北朝鮮の「갓끈 전술(帽子の紐 戦術)」2019/01/08

 韓国の有力紙『朝鮮日報』の1月6日付のインターネット版で、北朝鮮の「갓끈 전술(帽子の紐 戦術)」路線についての記事があり、そう言えば昔、北朝鮮はそんなことを言っていたなあと、かすかな記憶を思い出させてくれました。 http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2019/01/04/2019010401742.html

 抜粋して翻訳してみます。 なお「갓」というのは、李朝時代に成人男性が被る帽子のことで、二本の紐を顎で結んで留めるものです。 韓国ドラマの時代劇によく出てきますね。

北朝鮮の「帽子の紐 戦術」と破綻直前の韓日関係

「人の頭に被る帽子の紐のうち、一つだけを切っても風に吹かれて飛んでいく。」 金日成が1972年に金日成政治大学の卒業式の演説で強調した、いわゆる「帽子の紐 戦術」だ。 金日成は「南朝鮮政権は、アメリカと日本という二つの紐によって維持されている。」 「南朝鮮政権はアメリカという紐と日本という紐のうち、どちらか一つだけ切ってしまえば崩壊してしまう」と強調した。

韓国に亡命した、北朝鮮の主体思想の創始者である黄長燁 前労働党秘書も「北朝鮮政権は金日成の帽子の紐戦術によって、韓米同盟と韓日友好関係を弱体化させるという統一戦線戦術を駆使している」と指摘していた。

北朝鮮政権は、その間韓国で反日感情を煽り、日本との関係強化を強調する韓国の人士たちを親日派と責め立てるなど、宣伝・扇動工作を繰り広げてきた。 実際に北朝鮮の機関紙である労働新聞を始めとして、北朝鮮の官営言論機関は機会ある度に日本の過去の植民地支配を批判するなど、徹底して反日路線を主張してきた。特に北朝鮮の官営言論機関は軍事・外交の分野で、韓日関係の強化に対して辛辣に批判してきた。 ‥‥

北朝鮮政権は歴史を捏造してまで反日路線を推進してきたのは、金日成が掲げる、いわゆる「帽子の紐 戦術」のためである。 北朝鮮政権の一貫した目標は、韓米日の三角同盟を阻止することである。 特に北朝鮮政権は韓米同盟が堅固なだけに、韓日関係を裂くことがはるかに効果的だと見ている。 植民地時代に朝鮮半島全体が苦痛を受けてきただけに、北朝鮮政権はこれに絡めて「わが民族同士」を掲げながら、韓国での反日情緒を煽っていると見ることができる。

 なるほど、갓(帽子)の紐の一本を切れば、もう一本は繋がっていても役に立たずに帽子は飛んでいってしまいます。 これを日米韓の関係に比喩するとは、表現が上手いですね。 

 北朝鮮は日韓の離間を狙って韓国に反日を煽っています。 もし日韓関係が崩れれば米韓関係も崩れ、結局は韓国の存在自体も吹っ飛ぶのです。 ですから韓国における反日運動の背景には、赤化統一を目指す北朝鮮があると見た方がいいでしょう。

 そしてその北朝鮮が日本に対して狙っているのは、日本国内で韓国との関係断絶の声を上げさせることでしょう。 今インターネットのコメントなどで、何かにつけて韓国との「国交断絶」を執拗に書き込む人がいます。 こういった人は単に嫌韓感情からかも知れませんが、実際には北朝鮮の手先の役割を果たしています。

 北朝鮮は日韓関係にくさびを打ち込もうとして今に至っているのです。 韓国との「国交断絶」を主張する人は「右翼」「ネットウヨ」と呼ばれているようですが、おそらくは知らず知らずのうちに北朝鮮の意向に沿った活動家となっているのが実情でしょう。 そういう疑いの目で見なければならないということですね。

 北朝鮮は韓国と日本のナショナリズムを煽り立てて両国の対立・離間を図っているのですから、「国交断絶」主張は北朝鮮の思う壺です。 北朝鮮にとっては「갓끈 전술(帽子の紐 戦術)」が今、目の前で成功・成就しつつあるという評価になるでしょう。

