金時鐘氏は不法滞在者なのでは‥(2) ― 2023/10/12
https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/10/07/9623500 の続きです。
金さんは20年前の2003年に韓国で戸籍を創設するのですが、その戸籍名は親から名付けられた「金時鐘」ではなく、日本で不正入手した外国人登録証名である「林大造」とされました。 これについて『なぜ書きつづけてきたか なぜ沈黙してきたか』(平凡社)という本の中で金さんは金石範さんなどから質問され、これに答える形でその間の経緯を語っておられます。
金石範: 彼(金時鐘)は、両親を置いて済州島から逃げてきて、親も亡くなっているし、(外国人)登録証の「林大造(イム・テジョ)」も本名じゃない。 金時鐘は本当の名前だけれども、それを客観的に証明するものは何もない。 私は、そういう事情を知っているからね。‥‥(金石範・金時鐘『なぜ書きつづけてきたか なぜ沈黙してきたか』平凡社ライブラリー828 2015年4月 195頁。 以下同書から引用)
金時鐘: ‥‥ 後日、墓参の折、妻が僕の家族関係の写真が一枚でも残っていませんかと聞いたのね。 そしたら、この40年間墓守をしてくれている甥が、とたんに自分の胸を叩きながら泣きだしてね、「な、テリョジュプソ(どうか私を叩いてください)‥」と言ってね、「みんな燃やしてしまいました。何も残っていません」と言って謝るんですよ。‥‥
金石範: 時鐘につながる証拠のようなものはすべて焼いてしまった。 残して見つかったら、捕まって殺られてしまうじゃない。 だから、私を叩いてくれって謝ったわけや。(以上 198~199頁)
金時鐘: ‥‥なぜ私は4・3関係を隠して口にしなかったか、そのことから話すと‥二つ理由があります。‥‥ もう一つは、やむ得ない事情でこちらに来たにせよ、4・3事件で追われて来たことを明かすということは、不法入国者ということを自ら名乗り出るということでもあるのですから。
金さんは4・3事件に関係したために韓国に自分の痕跡がなくなった、そして今4・3事件を語ることは不法入国者であることを自ら告白するのと同じだ、と言っておられます。 自分が密入国者であることを、明白に認めておられますね。
金石範: 時鐘は、北で生まれているから出生記録もないだろう。 この人間(金時鐘)の存在を証明する書類は何もない、時鐘は幽霊みたいな存在じゃないか。 それが今回やっと済州島に本籍ができて、幽霊が人間になったようなものだけど、どうやって、韓国に戸籍を作ったんや。
金時鐘: ‥‥当時の在大阪副総領事、情報部の責任者である外交官ですが、親の墓参りを続けたいという僕の思いを殊のほか親身に受け入れてくれて、国籍取得の方法まで講じてくれました。 外国人登録証名での新たな戸籍の取得を大法院に申請して、裁可を受けてくれたのです。 「金時鐘」では、手続きが複雑すぎて駄目だとのことでした。 それでも特別な計らいであったようには思っています。 戸籍は他人が使用している住所でなければ、韓国のどこでもいいと言ってくれていましたが、済州島以外に故郷を作る気などないしな。 ‥‥
文京洙: 領事館も、金時鐘先生だから特別にしたんでしょう。(以上 200~201頁)
以上が日本で不正入手した「林大造」名で韓国の戸籍を創設した経緯なのですが、本人だけが語っておられることなので本当なのかどうか検証できず、何とも言えないところでです。 ただ韓国も一応法治主義ということなので、こんな風に他人の名前で戸籍を作るなんてあり得ないと思うのですが‥‥。
どんなに「手続きが複雑」でどれほど手間暇がかかろうとも、法的に筋を通すのが法治主義です。 もし「特別な計らい」「金時鐘先生だから特別にした」のが事実ならば、これは超法規的措置になります。 国家的危機が切迫した時期でもないし、しかも韓国の大法院(最高裁判所)が裁可したというのですから、更に理解できなくなります。 ひょっとして韓国ではこのような超法規的措置が珍しくないのでしょうか。 ここは韓国政府の説明を聞きたいところですね。
文京洙: 韓国に戸籍を作って韓国籍を取られて、韓国との関係はそれで決着がついたわけですけど、日本の入管法との関係はまだ解決していないですね。
