創氏改名の誤解―日本名は強制されていない (11)2021/02/11

ハンギョレ新聞2021年2月8日付け

 韓国のハンギョレ新聞2021年2月8日付けに、「『親日人名辞典』に名を載せている金英俊、なぜ国立墓地に埋葬されたのか」と題する記事がありました。 日本の戦争に協力した親日派を厳しく断罪するものです。  http://www.hani.co.kr/arti/area/honam/982246.html

 ↑はその記事に添付されていたもので、次のようなキャプションが付されています。

日本の植民地時代の朝鮮総督府の機関紙「毎日新報」1942年1月16日付に掲載された金英俊(金谷英俊)の愛国機資金献納についての記事

 1942年1月といえば、真珠湾攻撃で太平洋戦争が始まって1ヶ月ですから、正に軍国主義の真っ最中です。 この時期に、朝鮮では日本軍に飛行機の献納資金を集める運動がありました。 それが当時の朝鮮では唯一のハングル新聞であった『毎日新報』に報道された記事です。 

 献金した人は、ハンギョレ新聞が問題にしている金英俊(金谷英俊)以外に、何人かの名前が挙がっています。 そこに朝鮮名があることに目が行きました。 分かりやすいように↑には、赤の傍線を入れました。

 「李隣錫」「閔大植」「白南薫」「任慎享」の四人です。 1942年は創氏改名の施行から2年経った時期ですが、その時に朝鮮名を維持している人がいたことが分かります。 つまり創氏改名は日本名を強制するものではないということを証明する資料になります。

 しかも彼らは日本軍国主義に協力した朝鮮人たちです。 朝鮮名を維持した人は創氏改名を拒否した反日独立人士であるかのように論じる人がいますが、それが間違いであることを示すものです。

 ついでに↑の『毎日新報』記事のうち、題字とハングル部分の訳を掲載します。

米英撃滅 献金遝至

14日、朝鮮軍 愛国部には全羅南道麗水邑西町の金谷英俊氏が愛国機献納資金として五万三千円を寄託し、また愛国婦人会朝鮮本部を代表して上瀧、松沢 天野の三人の夫人が東部を訪問して感謝の手紙とともに千円を国防献金にと依頼した。

その他に次のような赤誠の献金があった。

 「遝至」は日本語辞書には出てきませんねえ。 一方朝鮮語では「답지」と言います。朝鮮だけで使われる漢字語なのかも知れません。 「답지(遝至)하다」は朝鮮語辞書によると「殺到する」とか「一ヵ所に集中する」という意味ですから、「献金遝至」は献金が殺到したということです。

 「赤誠」は「国に赤誠を尽くす」というような言い方になります。 右翼の宣伝カーの旗にあったような記憶がありますが、そうでない限り使われることのない言葉でしょうねえ。

 更についでに参考までに、ハンギョレ新聞の当該記事の一部を引用します。 

日帝強占期(日本の植民地時代)の朝鮮総督府機関紙「毎日新報」の1942年1月16日付紙面に掲載された記事の一部だ。 「金谷英俊」は当時朝鮮の財閥級富豪だった金英俊(キム・ヨンジュン、1898~1948)が日本式に変えた名前だ。 金英俊は、戦争協力のための朝鮮臨戦報国団の発起人として参加し、軍用機1機を献納するために10万1千ウォンを出すと公言した事実が明らかになり、民族問題研究所が発刊した「親日人名辞典」に名前が載った。

金英俊は1921年から日本の神戸のゴム工場で働いた後、1926年に帰国し、釜山、麗水、益山(イクサン)、南原(ナムウォン)などで天一ゴム、興亜ゴム、麗水綿布、朝鮮ゴム靴販売など数社を設立した。 事業が繁盛し、1940年に光州(クァンジュ)保護観察所の嘱託保護士として思想犯の教化の先頭に立ち、1941年に全羅南道会議員と麗水商工会の会頭(代表)などを務め、日帝の警察に電話仮設費として1万ウォンを献上した。 賦役の代価として日本の紀元2600年奉祝展に招待されて記念状を受け、以後は戦争遂行に大金を献納して紺綬褒章を受けるなど、日帝の目に留まった。 彼は日帝が経済を掌握した朝鮮で指折りの富豪として出世した。

金英俊は解放後も既得権を守った。 莫大な財力が土台になった。 彼は右翼系列の大韓独立促成国民会の麗水郡支部長や韓国民主党麗水郡支部長を務め、麗水商工会議所会長、全南商工会議所会長、朝鮮商工会議所副会長などへと歩幅を広げた。

【これまでの拙稿】

創氏改名の誤解―日本名は強制されていない   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/03/28/8423913

創氏改名の誤解―日本名は強制されていない (2)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/03/30/8425667

創氏改名の誤解―日本名は強制されていない (3) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/04/01/8436928

創氏改名の誤解―日本名は強制されていない (4)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/04/03/8441238

創氏改名の誤解―日本名は強制されていない (5)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/04/05/8444253

創氏改名の誤解―日本名は強制されていない (6) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/04/07/8447420

創氏改名の誤解―日本名は強制されていない (7) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/04/09/8451992

創氏改名の誤解―日本名は強制されていない (8) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/04/11/8457633

創氏改名の誤解―日本名は強制されていない (9)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/04/14/8478676

朝鮮人戦死者の表彰記事ー1944年  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/10/29/8716160

【拙稿参照】

宮田節子の創氏改名論    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/11/10/7487557

創氏改名の誤解―「世界史の窓」  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/03/26/8421515

西川清『朝鮮総督府官吏 最後の証言』 (続) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/10/21/7467784

朝鮮名での設定創氏が可能な場合 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/02/12/1178596

創氏改名とは何か (00年4月1日) http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daijuunidai

創氏改名の残滓 (01年6月1日) http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daisanjuudai

創氏改名の手続き(04年10月1日) http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/dainanajuudai

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