石破茂インタビュー―東亜日報2021/12/11

 『東亜日報』2021年11月24日付けに、自民党の石破茂氏のインタビュー記事がありました。   https://www.donga.com/news/article/all/20211124/110425948/1 何かの参考になるかなと思って訳してみました。

日本を執権する自民党の石破茂(64)衆議院議員は、17日に東京衆議院会館で本紙とインタビューをして、韓日関係改善策を尋ねる質問に、このように答えた。 彼は人口減少、安全保障、首都圏人口集中、格差問題などを例にしながら、「両国共通課題がこのように多いのに、過去史問題で全く協力しないのは残念なこと」と言った。

韓日関係完全のために、両国の首脳会談も必要だと主張した。 中曽根康弘 前総理の例を挙げて、「あの人はどっちの方かと言えば右側(右翼)に近い」と言いながら「しかし訪韓前に韓国語で歌を歌えるくらいに熾烈に練習し、韓国との友好関係を構築した」と言った。 文大統領、岸田文雄総理も首脳会談の過程で相手を配慮する姿を見せるなら、関係改善につながるのだと言った。

石破議員は、先月31に行われた衆議院選挙(総選挙)で鳥取1区に出馬し、10万5441票(84.07%)を得た。289人の小選挙区当選者のうち、最高得票率だ。 彼はマスコミの世論調査で「次期総理候補」として、ずっと1・2位を占めるくらい国民的人気も高い。 しかし今まで四回総理に挑戦して、すべて失敗した。韓国とは違って、日本は国民が直接総理を選ばないためだ。 国会議員の票が事実上総理を決定するが、安部晋三前総理の各種スキャンダルを批判し、間違った日本の政治について「間違った」とはっきり言う彼を、相当数の自民党議員は不快に思っている。

自民党ナンバーツーの幹事長をしたこともある石破議員は、今度の当選で12選議員となった。 当選回数は、自民党内で六番目、衆議院全体で八番目である。 彼の発言が日本国民に及ぼす影響力はずば抜けていると言うしかない。 次は一問一答。

―対韓輸出規制で、日本企業も被害を被った。 解除する時ではないか。

「それは感情の問題ではなく、安全保障上の問題だ。韓国が日本の輸出品を安全に管理し、日本がそれを納得して安全保障上の問題がないと判断すれば、解除することができる。」

―韓日関係改善策は何か。

「ツートラック接近が必要だ。 過去史問題をうやむやにしようとか、なかったことにしようとか、するのではない。 真剣に長い時間をかけて互いに話をせねばならない。 しかし、その問題によって、他の協力が全く進展しないのなら、マイナスが余りにも大きい。 世界で日本と韓国くらい、共通課題を持った国はない。共通課題について、両国が互いに協力せねばならない。

―韓日首脳会談の必要性は、どう見るか。

「必要だ。 会ったとして、直ぐに仲良くはならない。 しかし、相手を知るために努力することが重要だ。 私が防衛大臣と農林水産大臣の時、色んな国家の長官と会って話を交わしたが、相手に会う時、徹底に研究した。 今までどんな経歴を積み、好きな料理は何で、飼っている子犬の名前まで‥‥。 そんなことを把握して、本当にいい関係を結ぼうとするなら、そんな気持ちが相手に伝わるようになる。

―韓国に対する岸田総理の外交を、どう評価するか。

「岸田総理は長い間安部晋三政権の外相をした。 基本的に安部前総理の方針を継承するものと思われる。 岸田総理が韓国と互いに信頼し尊敬できる関係を作るんだという強い意志があれば、関係改善に行くものだ。

―岸田政権の敵基地攻撃能力保有の主張に、韓国と中国が憂慮している。

「私が防衛省長官した20年前は、衛星で敵基地を把握できていた。 しかし今は移動式発射台が増えて、どこが敵基地なのか把握するのが難しい。 潜水艦からミサイルを発射することもできる。 敵基地がどこにあるのか、いつ攻撃するのか、どのように攻撃するのか等、具体的な内容を把握できない状態から、敵基地攻撃能力保有を議論することは、特に意味がない。 また隣国が憂慮するならば、それは日本からの情報提供が不足したためなのだ。 説明し納得させようと努力を続けねばならない。」

―自民党は総選挙公約集で、国内総生産(GDP)比1%の水準だった防衛費予算をGDP比2%以上も念頭に置くと言った。

「防衛分野でどの程度の予算がかかるのかを議論し、その結果があってこそ、GDP2%の防衛費として決定されるのだ。 もし最初からGDP2%で決定しておいて、「さあ、必要なものを全て言え」とするなら、本末転倒だ。

