嫌韓は2005年から本格化した2022/04/01

 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/03/21/9474297 の続きで、木村幹『韓国愛憎』を読んでの感想です。

2005年に本格化する「嫌韓現象」の顕在化だ。 この嫌韓現象が起こった理由について‥‥明らかなことは、嫌韓現象の名前の由来ともなった山野車輪『マンガ嫌韓流』がこの年にヒットしたことであり、この作品がこの時点では、先立つ韓流ブームへのアンチテーゼとして位置付けられていた (139頁)

2003年の爆発的な韓流ブームと、05年以降の嫌韓現象の高揚は、韓国に対する日本社会の関心の顕著な高まりを意味していた‥‥ なぜ日本社会はこんなにも韓国に気を向けるようになったのか、この韓流ブームと嫌韓現象という正反対の現象には、実は大きな共通点があるのではないか (141頁)

インターネットの普及を始めとする情報社会の進展で、それまでは韓国語を学び、新聞を購入するなどしなければ触れられなかった情報を、多くの人々が容易に入手できるようになった。 それらの情報は多くの日本人にとっては、それまでアクセスが不可能に近かったものがアクセス可能になったという意味で「新しい」のだ。‥‥ 一見正反対に見える韓流ブームと嫌韓現象は、こうしてこれまで触れられなかった情報に、一般の人たちが降れられるようになって生じた同根の現象なのだ。(142頁)

 嫌韓現象の高揚・本格化は2005年から始まるという説には、成程と思いました。 拙HPは1999年から始まり、2000年4月以降から韓国・朝鮮や在日問題を中心に話題を批判的に提供してきました。 当初はこのことに関心を有している方からの投稿が主だったのですが、2005年以降に急に嫌韓投稿が増えたのです。 それも全くの素人が、まるで在日や韓国の悪いことは何でも知っているぞと言わんばかりの投稿が多かったです。 

 これは上記のように日本国内では、2003年に冬ソナを始めとする韓国ドラマが日本の中高年女性に非常に新鮮に感じられて韓流ブームが始まったのと同様に、2005年からは韓国や在日への批判的説明が新鮮に感じられて嫌韓現象が高揚した、だから在日や韓国の批判すべき点を分かりやすく書いた拙HPやブログへのアクセスが増えたものと考えられます。

 しかし彼らは元々がほとんど素人でしたから、俄か勉強での知識で「特別永住をなくせ!」とか「通名禁止!」とか主張し、甚だしくは「韓国人は死ね!殺せ!ゴキブリ!」とか「ウソつき!」とか叫ぶのでした。

 せっかく韓国に関心を持ったのだから、議論しながら正しい知識を持ってくれればいい、更には韓国文化に親しみ、また在日と知り合って付き合うようになってくれればいいと当初は思ったのですが、これは無駄でしたね。

 そして彼らは正確な知識や情報を得ようとする気が全くといっていい程にありませんでした。 インターネット情報や嫌韓雑誌・嫌韓本に安易に頼るのみで、情報の根拠を確かめようとする気配がありませんでした。 もしそうしようと思えば、図書館に行って専門書や資料集を探すとか、また当然ながら韓国語を知らなければならないのですが、そんな地道な努力が嫌なんでしょうねえ。

 在日や韓国の悪口を言いたくて、その材料を集めることだけに集中しているようでした。 それも長期間、時には十年以上も続く人もいます。 私は「嫌韓偏執者」なんて名付けました。

韓国メディアもこの状況を自らのビジネスのために利用した。 『朝鮮日報』『中央日報』『東亜日報』を始めとする大手メディアの日本語版記事は、実は韓国で掲載された新聞記事をすべてそのまま機械的に翻訳したものではない。 あくまで日本語版の読者が関心を持ちそうな記事を選んで訳したものだ。(143頁)

日本語版読者が好んで読みそうな記事は、大きく二つに分類できた。 一つは韓流ブームに関わる記事であり、ペ・ヨンジュンを始めとする韓国人タレントの動向や最新のドラマや映画の情報が積極的に翻訳された。 もう一つは領土問題や歴史認識問題、さらには北朝鮮との関係の記事だった。(143~144頁)

実のところ日本人読者の関心をより集めたのは、後者の方だった。 だからこそ、韓国メディアは多くの記事のなかから日韓関係に関わる、しかも時に過激なメッセージを持つ記事を積極的に日本語版に掲載した。 韓国の各紙の計算通り、日本人読者はこれに「また韓国が日本を批判している」として飛びついた。(144頁)

当時、ソウルで会った韓国のある新聞のオンライン版開発者は、この状況に対して私に「嫌韓現象のおかげで日本語版は想定以上の業績を収めている」と嬉しそうに話してくれた。 インターネットの普及が日本に先駆けて進んだ韓国では、すでに「紙」の新聞は斜陽産業になっていた。このようななか、インターネットを通して熱心な読者が付く日本語版は、彼らにとって貴重な収入源にまで成長した。(144頁)

 そういえば拙ブログでも、「私は毎日韓国の新聞を読んでいます」と豪語するような投稿をした人がいました。 へー!すごい!とビックリして聞いてみたら、何のことはない、日本語版でした。 何を偉そうなことを言っているのか、韓国の新聞社を儲けさせているだけじゃないか、と思いましたね。 韓国の新聞をそのまま原文で読めるくらいに、韓国語を勉強してほしいものです。

だが当然、そこには副作用があった。 インターネットを介した情報の収集には強固な「選択バイアス」が働くからだ。 日本語サイトを介した韓国からの膨大な情報流入は、人々がますます自らの偏見を強化することに繋がった。 こうして日本の韓国への見方は、この時期、急速にステレオタイプ化した。 韓国に好印象を持つ人々はこれを確認するための情報を探し、韓国に悪印象を持つ人々は批判を正当化する材料を追い求める。 そんな時代となっていた。(144頁)

 要するに、韓流ファンも嫌韓派も、自分に都合のいい情報だけを探し求めているということです。

 ただし韓流ファンは“好きになれば嫌な部分は見たくない”という当然の心理が働いています。 そしてこのことは外国文化を知って自分たちの文化の幅を広げ、日韓友好を促進することに繋がりますから悪いことではなく、称賛に価します。 

 しかし他方の嫌韓派はレイシズム発言を繰り返し、韓国人とのケンカをけしかけ、時には国益を害するような主張をしますから、害悪でしかありません。 その害悪は、韓国における「反日」と同じレベルです。 これは「嫌韓派は韓国化しつつある」「日本の“嫌韓”は、韓国の“反日”と同じ穴のムジナ」と私が言ってきた所以です。 

【拙稿参照】

韓国語のできない嫌韓派  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/03/28/9052386

韓国語が出来ずに韓国を論じる人たち http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/03/16/9047781

嫌韓派と韓流派        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/01/17/7540292

水野俊平『笑日韓論』 (続)   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/09/20/7439097

嫌韓派の論者たち       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/10/19/8708360

漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(12) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/03/09/7240684

日本人のウソ        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/10/05/7000567