若者世代の「保守・保身」性向はあるのか?2020/11/30

 2020年11月24日付け毎日新聞の「若者ほど『内閣支持』 将来不安、『保守』より『保身』? 毎日新聞世論調査」を読む。 https://mainichi.jp/articles/20201124/ddm/005/010/090000c

毎日新聞と社会調査研究センターが今月7日に実施した全国世論調査では、世代間の意識の差がくっきりと表れた。 内閣支持率は若い世代ほど高く、年齢が上がるにつれて減少。 菅義偉首相による日本学術会議の会員候補の任命拒否は「問題とは思わない」との回答が若年層ほど高かった。 米大統領選では、若者ほどトランプ大統領が当選した方が日本にとって好ましいと答えた。

 世代間でどれほどの違いがあるのか。 内閣支持率について、記事では次のような数字を出しています。

全体では57%だった内閣支持率を年代別に見ると、18~29歳は80%▽30代は66%▽40代は58%▽50代は54%▽60代は51%▽70代は48%▽80歳以上は45%――という結果だった。 安倍内閣では若年・中年層より高齢層で支持率が低くなる傾向があったが、今回はより明らかな支持率の「右肩下がり」の傾向が見て取れる。

 若い世代ほど今の自民党政権を支持する傾向が強いのは、もう何年も前から指摘されてきました。 この傾向は今度の毎日新聞の世論調査でも、はっきりと確認されたことになります。 

 何年前でしたか、あるリベラル評論家が選挙年齢の引き下げに賛成していたところ、若者世代の自民党支持率が高いと聞いて、あわてて反対意見に変えたという話がありましたねえ。

 今問題になっている学術会議の任命拒否についても、世代の見解差がくっきりと現れます。

首相が学術会議の会員候補6人の任命を拒否したことについては「問題とは思わない」と回答した人は、18~29歳が59%▽30代が54%▽40代が48%▽50代が43%▽60代が41%▽70代が37%▽80歳以上が21%――と若い世代ほど高かった。

「問題だ」と答えた人は、逆に18~29歳が17%▽30代が25%▽40代が33%▽50代が39%▽60代が45%▽70代が48%▽80歳以上が49%――と若年層ほど低かった。若者ほど首相や政府の主張に理解を示していると言える。

 学術会議任命拒否について、マスコミは「学問自由の侵害」「民主主義の危機」だとキャンペーンに近いくらいに報道し、戦前回帰だとか時にはヒットラーやスターリンまで持ち出して危機感を煽っていましたねえ。 しかしそれでも内閣支持率があまり下がらないことに苛立つ意見が多くみられました。 若い世代になるほど学術会議任命拒否に問題はないと考え、また内閣支持率が高くなっているのですから、年寄りが「このごろの若者はなっとらん」と嘆いているのと同じだということになります。

 これをどう考えるか。 記事では次のような見解が出ています。

社会調査研究センター社長の松本正生・埼玉大教授(65)=政治意識論=によると、1980年代後半まで、自民党の支持率は若い世代ほど低く、グラフは「右肩上がり」の線を描いた。 今とは正反対だ。松本教授は今回の結果について「若い世代の『今を変えたくない』『変わってほしくない』という『現状維持』の志向が表れている。 『保守』というよりも『保身』と言うべきで、政治的な意味での保守化とは次元が違うのではないか」と指摘する。

 これはどうでしょうか。 安倍晋三は「戦後レジームの脱却」を唱え、戦後70年以上続いている体制の変革を訴えました。 これに対しリベラル派は憲法を守れ!と対抗しました。 つまり変えようと主張したのは自民党政権であり、変えたらダメだと現状維持を主張したのが野党です。 従って松本教授の「若い世代の『今を変えたくない』『変わってほしくない』という『現状維持』の志向…‥『保守』というよりも『保身』と言うべき」という見解は、私には異議があります。

「若者保守化のリアル」などの著作がある中西新太郎・関東学院大教授(72)=社会学=は、「意識調査をすれば、若い世代は日本社会の将来について明るい見通しを持っていない人が多数派だ。 現状は格差社会で『生きにくい社会』だ。それでも、若者が現状維持志向なのは『これ以上ひどくならないように』との思いからだ」と語る。

 この中西教授は今の若者が「将来について明るい見通しを持っていない」という見解を出していますが、どうでしょうか。 1970年代の学生たちは左翼・革新系を支持し、自民党支持なんて口に出せないような雰囲気がありました。 当時の若者も「日本社会の将来について明るい見通しを持っていない」と考える人が「多数派」で、だから「革命」「変革」が必要だとして左翼・革新へと流れていったのです。 若者にとって「将来に明るい見通しがない」と感じるのは、今も昔も変わらないと思うのですが。 教授はさらに次のように述べます。

中西教授によると、若い世代は「ルール」や「秩序」を重視する傾向があるという。今の生活がより悪くならないよう、守ってくれているのが「ルール」や「秩序」だという発想だ。 「現在の『ルール』や『秩序』をつかさどっているのが、菅内閣であり自民党というイメージがある。 若い世代の内閣や自民党への支持は、『政治を動かしているのは菅内閣、自民党でしょ』ぐらいの感覚なのではないか」と推測する。

 「若い世代は『ルール』や『秩序』を重視する傾向がある」のは事実です。 2000年代に入って、少年犯罪が急減しています。 10万人当たりの検挙少年の数は2003年までの約30年間は10~16人で推移していたのがそれ以降減少し、2017年には4人です。  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/07/30/9135053

 この少年たちが今若者世代となっています。 これは非常に喜ばしいことです。 ルール・秩序を守ってこそ自分たちの権利が守られ、社会に向かって主張することが出来るという民主主義的な思考が、若者に定着してきたと言えるのではないかと思っています。  

 しかしこれを内閣や政党の支持に結びつける教授の見解には、異議があります。 若者が与党政権を支持するのは野党への信頼性が低いからであって、「ルール・秩序の重視」とは関係のないことでしょう。 逆に年寄り世代の方が野党への信頼性が高いと言えます。

次に記事では、20代から次のような意見が出ています。

「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さん(22)は、同世代の内閣支持率や自民党支持率の高さに、違和感はないと言う。 「他の政党には期待できそうにないから自民党を選び、菅さんがダメなら誰がいいか思いつかないから『このままでいいか』となる。 積極的な支持というより、消極的な支持では」と分析する。

能條さんは同世代が「不支持」を選ぶことは、「支持」を選ぶよりもハードルが高いと考えている。 「政治に限らず『ノー』と言うには、きちんとした理由が必要。内閣についても基本は『イエス』から始まり、どうしても許せないときに初めて『ノー』という選択肢が出てくる」と説明する。

少子高齢化や格差拡大が進み、若年層には閉塞(へいそく)感も漂う。 「これまでの人生で、世の中が上向きだったことがない。20年後はもっと悪いだろうなというイメージがある。 政治に対する期待感は他の世代と比べて低い」という。

 このような分析が正しいのかどうか。 若者が「政治に対する期待感は他の世代と比べて低い」のは、上述したように昔も今も変わりません。 ただ昔はだからこそ政治を変えねばならないと「左翼・革新」に流れ、それが挫折した今は与党政権の「支持」に流れているということではないかと思います。

 若者世代は否が応でも2・30年後には日本の中枢を担うことになります。 その時に松本教授や中西教授、能條さん、そして私の分析・見解が検証されることになると考えます。

【拙稿参照】

 若者世代の大きな変化   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/07/30/9135053

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