―日本から韓国に対する「謝罪疲労症」の話が出ている。

「韓国の国民が納得できる謝罪が何なのかを悩むのが重要だ。 なぜ日韓関係がよく回って行かないのか、韓国の国民が何を要求しているのか、十分に理解しないなら、また同じことを繰り返すことになる。 日本人は韓国の歴史を深く勉強し、韓国人たちの思考の根幹に何があるのかを理解せねばならない。 日本は過去に大韓帝国の宮殿がある場所に朝鮮総督府を設置、韓国国民の自尊心を崩した。 独立国家だった大韓帝国を合併して国家を奪った。 こんなことを言えば、日本国内から強い批判が出る。 しかし本当に日韓が良好な関係になることが、地域の平和のために重要だと考えているので、勇気をもって言いたい。 勇気ある人が日本にも韓国にも、もっと多くなることを期待している。

 石破さんは「日本人は韓国の歴史を深く勉強し、韓国人たちの思考の根幹に何があるのかを理解せねばならない」と言うように、日本人が韓国の歴史を知って韓国人を理解することが必要だという主張ですね。 言葉面ではその通りで反対することはないのですが、そのためには正確な歴史事実を知っておく必要があります。

 しかし石破さん自身が歴史をどれほど正確に知っているのか、疑問があります。 これについては、拙ブログでは2年前に下記の通り論じたことがありますので、ご笑読くだされば幸い。

石破茂さんのデタラメ創氏改名論 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/10/06/9161642

コメント

_ 河太郎 ― 2021/12/12 00:41

石破茂氏の発言はツッコミどころ満載ですね。

石破茂氏<彼は人口減少、安全保障、首都圏人口集中、格差問題などを例にしながら、「両国共通課題がこのように多いのに、過去史問題で全く協力しないのは残念なこと」と言った。>

安全保障でもし日韓で協力できるなら結構なことですが、人口減少、首都圏人口集中、格差問題は両国の国内事情や経緯が異なるので協力など無意味、効果なしと思いますね。

石破茂氏は中曽根氏が韓国語を覚えて話したこと肯定的に評価したが、回顧録『中曽根康弘が語る戦後日本外交』では「韓国相手の折衝は官僚的な手法では決して成功しません。政治的、商人的手法で扱った方が成功しやすい」とあるそうです。中曽根氏の韓国語習得も単なる手練手管のひとつでしかなく、韓国に対する敬意からとは見えませんがね。

石破茂氏<文大統領、岸田文雄総理も首脳会談の過程で相手を配慮する姿を見せるなら、関係改善につながるのだと言った。>

これも又トンチンカンな認識ですね。文大統領の反日全開の演説や政策、岸田氏は自身が苦労してまとめた日韓慰安婦合意をあっさり反故にされているのに、石破氏はよくもこのような幼稚な意見を言うものですね。

石破茂氏<真剣に長い時間をかけて互いに話をせねばならない。 しかし、その問題によって、他の協力が全く進展しないのなら、マイナスが余りにも大きい。> 

戦後最悪の日韓関係は、韓国による慰安婦合意破棄と元徴用工賠償命令判決確定が根本的原因です。韓国側が日韓基本条約に従い行動する事、そして、アメリカが仲介した慰安婦合意にもとづく解決は、日本政府の譲ることのできない立場です。ボールは完全に韓国側にある、今さら何を話し合うのか。石破氏の認識はビックリ仰天ですね。

石破氏 <岸田総理が韓国と互いに信頼し尊敬できる関係を作るんだという強い意志があれば、関係改善に行くものだ>

日韓慰安婦合意の反故で煮え湯を飲まされた張本人の岸田総理にそんな事を期待できるとは、これまた浮世ばなれした話です。

石破氏<韓国の国民が納得できる謝罪が何なのかを悩むのが重要だ。>

エッ、エッ!!日本政府が悩みに悩んだ末に到達した結論が、今の日本政府の毅然とした態度ではなかっのたのか。ボールが韓国側にあるとする一線は決して譲らない、と。
日韓基本条約をひっくり返すことを認めたら今後の日韓関係はない、念には念を入れて仲介人アメリカを用意し、テレビの前で両国外相の慰安婦合意した発表がいとも簡単に破られたら日韓関係は成立するのか。これが日本政府の認識であり、そしてそれは正しい認識なのです。

