不法残留外国人について(2)2021/05/17

http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/05/11/9376331 の続きです。

 今、入管法改正が大きな議論となっているせいか、在留資格を失った外国人(不法残留)の話がよくマスコミに登場します。 多くのマスコミは入管法改正に反対の立場を強く打ち出していますね。

 そのマスコミが、“この外国人が本国に送還されると大変なことになる、殺されるかも知れない”という記事を出しているのですが、その具体例を読むとどうも疑問に感じるものが多いです。 前回の拙ブログで取り上げたように、毎日新聞の記事にあったミャンマー人等の例がそうでした。

 今回は5月16日付の西日本新聞にある「『国に帰って殺されろとでも言われているよう』入管法改正におびえる難民申請者」と題する記事に出てくる外国人を取り上げます。 https://news.yahoo.co.jp/articles/55fa7ff2079730dc01b9d9ae74b952a121a40314

東京都八王子市に住んでいた知人のネパール人男性を頼って2016年に来日。 永住権を得たこの男性と結婚し、配偶者として在留資格を得て暮らしていたが、昨年離婚し、在留資格を失った。 難民申請は却下され、現在は不服申し立ての審査請求中。 認められなければ不法滞在者として強制送還される可能性がある。

 このネパール人女性は内戦の母国を避けて来日したのですが、日本では「永住権者の配偶者」資格を得て暮らしてきたことが分かります。 しかし離婚したのですから、当然のことながら「配偶者」資格は喪失します。 そのまま日本に滞在していると、不法滞在となることも当然です。

 ところで私事ですが40年前(1970~80年代)のことを思い出します。 韓国女性が在日韓国人男性と結婚して来日する場合が多かった時代です。 彼女らは「永住権者の配偶者」の資格で生活することになります。 そして離婚すればその資格を失うので、離婚されまいと必死でしたね。 男性の方が別れると言って家出までするのですが、女性は男性の両親(舅姑)の世話を一生懸命にやって信頼を得て、息子には絶対に離婚させないと言ってくれたと言っていました。

 またある韓国女性は在日韓国人男性と結婚したのですが、程なく男性が事故で死亡。 この場合も「配偶者」資格は喪失します。 ただし事情がそうでしたから、1年ほどは在留資格を維持できました。 そして彼女はその合法滞在期間中に次の結婚相手を見つけようと、在日韓国人や日本人男性を必死に探していましたねえ。 そうしないと不法滞在となって送還される可能性があるからです。 祖国ではバツイチの女性は生活が難しく、水商売か売春くらいしか仕事がないので、何としてでも日本に残りたいと言っていました。

 またある韓国人女性は在日男性に嫁に来て子供を生みました。 子供は男性の永住権を受け継ぎますから、永住権者となります。 そうすると、その女性は永住権を有する子の母親となりますから、男性と離婚しようが死別しようが、子を養育している限り送還される心配はなくなります。

 昔のことですが私は以上のような話を聞いてきましたから、西日本新聞の記事に出てくるネパール人女性の話には疑問を抱かざるを得ません。 なぜ合法的な在留資格を得ようと努力してこなかったのか?という疑問です。

3回目の難民申請中のスリランカ人男性(39)は「国内の暴力団の恨みを買い、04年に外国への避難を決めた」と言う。 仲介業者を頼って逃げた先が日本。 難民認定率の低さは知らなかった。    「業者にだまされた。帰国すれば命はない」

 これにはビックリ。 「(祖国)国内の暴力団の恨みを買って」日本に逃避してきた人がなぜ難民なのか? これを難民扱いするのなら、麻薬マフィアの抗争で逃げてきたとか、借金取りの取り立てから逃げてきたとか、そんな人まで難民として受け入れねばならないことになります。 またそんなことを言っていたら、祖国で殺人を犯して逮捕を逃れようと来日した人も「帰国すれば死刑になる」から難民だという主張も成立することになります。

 西日本新聞の記事では、入管法改正に反対するための具体的事例として以上の二点を挙げています。 しかしどちらも私には疑問を抱くばかりです。 

【拙稿参照】

不法残留外国人について      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/05/11/9376331

かつての入管法の思い出      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/10/17/9306547

昔も今も変わらない不法滞在者の子弟の処遇  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/03/21/9226536

8歳の子が永住権を取り消された事件 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/12/01/9322206

コメント

_ 辻本 ― 2021/05/18 13:35

今の入管法改正問題の議論について、一番大きな違和感は、法やルールに反した人を保護しようという話ばかりが出てきて、法とルールを必死に守ってきた人たちを無視していることです。

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