金時鐘: 韓国籍を取ったとき、挨拶状を2003年の12月10日付で出しました。その挨拶状をどこで見たのか、大阪府警外事課の警官がすぐさま問い合わせに来ました。 私の家までです。 登録証の名前と「金時鐘」との違いをあれこれ聴いて言いましたが、「金時鐘」はペンネームだと言い張りました。(以上 201~202頁)
文京洙さんが「日本の入管法との関係はまだ解決していない」というのはその通りです。密入国して外国人登録証を不正入手し、その後その不正登録証を更新し、生活してこられました。 ですから法的には今なお「解決していない」のです。
ところが金さんは警察に対して「林大造」が本名で、「金時鐘」はペンネームだと言い張っておられるそうです。 そうなると金さんが体験として語っておられる4・3事件や密入国の話は、実はフィクションということになります。 自分は戦前から継続して日本に居住してきた「林大造」という人間であり、4・3事件や密入国なんかの話をしているが、それは作り話であると主張しておられるわけです。
しかし作り話なのか本当の話なのか、証拠が出てこない限り分からないとしか言いようがありません。 証拠がない以上、金さんの主張は通用することになります。 つまり警察としては今のところ、金さんの在留資格は法的に「解決している」とせざるを得ないのです。
まとめますと、金さんは表向き(建前)では戦前から日本で暮らしてきた「林大造」であり、在留資格も問題なく合法・正当に生きてきた、だから4・3事件なんて見たこともないし、密入国もしていない、自分はそういう小説を体験談のように書いただけだ、ということです。
一方、裏向き(本音)では、4・3事件の凄まじい体験をしてそれから逃れるために日本に密入国し、不正に「林大造」名の外国人登録証を入手してその名前と在留資格で生きてきた、だから4・3事件や密入国の体験談は実話であり、それ以降ずっと一貫して不法滞在者であった、ということです。
おそらくは言動から前者の表向きが虚偽で、後者の裏向きが事実でしょう。 金さんは「林大造」名の外国人登録証(今は特別永住者証明書あるいは在留カード)の更新を続け、その間に兵庫県の公立高校に「林大造」の名前で教師(実際には実習助手。金さんは教員免許を持っていない)として定年まで勤め上げ、おそらくその後「林大造」の名前で年金を受け取りながら現在に至っていると思われます。
最初の外国人登録証が不正であるなら、その後の更新された登録証も不正であり、その名前を使用した法的行為(米穀通帳、健康保険、年金などの行政手続きや公務員就職)もまたすべて不正となります。 ですから金さんは密入国の罪だけでなく、その後も70年以上にわたって罪を重ねてきたことになります。 玄善允さんの言葉を借りれば「金時鐘にとっては、日本での生活そのものが非合法に他ならず」(同時代社『金時鐘は「在日」をどう語ったか』 170頁)だったのでした。
金さんは本来なら早い段階で警察や入管に自首し、一旦退去強制命令を受けた後、法務大臣から「在留特別許可」をもらって「金時鐘」という元々の本名での外国人登録証を取得するという過程を経ねばならないところでした。 そうすれば何の心配もなく日本に堂々と在住できました しかしそれをせずに、さらには不正の外国人登録をそのままにしておいて韓国の戸籍まで作ったというのですから、日本での罪に本国での罪を重ねたことになります。
金鑽國を父、金蓮春を母とする金時鐘という人間は、日本にも韓国にも存在しないのです。 存在するのは、「金時鐘」を自称する「林大造」という人間だけです。 「林大造」の韓国戸籍(今は家族関係登録簿)の父母欄には、「林」名の人物が掲載されていると思われます。
金さんは年に一・二回、済州島にあるご両親のお墓参りをしておられるということですから、韓国に入国する際に「林大造」名の韓国パスポートを使っておられるはずです。 つまり自分を証明するパスポートは「金時鐘」ではなく他人である「林大造」です。 ということは、韓国に存在しないはずの「金時鐘」が両親の墓参りに行っていることになるわけです。