 私には、「国交断絶」を言い立てる右翼やネットウヨの諸君が北朝鮮の手のひらの上で踊っている、というイメージですね。

【拙稿参照】

自主的、民主的、平和的統一       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/04/22/6421457

南朝鮮解放路線はまだ第一段階      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/03/30/6762019

北朝鮮を甘く見るな!(1)        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/07/23/7395972

北朝鮮を甘く見るな!(2)        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/07/28/7400055

北朝鮮を甘く見るな!(3)        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/08/02/7404064

北朝鮮を後押しする中国          http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/02/08/8011036

「朝鮮半島の非核化」は「北朝鮮の非核化」とは違うのでは? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/08/8799658

金正恩の発言は既定の北朝鮮の路線  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/12/8801876

北朝鮮の内部情報は?       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/04/28/8834853

韓国女性の美容整形と化粧2019/01/03

 エジプト出身のタレントであるフィフィが、韓国に行ったら「あなたの顔は整形した方がいいよってアドバイスされた」と言われて、「韓国は悲しい、乏しい社会だ」と綴ったことが話題になっているようです。

タレントのフィフィが、韓国で顔の美容整形を勧められたことを明かし、「悲しい」と思いをつづった。    フィフィは1日、ツイッターを更新。「韓国の人は皆んなではないだろうけど」と前置きした上で、「哀れむぐらい顔面コンプレックスや人種コンプレックスがすごいと思う」と私見を述べた。    「私も韓国であなたの顔は整形した方がいいよってアドバイスされたし、この国は容姿が全てだからと説明された」と自身の経験をつづり、「悲しい、乏しい社会だ」と悲嘆。「少なくとも日本はそんなこと人に言う国ではなくて良かった」とつづった。

http://news.livedoor.com/article/detail/15818349/

 彼女は幼児の時に来日し、そのまま日本で育っていますから、日本的な感性を有しているようです。 だから他人から美容整形を勧められるとビックリしたものと思われます。しかし韓国では他人に(特に女性に)美容整形を勧めるのはごく自然なことです。 女性の容姿端麗を至上価値とする韓国では、美容整形は当たり前のようにされているのです。

 日本には韓国から韓国語講師がたくさんやってきて、なかには何年も滞在する人も多く、そうした人たちの授業で韓国の美容整形の話を聞いたことがあります。

 娘が高校を卒業するころに、親が美容整形を「プレゼント」するのは普通だそうで、そうしたら母娘の顔付きが違ってしまい親子でなくなるみたいだからと母娘のダブルで美容整形した人もいるという話もありました。

 次の実話には驚きました。 結婚するにはやはり本国の人とせねばならないと、ようやく婚約まで漕ぎつけた韓国人男性の母親に挨拶に行った時のこと。 母親は嫁になる自分に部厚い封筒を渡そうとします。 「お母さん、そんな気を使わなくていいです。 私たちの収入で十分にやっていけますから」と断ると、母親は「いや、今度嫁になる女だと親戚や近所に挨拶しに行かねばならない。 そんな顔では挨拶する時に恥ずかしいから、整形に行って来い、その金だ」と言ったそうです。 ビックリして、結局はこんな親とはやっていけないからと破談にしたということでした。 彼女は日本に何年か住んでいるうちに、日本人の感性を身につけてしまったということでしょうか。

 儒教の教えに「身体髪膚これを父母に受く、あえて毀傷せざるは孝の始めなり」というのがあります。 美容整形はこの儒教の教えに反するのではないですか、韓国は儒教の国でしょう、なんて質問すると、論語に出てくる「女子と小人は養い難し」という孔子様の教えで反論されました。 だったら男性の美容整形は儒教に反すると思うのですが、そこまでは口にしませんでした。 なお韓国では男性の美容整形も結構あるようです。 盧武鉉大統領でしたか、在任中に美容整形で二重瞼にして、話題になりましたねえ。

 化粧でも日本と韓国では感性が違うようです。 韓国の特に若い女性は真っ赤の口紅を塗る人が多いです。 日本の観光地で真っ赤の口紅の女性を見かけると、大抵が韓国語を喋っていました。 また日本に留学してきた韓国人女学生は当初は真っ赤な口紅をしていても、一ヶ月もすると化粧が薄くなり、口紅も落ち着いた色になりますね。

