古代から続く伝統的葬法「草墳」(3)2026/02/27

本間九介『朝鮮雑記』

https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2026/02/21/9837659 の続きです。    本間九介なる日本人が明治時代中期の1890年代前半に朝鮮半島を旅行して、その旅行記を1894年に『朝鮮雑記』として出版しました。 その本の中に、朝鮮人の葬礼が報告されており、それに添付されている挿図が↑です。  なおその現代語訳が10年前の2016年に祥伝社より出ており、容易に入手できます。 その「葬礼」の部分を紹介します。

葬礼

葬礼は、すべて儒教の方式にそって行なわれるため、僧侶が厳めしく死者に引導を渡すようなこともないし、葬式に参列することもない。

棺槨(ひつぎ)の制度は、儒礼に基づいている。 親戚や知人がこれをかつぎ、棺のうしろを、麁服(質素な衣服)に身を包んだ喪主が随って、棺の前後を、三・四の灯籠で囲み、「アイゴー、アイゴー」とむせび泣く声をあげ、はかない野辺送りをする。 (以上、本間九介『朝鮮雑記―日本人が見た1894年の李氏朝鮮』祥伝社 平成28年2月 56頁)

 「はかない野辺送り」は土葬ですね。 儒教式ですから、葬式の後で出棺して埋葬地に向かいます。 韓国の葬式は、地方では近年まで基本的にこの儒教式を踏襲していました。 一方現在、ソウル等の都会では韓国ドラマに出てくるように火葬が普及して、遺骨はロッカー式の納骨堂に収められるなど、葬礼はかなり変わってきています。

 「麁服」というのは麻で作られた素朴な喪服と帽子で、薄い黄色をしています。 儒教の教えにより、息子は親の死を悲しむあまり粗末な喪服を着なければならないと言われています。 近年までの韓国の葬式でも、喪主がこの喪服を着ていたようです。 ただし最近韓国から来日した方によると、〝田舎の葬式ならあるだろうが自分は見たことがない”と言っておられました。

幼い子どもが疱瘡で死んだ場合は、その屍を埋めることもなく、俵に盛って、縄で縦横に縛り、これを野外の木の枝にかける。

そのため、三伏(盛夏)の炎天ともなれば、屍は腐乱して、その臭液が地上にしたたり、日中は烏(からす)や鵲(かささぎ)がさわぎ、夕暮れには鴟(とび)や梟(ふくろう)が叫ぶのである。 死者の霊は、寂として知るよしもないであろうが、はなはだ無情といわねばならない。

私はかつて、慶尚道の密陽の市外の栗林で、三個の屍を吊るしてあるのを見たことがある。  (『朝鮮雑記』 57頁)

 遺体を蓆や俵に入れて吊るすという、今ではちょっと信じられないような葬法です。 ↑の図では上段に、カラスがたかっているところまで描かれています。 植民地時代の民俗研究者である村山智順はこの葬法を「風葬」としています。(後述)

 なお今の韓国の民俗学者はこのような遺体を吊るす場合を報告せず、樹木に縛り付ける場合を報告しており、これを「樹葬」と名付けて「草墳」の一種としています。 https://www.hiks.or.kr/HonamHeritage/8/read/1778 

黄海・平安の両道では、屍をすぐに埋葬するという。 しかし、三南(忠清道、全羅道、慶尚道)や京畿道においては、屍を山麓や野外に担いでいき、あえてすぐに埋葬せず、丸木で造った十字架を二・三個並べ、その上に棺を横たえる。 そして藁でこれを覆い、周囲を葦で包み、雨露にさらし、その肉が腐食し、白骨となるのを待ってから、方位を選んで改葬するのである。

そういえば、内地(朝鮮半島内陸部)の村はずれ、山麓や野外で、数個の屍が並んで雨露にさらされているのを見なかったことはなかった。 これこそ、奇俗というものだろう。 (『朝鮮雑記』 57頁)

 「あえてすぐに埋葬せず、丸木で造った十字架を二・三個並べ、その上に棺を横たえる。 そして藁でこれを覆い、周囲を葦で包み」とは、上述の韓国の民俗学論文の中では「木乗葬」「平台葬」と名付けているもので、草墳の一種としています。 『朝鮮雑記』では、藁や葦は腐敗・消滅して、中の遺体が露出していたようです。

 なおこの本では、↑図の下段にあるような小屋掛けの草墳を図示していますが、本文では記していませんね。 上述の韓国の民俗学論文では「築台葬」「樹附葬」としています。 植民地時代の民俗学者村山智順は「トク葬」として報告しています(後述)。  この「築台葬」「樹附葬」が前回紹介した青山島の草墳ですね。       (続く)

古代から続く伝統的葬法「草墳」(1) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2026/02/15/9836684

古代から続く伝統的葬法「草墳」(2) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2026/02/21/9837659

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