_ 昔昔の話 ― 2021/12/13 07:57

反日は韓国人のアイデンティティ探ィ
小中華思想で東夷と軽蔑し下位にあるとみなしていた日本から、併合され(国際法上は植民地ではないです)、無理やり、日本を通しての近代化・日本化された近代化を遂げてしまった。1945年8月時点で、朝鮮半島の社会インフラの80パーセント(確か80でした、70だったかも知れません。出典は度忘れしました)が日本統治下の建設によるものでした。精神的な社会的基礎つまり教育を受けたことにより身についた思考方法や、李朝時代の身分や官僚制度などを壊したことによる人間関係のあり方なども、後戻りできない程の影響を与えたことでしょう。
しかし日本の統治は終わり、朝鮮半島は自らのアイデンティティを取り戻すために、かつての中華思想に基づく日本に対する優越感を主張し始めました。易姓革命と同じで、前権力を破壊することにより現権力の正統性を保持する歴史の繰り返しです。
しかし長い間、日本に対しての優越感を実感することはできませんでした。韓国は貧しかったからです。
この時期に、日本人は、かつての保護国側としてまた貧しい韓国をみて同情と優越感を抱いていました。ソ連と中国からの安全保障上の防壁としてカネを注ぐも仕方ないという理由もありました。
小沢氏はこの時代の意識のままと思います。
韓国人は(恐らく北朝鮮も)対等・自由な人間関係というもの、国と国の関係というものを知らない、慣れていないと思います。かつてペ・ヨンジュンの何とかソナタ(私はみていませんが、すごいブームであったことは知っています)が日本のお茶の間に受け入れられた時、私は日本人と韓国人が対等な関係に至ったのだと思いました。それまでの韓国人の複雑な対日感情つまり学べ・見習え・教えてもらへ・勝手に取ってしまえ・憎い・恨むといった感情が消え、普通の自由な対等な関係になるのだと思いました。ところが、韓国人は一足飛びに日本に対する優越感を抱きました。韓国の基礎の中に染みついた日本を引きはがし、消し去り、足蹴にし、憎むかを探すようになりました。
しかし、日本人から見ると、それに韓国人が成功するとは思えないのです。「名称」を変える?しかし真実は「制度」なり「実体」を変えないと日本を消し去ることはできないのでは? ところが、韓国の近代化の中身は日本化なのですから、「制度」も「実体」も消し去ることができない。
国交回復後も、韓国は、日本の健康保険や地方議会やらの制度を勉強するために、地方自治体に研修生をぞろぞろと送ってきていたのです。
日本を引きはがそうとしながら手本にするのはやはり日本でしかなかった。たぶん現在はさすがに研修生はないかも知れませんが・・

_ 竹並 ― 2021/12/13 10:44

>【なぜ韓国は『反日』か。 もしも日本が他国に占領され、(創氏改名政策によって)『今日から君はスミスさんだ』と言われたらどう思うか】(石破茂さんのデタラメ創氏改名論)

上記、石破氏の発言の前提にあるのは、「日本は大韓帝国を併合し、日本領=朝鮮として統治したのではなく… 日本軍が韓国を(強制的=不法に)占領していたダケなのだ」という歴史観「日帝強占史観」ぢゃないですかね?

石破先生、何をどう言えば相手(韓国人)が喜ぶか、よく研究しているな(勉強家)という印象を(僕は)受けますね(w

ご参照…> 日本帝国をナチス・ドイツになぞらえるというのは以前からよくある手だが、日韓併合期をナチス・ドイツによるフランス占領になぞらえるというのは比較的、近年の流行なのである。(by 鄭大均 教授)
 https://jinf.jp/feedback/archives/17931

_ 河太郎 ― 2021/12/13 20:15

石破氏「しかし本当に日韓が良好な関係になることが、地域の平和のために重要だと考えているので、勇気をもって言いたい。」

私も石破氏に「勇気」を発揮してもらいたいですね。こそこそと韓国の新聞のインタビューに答えるのではなく、日本で、講演会で、新聞で、堂々と「日本国内から強い批判が出る」のも押しのけて自らの韓国理解を開陳してほしいですね。

石破氏<日本人は韓国の歴史を深く勉強し、韓国人たちの思考の根幹に何があるのかを理解せねばならない。>

石破氏はすでにもう「韓国の歴史を深く勉強し」て「韓国人の思考の根幹」を理解しているのでしょうから、ぜひ日本の有権者に向かってその成果とやらを披歴してほしいですね。

鳩山元首相が韓国を訪問して、土下座しました。鳩山元首相は、韓国人から見たら最高の「良心的日本人」であることは間違いありませんね。

当然、韓国世論やマスコミが最も歓迎するのは、鳩山由紀夫元首相の再登板でしょう。

_ (未記入) ― 2021/12/25 22:13

性理学の基本である理気二元論が朝鮮民族の根幹をなすと思います。辻本さんはいかがお考えですか?

_ 辻本 ― 2021/12/26 03:44

理気二元論とは、小倉紀蔵ですね。
読んでその時は理解できたような気がしたのですが、結局はよく分かりませんでした。
朝鮮儒学は難しくて、私には手が負えないと感じました。

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