 韓国旅行すると時々高校生の遠足か修学旅行に出会うことがあります。 全てではありませんが女子高生の多くが真っ赤な口紅をしているのを見かけます。 日本では高校生の化粧は禁止されているところがほとんどですが、韓国ではそうではないようです。 制服を来た女子高生が真っ赤な口紅をして歩き回っているのを見ると、やはり韓国だなあと、その違いに感心します。

 美容整形とお化粧、どちらが良い悪いというのではなく、お国柄の違いとして認め合うしかないところです。 フィフィのように「哀れむぐらい顔面コンプレックスや人種コンプレックスがすごい」とまで言うことはないと思うのですがねえ。

「개백정」とは何か?2018/12/29

 韓国の有力紙『朝鮮日報』12月20日付を読んでいたら、犬の屠蓄業の廃業に関するニュースがありました。 インターネット版には出ておらず、紙面だけの記事のようです。 抜粋して翻訳してみます。

結局、商売を畳むモラン市場の最後の犬屠蓄業者   「城南市・動物愛護団体の圧力にこれ以上耐えることが出来なかった」

ソウル畜産のシン・スンチョル(53)代表は、京畿道城南市のモラン市場の最後に残った食用犬屠蓄業者だった。 ‥‥ 首都圏最大の犬の流通団地であるモラン市場をねらった動物保護団体の要求が続いた。

週末になると、動物保護団体が私の店の前に集まって来て「息子は国際弁護士だが、その父親は『개백정』だ」と叫ぶ。

 この「개백정」という言葉、前後からすると罵倒語であることはすぐに分かりますが、これまで聞いたことがありませんでした。 何だろうと思って調べてみました。

 「개백정」は辞書では「犬白丁 ①犬を殺して売ることを業とする人。②<罵って>不作法な人」と説明されていました。 「白丁」は日本では「穢多」に当たる言葉ですから、訳すと「犬殺しのエタ野郎」という意味なんですねえ。 凄まじい差別語・罵倒語です。

 この差別語が、動物保護団体の口から出てくることに驚いた次第です。 

【拙稿参照】

「白丁」について       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/05/03/8841899

韓国ドラマに出てくる「白丁」 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2008/05/31/3552264

韓国映画に出てくる「白丁」  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/13/8070271

韓国の有力紙に出てくる「白丁」 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/06/30/8121172

「韓国は差別がゆるい」?   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/04/28/344906

水平社と衡平社        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/03/19/1326206

「白丁」考         http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/dainijuunanadai

 今年の日韓関係は、レーダー照射問題で悪化したまま終わろうとしています。 来年も日韓関係は悪化一路で進みそうですね。 文在寅政権はあと3年半続きますし、アメリカのトランプ政権は日韓の仲裁に入る気がないようです。 日韓関係の悪化がどこまで行くのか、なかなか読めないところです。

かつて在日の身分事項の混乱2018/12/25

 もう古い昔の話になりますが、在日韓国・朝鮮人が自分の身分証明事項に関して、彼ら自身が混乱していたことが多々ありました。 その一例が『季刊 三千里 №24』(1980年11月)の李敬子「父の在日・私の在日」に載っていましたので紹介します。

私は長い間、父をずいぶんいいかげんな頼りにならない父親だと思ってきた。なぜかといえば、まず名前である。父は私に「敬子」という名前をつけたつもりであった。確かに届出はそう記していた。ところが、もの心ついてから私はみんなに「キョウコちゃん」と呼ばれ(もちろん父からも)、自分の名前は「京子」であると信じてきた。だから小学校に入学した時、「冠村敬子」と書かれた自分の名前を見て、これは自分の名前でないと泣いて抗議した。その結果、本名李敬子こと冠村京子という、二つの名前をもった一人の人間が存在することになった。

次に生年月日である。小学校入学当時は、たしか昭和26年(1951)4月22日生まれとなっていたと記憶している。ところが中学校に進む時に、市役所の届出は5月21日になっているから、どちらからに決めて欲しいと担任の先生に言われた。考えてみれば、私の兄姉は、みな生年月日が二転三転している。四番目のあになどは月日だけでなく年の方がずれていて、入試手続の際にアワをくってほうぼう走りまわって証明書をもらい、変更したことがある。

