「歴史と国家 雑考」Q&A ― 2006/11/02
> ヨミウリウイークリー2003.4.27.に掲載されていたデータから分かることは、総人口に対する韓国・朝鮮人の割合が東京23区で最も高いと言われている荒川区の場合、区の人口に対する刑法犯(率)は23区の中で高い方から17番目である、ということです。ちなみに、千代田区が1番目です。該率の1番目は17番目の約9倍です。>
千代田区と荒川区とでは、昼間人口と夜間人口がかなり違います。人口(居住者)当たりの犯罪率を調べても意味があるのか疑問です。
>「「歴史と国家」雑考」第66題の「砧」の朝鮮語での説明ですが【また朝鮮語で洗濯は「パルレ」、砧は「タドゥミ」です。】と書かれていましたが、「小学館『朝鮮語辞典』」と記述が違っています。小生にはどちらが正しいか分かりません。該辞典中で、様子を描いた挿絵には二本の棒も描かれています。該朝鮮語辞典に書かれていたことを一部分ではありますが、更に詳しく書きます。> >タドゥミ 1 タドゥミッ カムの縮約形. 2 タドゥミジルの縮約形.> >タドゥミ ジル きぬた棒(パングマングイ)で布を打ってつやを出し、布質をやわらかくする作業.きぬた打ち.> > タドゥミ カム きぬた打ちしようとする布地.> >パングマングイ 1 砧,棒,槌,バット. 2 =コンボング(棍棒)> > パルレ パングマングイ 洗濯棒. 洗濯 パルレ 빨래>
タドゥミは砧が正解です。パンマンイは木槌の意で、砧に使うものをタドゥミパンマンイ、洗濯に使うものをパルレパンマンイと言います。砧棒というのは布を巻きつける丸い棒のことで、日本では綾巻、朝鮮ではホンドゥケといいます。
>「「歴史と国家」雑考」第51題の「帰化者への差別」で、「帰化したかどうかは二代目で分からなくなる、ということも教えてくれた」と書かれていますが、教えてくれたことに間違えが御座いませんでしょうか。>
帰化者の当初の戸籍は「帰化により本戸籍編成」となりますが、その子供の戸籍は「出生を届出、受理」から始まりますので、帰化の言葉はありません。
> 小生は誤解しているかもしれませんが、部落大衆らが鞣し皮などを生産し、済州島出身者らがそれを鞄などに加工している、と認識しています。>
これは初耳です。根拠となる資料をお教えください。
> 「「歴史と国家」雑考」第37題で「しかし地域として固まることはない」と書かれておりますが、鞄製造など仕事上の都合で故郷の出身地ごとに固まっている場合も有るのではないでしょうか。>
日本の地域(いわゆる朝鮮部落)では慶尚道、済州島、全羅道等々の出身者が入り混じっています。ただし済州島が多いというような傾向性はあるようです。
>兵役で矛盾が生じる」とのことですが、韓国の兵役法の中では、海外での永住権を持つ国民は、申請(在日では形骸化)によって、兵役を免除されることに成っていると思いますし、勿論、日本には兵役が有りません。この「矛盾」とは何のことでしょうか。>
日韓の二重国籍者の場合、韓国では兵役義務があり、同時に日本では自衛隊に入隊することが可能です。法的に衝突することになります。なお韓国の国外永住者が兵役免除されているのはその通りです。
> 韓国では国内に居住する二重国籍者にも住民登録がなされていると共に参政権等が付与されているのでしょうか。この「矛盾」とは、どのようなケースを想定なさっておられるのでしょうか。>
二重国籍者は両方の国の参政権を有します。両方の国の国会議員になることが法的には可能です。これも法的な衝突となります。
>在日コリアンが韓国に住民登録すれば、その時点でその方は在日コリアンではなくなると思うのですが。>
韓国では在外韓国人が住民登録する場合、元の居住国の永住権を放棄する必要があります。
> その際、外国人登録の国籍等の欄の記載が、主観的要素を判断するための資料とはなるでしょうが、それで在日の国籍が決定されるということは無いと思います。つまり、場合によっては北朝鮮を支持するが、何らかの理由で「韓国籍」と成っている在日にも、北朝鮮法の適用が認められる余地が残されていると言えるのではないでしょうか。>
国籍認定は、その国の主権行為です。日本政府が外国人の国籍認定を行うことはできません。外国人登録における国籍欄は、今の日本政府が入手している限りの当該国の民法から推定するもので、認定するものではありません。 北朝鮮を支持しているからといって、本国政府が自国民と認定するかどうか分かりません。
>「外国人登録済証」という言葉が書かれていましたが、小生はこの言葉を知りません。「外国人登録証」という言葉は知っていますが。因みに小生は、外国人がパスポートを得るために大使館に提出するのに「外国人登録原票記載事項証明書」を日本の役所から交付してもらう、という話を聞いたことが有ります。>
登録済証はおそらく通称でしょう。あるいは昔の書類名だったと思います。現在の正式の書類名はその通りです。
>さて、「アジメ」と「アジュミ」と「アジュモニ」の違いは?>
方言と標準語の違いです。
>帰化不許可に成らなくても帰化に至らない外国人がいるということは、申請の途中で申請を取り下げる外国人がおられる、ということではないでしょうか。在日の参政権の要求について書かれるのならば、このようなことについての考察も書かれたほうが宜しいのではないでしょうか。>
参政権要求と帰化申請の取り下げとは、関係ないと思います。
