植民地時代の土地調査事業の遺跡が文化財に ― 2021/04/16
『朝鮮日報』2021年4月5日付に、植民地時代に施行された土地調査事業の遺跡が韓国の登録文化財に指定されたというニュースが出ました。
https://www.chosun.com/culture-life/culture_general/2021/04/05/6V45OQML7ZDLRF2DEF73HCXIQM/
関係する部分は次の通りです。
문화재청은 …1910년대 토지 측량사업 유물로 강원도 지방의 지형, 거리 등을 정밀하게 측정하는 기준이었던 ‘고성 구 간성기선점 반석’을 문화재로 등록했으며… 등 3건을 등록문화재로 예고했다.
この記事の日本語版は4月13日にネット上で公開されました。 該当部分は次の通りです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6ff922f60e73fa9d424ceed1c8dfac1f978ed196
文化財庁は ‥‥1910年代の土地測量事業の遺物として江原道地方の地形や距離などを精密に測定する基準だった「高城・旧杆城基線点磐石」を文化財に登録し‥‥ など3件を登録文化財として予告した。
ここで注目してほしいのは、「1910年代の土地測量事業」というところです。 これは朝鮮総督府が日韓併合当初より始めた土地調査事業のことで、1918年までの約8年間にわたって朝鮮全土の土地測量を行ない、土地所有権の確定等々の近代的土地所有制度を確立していったものです。 これによって朝鮮では、それまで不安定だった土地所有権が安定化しました。
これはどういうことかと言うと、ある常民が先祖の代から耕作していた畑について、どこかの両班が「ここは元々俺たち家門の土地だ!お前らは出て行け!」と迫られるとか、どこかの役所が「ここは昔に朝廷から我々が賜った土地だ!勝手に耕作するとは怪しからん!」と訴えられる可能性があったのです。 何百年も昔の記録らしきものを突きつけられると、常民には両班やお上に逆らうことは難しい時代でした。 つまり日韓併合以前の朝鮮では、土地所有権が不安定だったのです。
それがこの土地調査事業で所有権が確定したことによって安定したのです。 ですから、どこかから「ここは元来自分の土地だ」とか言われても対抗できることになったのです。 つまり土地調査事業は私有財産制の確立であって、近代化に絶対に必要なものだったのです。 そしてその成果は現在の韓国の土地制度にまで及んでいます。 今の韓国でも土地の所有権は争いの種ですが、その裁判ではこの土地調査事業の成果物が出てくるのです。 それ以前の李朝時代の記録はあっても無視されます。 ということは、100年以上前に朝鮮総督府が施行した土地調査事業の成果は現在の韓国にまで継承されているのですから、事業は歴史の理に適っていたと言ってもいいと考えます。
従って韓国が今度、この土地調査事業の遺跡を重要だからと文化財登録したことは、歴史価値の重要性からしても当然なことです。
ところが世間に出回っている韓国史では、この土地調査事業は「日本帝国主義による土地収奪」だと極めて低い評価を与えています。 そして在日も自らの歴史を語る時に、自分たちの祖父は日帝の土地調査事業で土地を奪われてやむなく日本に来た、だからこれは「強制連行」と同じだ、というような「歴史」を語ることが多いです。 これは「虚偽の歴史」と言っていいものです。
それでは真実の歴史は何か?
土地調査事業によって土地所有権が確定したので朝鮮人は安定した生活を送り、結婚して子供を産むことができるようになった、だから朝鮮人の人口は日韓併合後に爆発的に増えた、しかしこの人口増に農業生産が追い付かず、朝鮮の各農村では人口過剰に陥って貧困層が拡大し、農村外に出ようとする動きが活発化した、その出稼ぎ先の一つが産業化の進んでいた日本(当時は内地)だった。
「在日の歴史」は、このように語ってほしいと思います。
【拙稿参照】
土地調査事業 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2008/04/23/3273840
水野・文『在日朝鮮人』(7)―人口の急増 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/05/14/8089137
『現代韓国を学ぶ』(2) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/06/06/6470236
毎日新聞「在日3世代100年の歴史」への違和感(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/08/13/9278142
『金達寿伝』を読む―金家はなぜ没落したか http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/09/07/9293017