自分の子供の名前や生年月日さえいいかげんに届け出てしまう何と無責任な父親だろうと思ってきた。おかげで外人登録の際のイヤな思い出も一つ二つではなく、どうもいまだに市役所ときくとイヤな思い出しか持ちあわせていない。 (以上 106~107頁)

 昔の在日一世の親は、こういった人が多かったものです。 母親の大抵は読み書きが出来ませんでしたので役所への出生届なんかは父親がしたものですが、届け出内容と実生活で使うものとに齟齬が生じることがしばしばでした。 だから子供の名前や生年月日に混乱が生じるという事態が発生したのです。

 もともと朝鮮人は日帝機関である総督府が作成する戸籍を信用しない傾向が強かったです。 だから子供の出生届はかなりいい加減だったようです。 特に生年月日は都合のいい日付で届け出ることが多かったのです。 当時の朝鮮人の生年月日は、戸籍よりも族譜(家系図)の方が本当であるという話はよく出てきます。 日本人は戸籍を非常に大事にしますが、かつての朝鮮人はそうではなかったのです。

 その考え方を受け継ぐ在日一世の父母は、子供の出生届がいい加減になってしまったようです。 届け出た子供の名前や生年月日を忘れてしまうなんて、そう珍しいことではなかったのです。 だから上述の李敬子さんのような例が出てくるのです。

 さらに本国では朝鮮戦争等によって戸籍そのものが焼失したりしたこともあり、韓国政府は新たに戸籍を作成するのですが、間違いが非常に多かったといいます。 在日が本国から戸籍を取り寄せたら、名前が違う、生年月日が違う、父母の名前が違う、となることがよくありました。

 このように在日は自分の身分事項が混乱した状態でしたから、パスポート(韓国)が作れない、あるいは日本に帰化しようとしても本人確認の書類が作れないので帰化できない、とかの状況が生まれました。

 在日が帰化するのが難しいという話がありますが、実はこのように混乱した身分事項が大きな一因でした。 これを解決しようと思えば本国戸籍と日本の外国人登録を整理して内容を一致させればいいのですが、これには費用と手間と時間が相当にかかります。 在日が帰化するのにかなりのお金を使い苦労したという話は、大抵はこのことです。 在日の帰化の難しさの原因はここにあったと言ってもいいぐらいです。

 以上はかなり昔の時代のことで、今は在日三・四・五世の時代です。 戸籍整理が済んでおり、日本の外国人登録と韓国の戸籍(家族関係登録簿)とが一致することがほとんどですから、パスポートの取得も容易ですし、帰化も以前ほど難しくはありません。 在日の状況は本当によくなりましたねえ。

【拙稿参照】

水野・文『在日朝鮮人』(22)―帰化 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/11/08/8244117

帰化にまつわるデマ        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/05/31/387157

在日の帰化            http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/08/18/489465

帰化と戸籍について        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/08/26/499625

風疹予防接種、かつて障害者解放運動が反対した2018/12/17

 毎日新聞に、妊婦に風疹予防接種を呼びかける記事が出ました。  https://mainichi.jp/articles/20181216/k00/00m/040/016000c

 30年以上前の障害者解放運動が盛んだったとき、彼らが風疹予防接種に反対していたことを思い出します。 このことは拙ブログでも書いたことがあります。   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2010/07/31/5260494

 これに類する主張は珍しくないようです。 2年ほど前に手話に関する講演を聞いたとき、高性能の補聴器によって聞こえるようになることに対して、手話文化が廃れるからと反対する人がいることにビックリしました。 こんな人はごく一部なのかも知れませんが、こんな主張が当事者から出てくることに驚いた次第。

 医療や科学技術の発達によって、障害を予防できたのなら、あるいは障害者の障害を取り除くことが出来たのなら、それは喜ばしいことと思うのですが、解放運動ではそれは障害者差別だとして反対してきたし、今もそれにつながる考え方があるようです。 私には理解できなかったし、今も理解できないところです。 