金さんは両親のお墓に「不肖子 時鐘」と刻んだ石碑を建てられたそうです。 http://www.gendainoriron.jp/vol.05/serial/se01.php 「不肖の息子」の意味ですが、ご両親の死に目にも会えず、また40年もお墓参りをしてこなかっただけでなく、今は他人の身分でお墓参りをしていることにも「不肖」と表現されたのではないでしょうか。 これは法的な罪ではないですが、道義的にはどうなのかと疑問を抱きます。
金時鐘さんはもう90代半ばに差し掛かるご年齢ですから、今さら軌道修正できない状態なのでしょうかねえ。 (続く)
【追記】
「金時鐘」のウィキペディアによると、その経歴のなかで次のような一文があります。
在留特別許可を得て在日朝鮮人の政治・文化活動に参加した
「在留特別許可」ですから、次のような手順が踏まれたはずです。 密入国が発覚(密告もしくは自首)して、入管の留置場に数日間収容されて取り調べを受け、そして退去強制処分が決定された上で、保釈金数十万円と外国人登録法違反の罰金数万円を支払い、法務大臣から「在留特別許可」を与えられた、という手順です。
その特別許可を与えられた人物は本名の「金時鐘」ではなく他人の「林大造」であり、この名義の外国人登録証が発給されたことになります。 つまり「在留特別許可」ならば法的にこのような手順を踏んでいるはずなのですが、金さんの著作や発言の中にこれが全く出てきません。 そもそも警察や入管の取り調べを経ているのに、他人の名前の外国人登録証が発給されるなんて、あり得ないでしょう。
金時鐘さんに在留特別許可が出たというウィキペディアの記述は、虚偽と考えて間違いないと思われます。
【金時鐘さんに関する拙稿】
金時鐘『朝鮮と日本に生きる』への疑問 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/07/28/7718112
金時鐘さんの法的身分(続) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/08/13/7732281
金時鐘さんの法的身分(続々) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/08/26/7750143
金時鐘さんの法的身分(4) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/08/31/7762951
毎日の余録に出た金時鐘さん http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/08/27/8950717
本名は「金時鐘」か「林大造」か http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/08/23/8948031
金時鐘さんは本名をなぜ語らないのか? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/07/02/9110448
金時鐘さんは結局語らず http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/08/13/9140433
金時鐘さんが本名を明かしたが‥‥ http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/10/26/9169120
金時鐘『「在日」を生きる』への疑問 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/01/8796038
金時鐘さんの出生地 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/07/05/7700647
金時鐘氏は不法滞在者なのでは‥(1) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/10/07/9623500
コメント
_ 海苔訓六 ― 2023/10/13 14:42
_ 辻本 ― 2023/10/13 18:21
「姓」と「本貫」が同じであれば結婚できないと意味で、同姓でも本貫が違えば結婚できます。
