で四日間、全部で13回にわたってAさんが渡した金額は、総額26億ウォン(約2億3千万円)。
変だと感じたAさんは、去る5日に警察に「現金26億ウォンをボイスフィッシング詐欺で盗られた」と通報した。 26億ウォンはAさんが遺産で貰った住宅を売って作ったお金だった。 Aさんはお金をソウル市内のある郵便局支店から引き出した。 Aさんは郵便局を訪れる度に、数千万ウォンから最大3億ウォンを主に一万ウォン券(約900円)でまとめて準備し、カバンに入れた。お金を引き出す際に郵便局職員には「移民するのに資金が必要だ」と言った。 郵便局関係者は「Aさんは職員が提示したチェックリストのうち『警察、金監院職員から電話を受けましたか』という質問に『ない』と答えたので、ボイスフィッシング詐欺に遭ったという事実は分からなかった」と説明した。
検察・金監院職員を詐称し、Aさんに接近した被疑者は全部で6人。 ボイスフィッシング詐欺犯たちは、単純に通話でお金を振り込ませる手口ではなくAさんに直接会った。 Aさんが暮らす団地の裏門や団地内にまで入ってきてAさんに会い、お金を受け取った。
警察は団地の防犯カメラなどを使って被疑者を追跡している。 警察関係者は「現在追っている6人は受け取ったお金を渡す「受け子」である確率が高い」と言い、「ほとんどのボイスフィッシング詐欺事件と同じく、主犯が他にいる可能性も念頭に入れて捜査している」と話した。
2年の間に被害額2.7倍
金監院関係者は事件について「典型的で体系的なボイスフィッシング詐欺の手口」と分析した。 ボイスフィッシング詐欺対策の専門担当チームは「誰かが捜査機関の役割をして、誰かが金融監督院の役割をする「役割劇」に騙される場合が多い」と言い、「最近は銀行口座が追跡されないように、現金で要求する事例も増えている」と説明した。
金監院によればボイスフィッシング詐欺犯罪の被害額は、2017年2431億ウォン(約219億円)、→2018年4440億ウォン(約400億円)、→2019年6720億ウォン(約605億円)と増え続けている。 貸出相談をしてあげますと言って接近する「貸出詐欺型」(76.7%)、政府機関を詐称し、あなたは犯罪に巻き込まれていると言って接近する「機関詐称型」(23.3%)が一番多かった。 金監院関係者は「政府機関や金融機関は、絶対に特定個人の口座に振り込みを要求したり、現金を直接受け取ることはない」と話した。
韓国のフィッシング詐欺は日本の特殊詐欺と犯罪の範囲などがおそらく違っているでしょうから、被害額等の数字をそのまま比較することは出来ないでしょう。 (参考までに韓国605億円、日本300億円以上) しかし韓国の詐欺は毎年すごい勢いで増加していることが分かります。
また「貸出詐欺型」と「機関詐称型」の二つがほとんどという特徴があります。 日本のような「オレオレ詐欺」がないことに関心が行きますね。
こういう犯罪は、それぞれの国の民族性を考える上で大いに参考になると思います。 いずれ世界各国の特殊犯罪の特徴を論じた論文が出てくるものと期待しています。