 ところで先程の話ですが、もし豊かな手話文化があるのなら、それは耳の聞こえない人だけの独占物にするのではなく、健常者同士のコミュニケーションにも利用を呼び掛けたらいいのに、と思います。 電車の中や図書館などでは大声で話すことは禁物ですが、ここで手話を使えば声を出さずに意思疎通ができます。 また豊かな手話文化は障害の有無を超えて楽しむことが出来るのではないか、と思うのですが。

【拙稿参照】

障害者解放運動への疑問      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2010/07/31/5260494

被差別正義               http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2010/08/06/5270853

同情は差別か              http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2010/08/13/5284066

かつて朝鮮人女性には名前がなかった2018/12/13

 李朝時代の朝鮮では女性に名前なかったことについて、現代日本人にはなかなか理解が難しいようです。 犬猫でも名前があるのに‥‥、名前なしでどうやって生活できたのか‥‥という反応になりがちです。 しかしこれまでかなりの研究者がこれについて論じてきており、拙稿でも紹介してきました。 下記【拙稿参照】

 ついでにもう一つ、資料を紹介します。 尹学準『韓国両班騒動記』(亜紀書房 2000年4月)に、朝鮮人女性の名前について著者と日本の進歩系インテリ女性との会話が報告されています。

―朝鮮の場合、女性は結婚しても苗字が変わらないそうですね。

―もちろんです。日本の場合、昨日まで田中○子だったのが、結婚したとたんに亭主の苗字になる。これはいけませんね。まさに従属そのものじゃないですか。

―そうだわよね。女性蔑視の最たるものだわ。朝鮮の女性はなんとすばらしいことでしょう。うらやましいわ。

―女権獲得のために大いにがんばることですね。

この羨望のまなざしをこめて問いかけてきたのは、日本の進歩派の女性、フェミニストのリーダーの一人であった。  かくいう小生もこういう内容のことで幾度か話しかけられたことがある。 そのとき私はどう答えたか。

―いや、実は朝鮮の女には名前さえないのですよ‥‥。などと正直なことは絶対に言わない。 ただニヤニヤしてその場をごまかし、なんとか話題を逸らしたりするのだ。(以上 141頁)

私は「朝鮮の女には名前すらない」ことに対して、わが家の女どもから糾弾されただけですんだことにつくづく安堵した。 もしこのことが日本の進歩的インテリ女性―とくにフェミニストの闘士に知られたらどうなることだろうと思うと、背筋が寒くなる。 朝鮮女性にたいして向けられた羨望のまなざしが一転して侮辱のそれに変わるであろうから。 ひたすら国家、民族を愛している国粋主義者の私にとっては、これは耐えがたいことだ。(144頁)

 ちょっと面白おかしく書かれていますが、「朝鮮女性には名前がなかった」という事実は間違いないところです。

 なお奴婢等の賤民階級の女性には名前があったことは忘れないでほしいところです。 李朝時代は最下層の賤民女性には名前があり、上・中層の女性には名前がなかったのです。

 奴婢は「一賤則賤」「従母法」という法に従って、婢女から生まれた子供は奴婢であり、全て主人の両班(貴族階級に相当)の私有財産となりました。 両班にとって婢女が子供を産むと、自分の財産が増えることになるのでした。 従って両班は奴婢が自分の私有財産であることを証明するために、母親の婢女の名前が必要だったのです。 女性に名前があるということは、李朝時代では厳しい女性差別と身分差別の産物であって、人格尊重では全くありませんでした。

 「李朝時代、女性に名前はなかった」の反論に、奴婢の女性の名前を挙げることは可能ですが、果たしていかがなものなのでしょうかねえ。 上層階級の両班が王様の逆鱗に触れて処罰されて妻女が奴婢身分に落とされた場合、その妻女には名前が付されます。

 韓流ドラマの時代劇を見るとき、女性がどのように扱われているかに注意してみると、時代考証がどれほどいい加減か、興味深いですね。

【拙稿参照】

李朝時代に女性は名前がなかったのか   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/02/29/8033782

李朝時代に女性は名前がなかったのか(2)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/03/23/8055612

李朝時代に女性は名前がなかったのか(3)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/01/8061795

李朝時代の婢には名前がある       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/03/19/8053165

許蘭雪軒・申師任堂の「本名」とは?   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/03/31/8060665

