カナダ国籍者が二重国籍を求めて提訴(2)2022/12/27

http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/12/26/9550477 の続きです。

 自分なりにそれぞれを説明しますと、

① 自らの意志でカナダ国籍を取得したのであれば、国籍法上日本国籍を喪失します。 従って彼女は本来この時点で、在カナダ領事館(あるいは日本の本籍地役所)に日本国籍喪失届を提出して戸籍を閉鎖し、日本パスポートを返納しなければならなかったのですが、彼女は怠ったようです。 このために日本の外務省・法務省は、彼女が日本国籍を喪失したことを把握できず、パスポートの無効措置が出来なかったと思われます。 ですから彼女はこの日本パスポートを使って海外旅行していた可能性があります。

② ここは想像になりますが、彼女は日本のパスポートとカナダのパスポートの二つを持って、日本に入国。 日本のパスポートは無効でしたが、彼女の本籍地では戸籍が閉鎖されておらず、法律の上では日本国籍者となっているので、入国管理局は特例措置として日本国籍者と見なして取り敢えず入国を許可したと思われます。

③ 彼女は日本に安定して滞在するためには外国人として永住資格がいいと考えたようで、本籍地に日本国籍喪失届を提出しました。

④ しかしこの時に提出したカナダ市民権証にはカナダ国籍取得の日付が記されていませんでした。 これでは日本国籍喪失日が分からないので戸籍に記載することが出来ません。 それで書類不備となって、国籍喪失届は受理されませんでした。

⑤ こうなると、彼女が日本に滞在している法的根拠は何かが問題になります。 そこで法務省は彼女が持っているカナダのパスポートに「日本国籍抹消」と記載されていることを根拠に、彼女に特例措置(正式でない措置)として在留許可を与えました。 これは出入国管理法に規定されていない在留資格になると思われます。 つまり法に基づかない在留許可となりました。

⑥ 現在の在留許可は法に基づかないものですから、厳密に言えば不法滞在と同じになります。 従って、彼女はカナダのパスポートでもって日本から出国すれば、他の不法滞在者と同様に5年間、日本に入国できなくなるという説明を受けます。

⑦ そこで彼女は、今度は日本のパスポート発給を求めます。 しかし既に日本国籍を喪失しているのであるからという理由で、拒否されます。 ただし彼女の戸籍はなおも閉鎖されておらず、表面的には日本国籍は残ったままです。 つまり日本国籍は喪失したが、それが戸籍に反映されていないという状態です。

 以上のような経過を経て、今回の提訴になったということが分かりました。 私の感想では、一番最初のカナダ国籍取得時に日本国籍喪失届を出してパスポート返納をしておかねばならなかったのに、それを怠ったことから混乱が始まったように思えます。

 また法務省が法に基づかない「特例措置」として、時には日本国籍と見なしたり時には在留許可を与えたりしたことも混乱を招いたようにも思えます。 おそらくは元日本国籍者の入国・滞在に特別に便宜を図ろうという善意だったと考えられるのですが‥。 (続く)

カナダ国籍者が二重国籍を求めて提訴(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/12/26/9550477

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