つまり金時鐘さんの両親は同じ「金」姓ですが、本貫が違っていたということです。
本貫が同じかどうかは、戸籍を見れば分かります。
なお韓国では1997年に、同姓同本不婚の民法規定は違憲だとする判決が出ましたので、それ以降は結婚は可能となりました。
_ 辻本 ― 2023/10/14 09:28
秀吉の文禄慶長の役の際、中国の明から朝鮮の援軍が来ました。
その時、明の将軍が、朝鮮の高官が同姓の女性(本貫が違う)と結婚していると知って、そんな人とともに出来ないと言い放ったという話を聞いたことがあります。
_ 七菜子 ― 2023/10/15 10:24
金時鐘氏のwikipediaですが、「在留特別許可」の箇所は出典がありません。
_ 海苔訓六 ― 2023/10/15 11:38
ちなみに自分が韓国観光したときに町中にやたら横断幕が飾られて「○○さん、合格おめでとう!」みたいなのがあって驚きました。
ちゃんと自治体の許可をとって飾ってるのか?と。
安山市の常緑樹駅でも金廣鉉投手がカージナルス移籍が決まったときに「MLB挑戦おめでとう!金廣鉉、あなたは安山の誇りです!」みたいな横断幕がたくさん飾られていました。(金廣鉉投手は出身はソウルですが、高校は安山工業高校野球部)
こういうのも公道にまで飾られていたので許可とかちゃんととってるのか?と思いましたが
「金廣鉉投手は安山の誇りだから法律的な手続きなんかすっ飛ばしてもこの際かまわない」みたいな意識が働いていたのか?と感じます。
今回のブログ記事の「金時鐘先生だから特例で」みたいなのも似たような感じかな?と。
朝鮮人は法律よりも道徳とか個人の感情、国民感情を上位において、法律と国民感情が対立したときは後者を優先する傾向が日本人よりも強いと思いました。
_ 海苔訓六 ― 2023/10/19 15:40
本当に近親相姦を頻繁にやると障害者や奇形が産まれやすいのか?よく分かりませんし、この描写が部落解放同盟から問題視・抗議されて事実上出版禁止されて2004年に復刻されるまでは発禁状態だったらしいです。
ただ、復刻作品を読んでみた自分の感想としては日本人は被差別部落民含めて、支那人や朝鮮人と比べると近親相姦とか同姓婚に対してはあまり抵抗感が無い国民性なのかもしれないということでした。
「ちびまる子ちゃん」のさくらももこ先生のエッセイでもちびまる子ちゃんに登場するおじいちゃんは実際はあんなアニメみたいな孫思いの優しいおじいさんではなくて、近親相姦好きな変態で、認知症になったふりをして孫娘の入浴を覗きに風呂場に入ってきたりする人だったので、おじいさんが亡くなった時は姉と二人で「やっと死んでくれた!」と大喜びした記述がありました。
そのさくらももこ先生も、亡くなってしまいましたね。
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今現在の韓国では韓国ドラマ「太陽の末裔」で共演した俳優のソン・ジュンギさんとソン・ヘギョさんが結婚して「ソン・ソンカップル」と呼ばれて特に問題視されなかったみたいですが、それでも眉をひそめる高齢の朝鮮人はいたみたいなので。
当時はたとえ本貫が異なって血の繋がりが無くても金姓どうしの結婚に対しては悪く言う朝鮮人もたくさんいたのではないか?と思いました。
自分の体験ですが、学生時代に仲好くなった韓国の留学生のお姉さんたちとつつじヶ丘の焼肉店でご飯食べていたら、そこの焼肉店のおばちゃんが帰化してましたけど慶尚道出身の朝鮮系日本人で、
朝鮮人の「同姓不婚」のことを話題にふったら、
「日本人って、血の繋がりが無ければ山田太郎とか山田花子どうしでも結婚するでしょう?あれが私らからするとすごく気持ち悪い。ああいうことするから日本って奇形や障害者がたくさん産まれるんじゃないですか?」と言われたのを覚えてます。
完全に偏見だと思いましたし、日本の方が韓国よりも奇形や障害者がたくさん産まれるのはそのとおりかもしれませんけど、それは単に日本の方が韓国よりも人口が二倍くらい多いから奇形や障害者が二倍くらい産まれるとか、その程度の差だと思ったのですが、
50歳代くらいの朝鮮人のおばちゃんですら同姓の結婚に対してそういう偏見持ってるのか!と驚いた思い出があります。