李朝時代に女性は名前がなかったのか(4)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/05/04/8083000

名前を忌避する韓国の女性        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/03/10/8043916

元徴用工判決「日本は法的な問題とみなしてはならない」2018/12/06

 韓国の元徴用工判決に対して日本側が「対抗措置」に言及したことに対して、韓国外交部が反発したそうです。 12月4日付け聯合ニュース。 https://jp.yna.co.kr/view/AJP20181204005100882?section=japan-relationship/index  一部を抜書きしますと、

外交部当局者は4日、記者団に対し「日本側が韓日関係を重視するのであれば、責任ある姿勢として歴史問題に対して誠意を持って臨むことを期待する」とし、「日本側が、今回の事案を法的な問題とみなし、過去に両国間にあったが不幸な歴史に起因する問題に対して目を閉じてはならない」と指摘した。

その上で、「特に日本側は今回の事案を過去の歴史問題から抜け出すための好機と考えてはならない」と強調した。

また「法的問題はともかく、根本的に韓日関係は法だけでは解決できない道徳的、歴史的背景があるにもかかわらず、日本側が法的に全て終わったことであり責任を負うことではないというふうに問題の根源を度外視する態度をみせるのは両国関係にとって決して望ましくない」と批判した。

 この中で、日本側が「法的な問題」として取り上げることに対し、韓国側が反発していることに注目されます。 日本では法に定まっていたら、それを最優先に尊重するという考え方が定着していますが、韓国ではそうではないということです。

 かつて李明博大統領が「日本人はすぐに法律を持ち出す」と日本に対する不満を表明したことがあります。 つまり法やルールに対する考え方が、日本人と韓国人とでは大きく違っているのです。 これについてはこれまで拙論で何度も論じてきましたので、ご参照ください。

 世界には法に対する考え方・価値観が違う国がたくさんあります。 韓国はそういう国の一つとして見なければならないということです。 

【拙稿参照】

法に対する思想が根本的に違う日本と韓国 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/09/11/6570566

法より情を優先する韓国社会       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/09/16/6575093

韓国の古代的法規範意識         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/10/27/1873691

韓国の法意識              http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/11/10/1900716

韓国の法意識(続)           http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/11/17/2393593

朴槿恵の謝罪―親の罪は子の罪か?    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/09/25/6584335

法を軽視する韓国の民族性        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/09/01/6967936

法を守るという価値観          http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/05/11/1501343

法治国家かどうか疑問の韓国       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/11/19/7496467

法治主義と儒教             http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/11/23/7500552

英雄を救うために法を変えよ―韓国    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/03/25/7597162

朴槿恵の謝罪―親の罪は子の罪か?    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/09/25/6584335

韓国の非常識判決ー対馬の盗難仏像 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/02/27/6732313

非常識がさらに非常識を呼ぶ―対馬仏像盗難事件 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/03/12/6744868

韓国の和食ブーム―もう一つの韓国の姿2018/11/30

ソウルの弘益大学前通り

 11月19日付の『朝鮮日報』に、韓国での和食ブームの記事が載っていました。 http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2018/11/19/2018111900031.html 

 ↑の写真が掲載されている(クリックすれば拡大します)のですが、そのキャプションが 「東京の街ではない。 ソウルの弘益大学前の通りでは日本語看板の飲食店が並んでいる。 小さな写真は和食専門学校で、和食飲食店の創業を夢見る30~40代の者たちが日本料理の調理法を学んでいる姿」 とあります。

 確かに日本のどこかの繁華街の写真と見間違うでしょう。 和食ブームについて聞いてはいましたが、これ程とは思いませんでした。 このところ韓国に旅行するとしても全羅北道や江原道のような地方ばかり行っていて、ソウルの様子は知らなかったです。

 日本関連の記事は日本語版に出るものなのですが、今回の記事は何故か載っていないですねえ。 日本人に読ませたくないと思ったのでしょうか。 一部を翻訳してみました。

Kポップなどの韓流コンテンツが日本を強打している間に、韓国の中の日流は全く予想しなかった場所で流れている。 主要繁華街を日本風に変えるくらいに日本食である「和食」の熱風が強く吹いている。