>第8題に「美術的価値のあるものは乏しく、後世に残るような文化遺産は皆無であろう。この違いが生じた理由は何か、興味深い研究テーマである。」とありますが、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国とを比較したら、どのような違いが見えるでしょうか。尚、北朝鮮の骨董品が海外に持ち出されている件はテレビで見ました。>
現在の北朝鮮における文化は、首領親子を賛美するものばかりです。絵画、音楽、建築物等々、体制が崩壊しても残すべき文化遺産は、前代から伝わったものを除くと、皆無と思います。
在日の日本志向は1970年代後半から ― 2006/11/09
>わたしは1981年に大学に入学しまして、在日韓国学生同盟というところで、 民族運動にかかわっていました。祖父は当時民団の地方本部の役員でした。 総連系のことは、あまりくわしくは知りませんが、 この当時「いずれ朝鮮に帰る」なんて言ってた人は、いないとはいいませんが、在日の一般的な意見とはとてもいえないと思いますよ。>
在日朝鮮人が祖国志向であったのは、1970年代前半までのことです。特に朝鮮総連では、我々はいずれ祖国に帰る、この日本は仮の宿であるという主張を明言していました。 この当時、もう日本に馴染んだのだから祖国に帰りたくない、祖国には関心がないと言う人は、同化だと激しく批判されたものでした。 在日の日本志向が指摘され、在日社会がそれを受け入れたのは1970年代後半以降のことです。 拙論では第17題の(追記)を参考にしてください。
>地域による温度差を示しているのかも知れません。
これは地域差ではなく時期差です。1970年代後半は在日社会が大きく変化したということです。
特別永住資格の将来 ― 2006/11/14
>在日コリアンの子孫の方々が、「特別永住資格」で持って未来永劫に日本に住み続けるのは不合理だと考えます。未来永劫に日本に住み続けたいのならば、帰化して日本国籍を取得すべきでしょう。>
「特別永住資格」は法律(平成3年5月10日付け法律第71号)で定められています。その内容は、この資格が臨時のものとはされておらず、在日の問題を法律上最終的に解決するものと位置付けられています。つまり未来永劫は極端ですが、非常に長期にわたって有効となるものです。 これを不合理と考えても、現実はそのように動きます。
在日の将来がどうなるかについては、この法律の成立に努力した坂中英徳さん(元東京入管局長)の『在日韓国・朝鮮人政策論の展開』(加除出版)という本が参考になります。彼は、在日が21世紀半ばまでには消滅するだろうという見通しを語っています。
つまり在日は帰化すべきだというようなことを言わなくても、在日の方から自然消滅していくということです。彼の見通しが正しいかどうかは、これからの推移を見守るしかありませんが、在日を担当する権力側の責任者の言ですから、その中身は重いものです。特別永住資格はこのような見通しのもとに成立したのです。
私は、在日は帰化すべきだなどと言っても仕方ないと思っています。ただ、いつのまにか消滅しているというような没主体的というか恥ずべきことにならないよう願うのみです。
属地主義 ― 2006/11/19
>ところで、在日は韓国・北朝鮮国籍即ち韓国・北朝鮮人です(2重国籍の在日の人もいますが)。ということは韓国・北朝鮮の法律に従わねばなりません。 >日本人が日本の法律に従うのと同様にです。
近代的な法律は、個人に関すること以外は属地主義です。(個人関することとは、家族や相続、国籍などです) 日本の主権領土内では特に定めがない限り、日本の法律のみが有効となります。(特にある定めというのは在日米軍の場合です。)
在日は日本に居住する以上は、日本国民が制定した法律を守る義務があります。逆に韓国・北朝鮮の法律に従う義務がありません。 たとえば北朝鮮の法律では首領様や将軍様を誹謗する者は極刑に処せられますが、日本に居住する朝鮮人は言論・思想の自由が保証されていますので、何の刑罰も受けることがありません。
在日は日本の法律・ルールを順守する限り、束縛を受けることなく権利が守られます。
「韓国」表記は本国政府が求めた ― 2006/11/25
>ところが、韓国に親近感を抱く者が運動し外国人登録上に「韓国」の表記を求めた結果、現在の2つに分れたものである。>
これは間違いです。 韓国は建国後間もない1950年1月6日に「国号および一部地方名と地図色の使用に関する件」(大韓民国国務院告示)のなかで次のように定めました。
「我が国の正式国号は“大韓民国”である。しかし。使用の便宜上“大韓”または“韓国”という略称を使用することが出来るが、北韓傀儡政権との確然たる区別をするために“朝鮮”は使用してはならない。」
これに基づき、韓国は日本に対し外国人登録上の国籍欄を「韓国」に変えるよう求めました。1965年の日韓条約で協定永住が認められましたが、韓国政府はこの欄が「韓国」である者のみに在外国民登録を許し、日本はその者のみに協定永住を認めました。 つまり、外国人登録上に「韓国」の表記を求めたのは、在日側ではなく本国政府側であったということです。国籍欄の表示が二つに分かれたのは、在日側の運動の結果ではありません。 韓国政府はこの考えを今も維持しており、外国人登録に「韓国」と表示されていなければパスポートを発行しません。