京都高麗寺の国際霊園 土葬墓地2023/02/20

 昨日(2023年2月19日)のYahoo Newsに、「『死んだら国籍も民族も関係ない』 99.99%が火葬される日本で、京都の寺が土葬を受け入れる理由とは」と題するドキュメンタリーが公開されているのを見つけました。    https://creators.yahoo.co.jp/shimadatakuya/0200398765

 場所は京都府相楽郡南山城村にある高麗寺(こうらいじ)です。 高麗寺は「こまでら」と読めば飛鳥時代の有名な寺跡ですが、「こうらいじ」と読めば1978年に創建された韓国系の寺院を指します。 宗派は曹渓宗です。

 「曹渓宗」は日本では馴染みがないですが、韓国では最大の仏教宗派で、ソウル中心部に本山があります。 皆さまには韓国旅行に行ってソウル市内を歩きまわった際に、曹渓宗本山を見た方は多いでしょう。 高麗寺の姉妹寺に当たる普賢寺(大阪市)が韓国から来日する曹渓宗僧侶たちの拠点になっているという関係ですが、韓国曹渓宗の末寺ではないようです。 高麗寺は宗教法人化されていて、「曹渓宗総本山高麗寺」となっています。

 この高麗寺は、土葬ができる霊園を経営しています。 国籍・民族・宗教・信仰に関わらず、すべての土葬を受け入れています。  https://www.dosoukyoto.com/ 

 イスラム教徒はその宗教的信仰から土葬を切に望んでいるのですが、日本には土葬できる墓地が余りに少ないので、かなり苦労していますね。 ですからイスラムを含めすべての宗教に関わりなく土葬を受け入れる高麗寺の事業は、たいへん貴重なものです。

 高麗寺の代表役員の崔柄潤さん(82)は、自分の子供の時のことを次のように振り返っておられます。

在日韓国人2世の崔さんは、子どものころは母親が持たせてくれた弁当箱を隠していた。 弁当箱を包んでいた新聞紙のハングルを見られるのが恥ずかしかったからだという。 就職活動では、学科試験を優秀な成績で通っても韓国人であることを理由に採用されなかったことがある。 担任の教師には「韓国籍のままではお前の能力が正当に評価されずもったいない。 早く帰化しろ」と熱心に勧められたが、それはできなかった。 「帰化してしまうと、自分自身に敗れたような気がして、どうもプライドが許しませんでした」と崔さんは振り返る。

 82歳、この年代の在日は全員と言っていいほどに同じような体験をしていますねえ。 そしてこの被差別体験が

過去に差別を受けた人間が、今度は誰かを差別しようなんて考えたらダメなんです。 だからこそ今、差別を受けている人の助けになれればと思った

として、土葬地に困っているイスラム教徒に手を差し伸べる‥‥、私なんかは胸が熱くなりますね。

 日本ではほんの数十年前までは、土葬が普通に見られました。 私の体験では30年ほど前に、家から車で20分くらいの地区で土葬行列を見たことあります。 僧侶が先導し、桶棺をロープで縛り丸太棒を差して二人が担ぎ、家族が棺を囲み、親戚や地区住民たちが行列をつくって土葬地に向かうところでした。 亡くなったおばあさんが〝死んだら土に返る、火葬は返れないから絶対に嫌だ″という遺言で土葬となった、これがこの地区の最後の土葬だろう、という話でしたねえ。

 今では火葬が普及するにともなって土葬へのタブー視が強くなり、差別的な目で見るようになったそうです。 そのためにイスラム教徒たちが墓地に困っているのですねえ。 日本もかつて土葬が当たり前の時代があったことを思い出せば、そんな差別的にしなくてもいいのに、と思うのですが‥‥。 だからこそ高麗寺の取り組みは貴重と考えます。

 土葬と火葬について、拙稿で取り上げたことがありますので、ご笑読くだされば幸甚。

土葬と火葬         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/10/27/9310074