2006年に5272店だった「日本料理専門店」の数は、今年8月に1万7290店と三倍以上に増えた。 ソウルの弘益大学前、江南、ソウル大学前駅など若者が多く集まる街では、日本風の建物に日本語の看板を掲げた飲食店が並んでいる。 20,30代の若者や外国人観光客の間では、弘益大学前は「韓国のジャパン・タウン」として有名だ。弘益大学前の通りに日本食堂や日本デザート店がずらりと並んでいる。

旅行サイトで「弘益大学」を検索すると、「食堂従業員が日本の伝統の服を着て、日本語で挨拶する所」「日本の飲食文化を十分に楽しめる所」のように、外国人たちが残したレビューが溢れている。

和食店の創業は、このごろは30~40代の退職者が一番希望する創業アイテムだ。 15日午後に訪ねたソウル江南にある日本料理専門学校では受講生25人が日本の料理・製菓・製パンの技術を学んでいるところだった。  学校の受講生の大部分が大企業・制約会社・IT企業などの職場を辞めた人たちだ。学校理事長の中村徹さんは「受講生の70%以上が創業を準備している30~40代」と言って、「9年前に初めて学校を開校した時は韓国の日本食堂は刺身・すしの店だけだったが、今は日本の家庭料理からデザート専門店まで、多様です」と語った。

日本旅行ブームの余波も大きい。 昨年日本を訪問した韓国人観光客714万人中73.6%が、日本旅行の目的を「食事をする」を選んだ。 「ショッピング」(53.4%)や「観光地訪問」(38.2%)を上回った。 ユ・ジン日本政府韓国局課長は「過去には東京新宿でショッピングをしたり、温泉旅行などの目的であったが、今は日本のミシュラン美味しい店ツアーなど、食事を主要目的とする旅行客が大きく増えた」と語った。

 韓国では和食ブームや日本旅行熱、日本現代小説のベストセラー等々、親日的といえるほどに日本に対する関心が高まっています。 一方、慰安婦財団の解散や元徴用工判決など反日の暴走と言わざる得ない動きも活発化しています。

 このように韓国では親日と反日が共存しているのですが、これを韓国人自身がどのように分析・解説しているのか、そんな文章がなかなか見当たりませんねえ。 (シンシアリーさんや崔硯栄さんのような方がおられますが、これは日本人向けになされた日本語での発言です)

 韓国の親日的心情が反日的行動を抑えるなんてことは、期待しない方がいいでしょう。 韓国では「親日」という言葉が民族の裏切りという意味で使われていて激しい糾弾の対象となります。 日本に留学して日本人や日本文化に慣れ親しんだ韓国人が本国の反日言動にちょっと異議を唱えただけで、あいつは「親日派」だというレッテルを貼られてしまい、今度はそれを打ち消すために本人が反日言動を積極的にするようになったという実話がありました。 日韓交流は日韓友好に必ずしも繋がらないのです。

 難しいお国柄と言う外ないですね。 個人のレベルでは難しいところはお互いに口に出さないで折り合いをつけることが出来ますが、国のレベルではそういうわけにいきません。 政治面だけでなく対馬の仏像問題によって文化財の面でも、そして今度は元徴用工裁判判決によって経済面でも関係が悪化していきます。 将来の展望がなかなか見えないですねえ。 しかし、これも現実として受け入れるしかないでしょう。

【拙稿参照】

韓国の対日感情は理解が難しい http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/29/8813934

韓国人のアンビバレントな感情   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/10/01/8690297

韓国の反日感情はいつ形成された? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/10/08/8698008

世界で唯一日本を見下す韓国人   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/06/8216253

日本を見下す韓国(2)      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/12/22/8285733

韓国人の対日感情         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/01/12/8317218

日韓交流は相互理解に役立ってきたか?http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/12/13/8747383

古田博司『醜いが、目をそらすな、隣国・韓国!』(3)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/03/21/7250136

韓国の高校での頭髪規制2018/11/25

 韓国の文学賞の一つである「젊은 작가상(若い作家賞)第8回2017」の受賞作品集にあるチェ・ウニョンの「그 여름(あの夏)」を読んでいたら、主人公であるイギョンの高校時代の頭髪規制が書かれていました。

고등학교를 다니던 내내 이경은 머리를 검은색으로 염색해야 했다. 머리카락이 갈색이어서 교칙에 위반되었기 때문이다. 뿌리부터 다시 갈색 머리가 자라나면 선도부에 불려가서 훈계를 듣고 그 부분을 검게 염색해야 한다. “너 눈도 갈색이구나?” 자신을 바라보던 선도부장의 찌푸린 얼굴 앞에서 이경은 더이상 주눅들지 않았다.

