日本進出の焼き肉店「白丁」2021/08/26

カン・ホドンの焼き肉店「白丁」が日本に進出していた

 朝鮮語の「白丁(ペクチョン)」というのは、日本では「穢多」に相当する言葉で、李朝時代から続く被差別身分の賤民を意味します。 平凡社『新版 韓国・朝鮮を知る事典』(2014年3月)では「白丁」は次のように説明されています。

朝鮮の被差別民。‥‥白丁は賤民の代表として厳しい迫害を受けた。 結婚は白丁間のみに限定され、奴婢などと異なって身分上昇の機会は閉ざされていた。 職業の制限は厳しく、農業以外に主として柳細工の製造販売や畜獣の屠殺などに従事し、それがまた差別観念を再生産した。 一般集落に居住することも許されず、町の郊外に彼らのみの集落を形成し、冠や衣服にいたるまで制限されて、一般民衆から賤視された。(456頁左欄)

1894年の甲午改革で身分解放が行なわれたが、5万~10数万といわれる白丁に対する差別はその後も厳存した。 1923年、日本の水平社に刺激されて彼らは衡平社を結成し、解放運動を開始した。 現在は南北朝鮮ともに身分としての白丁は消滅した。(456頁左~右欄)

 読めば分かりますように、朝鮮の「白丁」は日本の「穢多」と瓜二つと思えるほどに非常によく似ています。 そして現在では韓国でも北朝鮮でも、身分としての「白丁」は消えて一般的に見えなくなりましたが、侮蔑語・差別語としての「白丁」は残り、今でも使われています。

 それは個人間のこそこそ話の中だけでなく、大手新聞やドラマ、映画などにも出てきます。(下記参照) この状況は、「穢多」が差別語として絶対に使ってはならないとされている日本から見れば、驚くしかありません。

韓国ドラマに出てくる「白丁」  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2008/05/31/3552264

韓国映画に出てくる「白丁」   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/13/8070271

韓国の有力紙に出てくる「白丁」 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/06/30/8121172

脱北者団体が使った「白丁」という言葉 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/04/08/9056977

「개백정」とは何か?      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/12/29/9018451

「白丁」について       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/05/03/8841899

韓国の進歩系も使う「白丁」  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/01/17/9202929

 この差別語を逆手に取ったのか、韓国の有名芸能人カン・ホドンは自分の経営する焼き肉店の名前を「白丁」とし、その名前でチェーン店を展開してきました。 これだけでもビックリですが、この焼肉チェーン店が日本にも進出していたのですねえ。 その名も「カンホドン白丁」。 

https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13241638/ https://www.tokyoheadline.com/485018/

 もう本当にビックリですねえ。 日本の「穢多」とほとんど同義の身分差別用語で、しかも今でも罵倒語として使われている「白丁」を、日本進出の店の名前にも使うとは‥‥!

 日本ではこのカン・ホドンの店について知らない人が多く(私も知りませんでした)、だからなのでしょうか、これは問題だと提起する人もおらず、議論されたことがないようです。 そしてこの事実は、日本の部落差別の今後を展望する上で、大いに参考になると思います。

 ところで、ヌルボさんが「白丁」に関して論じておられます。 カン・ホドンの焼き肉店についても詳しく言及されています。。

https://blog.goo.ne.jp/dalpaengi/e/bce31979581276248c8116b4e9c6d1f3

https://blog.goo.ne.jp/dalpaengi/e/004c7e65061117a64eed0d05bf2330de