在日の自殺死亡率2021/04/20

 在日の総合誌『抗路8』(2021年3月)に、「『在日』における精神障害とコミュニティ」と題する論稿があります。 論者は金泰泳さんという方です。

マイノリティにとって社会はストレスが多い。マイノリティは民族、人種、性別、出身地、またはセクシュアリティ、障がいなど、さまざまな属性にもとづいて蔑視や差別をうける、排除・疎外されるという経験を有している。そのストレスの長期にわたる蓄積ゆえに、精神疾患の発症リスクが高い人々であるといえる。 ‥‥ 在日コリアンもマイノリティのひとりである。 筆者は本稿で、「在日」が‥‥どのような状況に追い込まれているのかということをうきぼりにしたい (91頁)

というもので、その一つとして「在日」の自殺率の高さを論じています。 ↑は、それを示す根拠して掲載されているグラフです。

 在日韓国・朝鮮人はこれまで様々な調査が繰り返されてきており、統計数字もたくさんあります。 しかし自殺率に関する資料は見たことがなく、私には新鮮な印象をもちました。(自殺に関する統計数字ですから、「新鮮」はちょっと言い過ぎかも知れません)

 論者は次のように言います。

図からわかることは、日本の韓国・朝鮮籍者の自殺死亡率が、「日本全体」(外国人を含む)や他の外国籍の人々よりきわだって高く、その傾向は一貫している(94頁)

 この統計の典拠の一つはおそらく厚生労働省「人口動態統計に基づく自殺死亡数及び自殺死亡率」と思われ、ネット上でも公開されていますので関心ある方はご覧ください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/jinkoudoutai-jisatsusyasu.html

 これを見れば、論稿の↑グラフ図は信頼できるものと判断できます。 韓国・朝鮮籍の自殺率は2010年以降減少してきているのですが、それでも他と比べて「きわだって高い」のは事実と言わざるを得ないですね。

 ただしこの「韓国・朝鮮籍者」には近年に来日した「ニューカマー」も含んでいるので、論者は「『在日』の自殺死亡率と言い切ってしまうにはやや語弊がある」(94頁)と注意を呼びかけています。

 論者はこの方面の専門家のようですから政府統計だけでなく、ご自分で「特別永住者」と「ニューカマー」の自殺率の違い、あるいは帰化者の自殺率といったものを調べることができないものだろうか、という期待を持ちました。

 例えば、帰化者の自殺率が「韓国・朝鮮籍者」のそれより低ければ「在日」は帰化によって精神的安定を得ることができるとなるだろうし、同じであれば帰化しても在日問題は解決しないとなるだろうし、高ければ帰化はかえって危険となるでしょう。 そういった数字がほしいところです。