 ちょっと翻訳してみますと、

高校に通っている間ずっと、イギョンは髪を黒く染めなければならなかった。 髪の毛が茶色なので、校則に違反していたためである。 根元からまた茶色の毛が生えてくると、風紀委員の先生に呼ばれて注意を受け、その部分を染めなければならないのである。 「お前は目も茶色なのか?」 自分を見る風紀委員長がしかめっ面をしても、イギョンはもう萎縮しなかった。

 これを読んで、韓国旅行すると遠足の高校生の集団を見ることがよくあるのですが、そう言えばみんな髪の毛が黒かったなあ、また茶髪は見なかったなあと思い出した次第。 作者は1984年生まれですから、2000年代初め頃の自分の体験を元にしたのだろうと思われます。

 日本では高校での頭髪規制が大きな問題になったことがありました。 校則では茶髪禁止・染色禁止となっているのに、元々茶髪の生徒が黒く染色することを強制されたというものでしたね。 韓国ではどうなんでしょうか、問題になっているのでしょうか。 この小説を読む限りは問題になっていなかったようです。 また私がこれまで読んできた韓国の新聞でも見たことがありません。 

 5年ほど前ですが、韓国からの留学生から本国での教育事情を聞いたことがあります。 参考いただければ幸い。

韓国の教育事情―留学生から聞く http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/07/18/7391623

4・3事件-南労党を隠ぺいする読売解説2018/11/19

 読売新聞2018年11月18日付けに、4・3事件犠牲者の慰霊碑が大阪に建てられたという記事が載っています。 https://www.yomiuri.co.jp/local/osaka/news/20181117-OYTNT50123.html

 この記事で私が一番大きな違和感を感じたのが、4・3事件の一方の主役であった南労党(南朝鮮労働党)が全く出て来ないことです。 事件の解説は次のようになっています。

◇四・三事件 1948年4月3日、朝鮮半島の南北分断につながる「南朝鮮」単独での総選挙に反対する島民らが警察署を襲撃。54年にかけ、軍や警察による鎮圧で、島民3万人が犠牲になったとされる。文在寅大統領は今年4月3日の追悼式典で「国家による暴力」だったとして謝罪した。

 4月3日に警察署を襲撃したのは、南労党という共産主義者組織の武装隊(遊撃隊、山部隊ともいう)だったのですが、記事ではそれを「島民らが襲撃」と記したところに大きな誤解を生むものと考えます。 更には、これは歴史の隠ぺい・ねつ造と言ってもいいのではないかとさえ思います。 なぜなら記事では、事件をまるで「軍・警察」対「島民」の対立のように描いているからで、 実際は「軍・警察」対「南労党」の対立だったのです。

 4・3事件はこの読売記事に限りませんが、警察や軍による白色テロばかりがクローズアップされて、南労党による赤色テロが全く無視されているのは、いかがなものかと思います。 「軍や警察による鎮圧」という白色テロが過酷なものだったのは間違いないですが、南労党の武装隊による赤色テロもまた過酷なものだったのです。 両方を見てこそ事件の真相が理解できるものでしょう。 

 赤色テロに関しては、下記の拙稿を参照頂ければ幸甚。

【拙稿参照】

済州島4・3事件の赤色テロ(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/06/10/8890890

済州島4・3事件の赤色テロ(2) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/06/18/8896622

済州島4・3事件の赤色テロ(3) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/06/23/8900976

済州島4・3事件の赤色テロ(4)-警官家族へのテロ http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/06/30/8906338

済州島4・3事件の赤色テロ(5)―右翼家族へのテロ http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/07/05/8909472

済州島4・3事件の赤色テロ(6)―評価は公平に http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/07/10/8912907