金正恩10・7演説「韓国を攻撃する意思はない」(1) ― 2024/10/15
金正恩が10月7日、創立60周年を迎える国防総合大学を祝うために訪問し、演説をしました。 そのなかで「韓国を攻撃する意志はない」という発言があり、翌10月8日付けの労働新聞に掲載され、「ハンギョレ新聞」等の韓国メディアが報道しました。 https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1161475.html
一体どんな演説だろうかと思い、労働新聞の当該記事を探しました。 http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?MTVAMjAyNC0xMC0wOC1OMDAyQA 長文の演説文で、その中に確かに「我々は正直言って、大韓民国を攻撃する意思が全くありません」という文言がありました。 この一文だけを見ると、まるで平和共存を言っているように思えます。
それではこれが一体どういう文脈の中で出てきたのかを見るため、翻訳してみました。 長文になり、また感情のこもった北朝鮮独特の修飾語ばかりの言葉が続きますが、その中にその文言が出てきます。 どういう考え方でこういう文言が現れるのか、実際に読んで確認する翻訳作業です。
翻訳は「韓国を攻撃しない」が出てくる部分の前後を含めて、全体の4分の1程度です。 直訳したところが多く、また北朝鮮独特の表現もありますので、意味がちょっと不明のところが出てきますが、飛ばして読んでくれてもある程度意味は分かるでしょう。
敬愛する金正恩同志におかれまして 金正恩国防総合大学を祝賀訪問なさって述べられた演説 (10月8日付け『労働新聞』)
同志たち!
国防総合大学は自尊、自立の強国を粘り強く支える革命工業の栄光の過去と今日を作り上げただけでなく、これからの永遠な勝利を建設する戦略的堡塁です。 ここは気持ちのいい校庭ではなく、尖鋭な戦場に他なりません。
同志たちが相手にしている敵は滅亡する瞬間まで反共和国敵対意識を変えない徹底した反共勢力であり、高度に発展した軍事科学技術と軍需工業、世紀を継ぐ戦争史を誇る帝国主義侵略実体です。 反共と戦争に命をかけている侵略の元凶とその家来たちは、汚らしい命が絶たれる時を感じるほどに更に発狂的に出てくるものであり、自分の最後の力がすっかり消耗する時まで突っ走ります。
去る10月1日、大韓民国の執権者たちがあの何と《国軍の日》という行事をやって、凶妄で浅薄な文をだらだらと読み、非正常的な事由を満天下に晒して見せたことを見てもそうであります。 傀儡政府は、あの《核心的国政課題》といって推進してきた《戦略司令部》が発足されたことに特別な意味を付与しながら、《ついに》自分たちを《先端在来式戦略とアメリカの拡張抑制能力が統合》されたと力説しました。
南朝鮮を「大韓民国」と正式名称と呼んだかと思うと、「傀儡」と呼んだりします。 この落差が、やはり分かりませんねえ。
ろくな戦略武器一つないことが、ご主人様の核を借りて見せかけの《戦略司令部》を作り、それを《核心部隊》《国防戦略の大幅強化》だと持ち上げて、後には40年ぶりにアメリカの最新鋭戦略核潜水艦が韓国に入り、戦略爆撃機が初めて着陸したことについてくどくどと言い訳し、ご主人様と野合して地域情勢を故意的計画的に悪化させてきた彼らの行為を自画自賛の中でそのまま自認しました。
力の劣勢に対する強迫観念と、我が国家に対する病的な被害意識から出発し、苦労して虚勢で組み立てられた《記念の辞》というものをよくよく見ると、核に基盤を置く軍事ブロックで変異した《韓米同盟》に依存して、我々との力の均衡を何が何でも維持しようという愚かな心算です。 同志たちも敵がどんな敵なのか、直ぐに知っておかねばならないだろうと私は言うのです。
韓国と米国との同盟に対する批判です。 批判するための言葉を選んで使ったみたいで、“結局、中身は一体なに?”ですね。
尹錫悦も記念の辞で、共和国政権の終末について浅薄で卑しい妄言を吐き出しましたが、ご主人様の《力》に対する盲信に完全に深く溺れています。 同志たちも新聞報道を通して見たでしょうが、これに対して私は何日か前に私の見解と立場を明らかにしたところです。
賢明な政治家であれば、国家と人民の安全を放っておいて調子に乗るのではなく、核国家とは対決や対立より、軍事的衝突が起きないように状況管理の方に力を入れるのです。 それが自国の安全のためにも絶対に正しい選択であり有益な取り扱いであるためです。 そのようにすることが正に政治家としても老練で巧みな資質と手腕です。
ところでソウルでいま湧き上がっている声はどうでしょうか? あの人間が核保有国の門前で軍事力の圧倒的対応を云々しましたが、その光景を見ながら世間が何だと言うでしょうか? 珍しく度胸一つ見せて、何だかんだとこのように褒め称えるのでしょうか? そうでなければ何か愛国名将にでもなるというのでしょうか? たとえ悠久の歴史になかった無敵の名将が出現するとしても、核と在来式戦力の格差を克服する秘訣を引き出すことができないのです。
大韓民国が安全に暮らす方法は、我々が軍事力を使用しないようにすればいいのです。 方法はこのように簡単です。 我々を常に苛立たせないように、我々を差し置いて《力自慢》をしなければいいだけですが、そんな簡単なことができる偉人はソウルにいないようです。
韓国の尹錫悦大統領は“北朝鮮を恐れない”ということで自国の軍事力を誇ったのですが、それに対する批判です。 韓国を国家と認めながら、このようなちょっと品のない表現を使うのは、やはり北朝鮮です。 (続く)