新聞記者が事件を煽る2010/06/06

 6月6日付けの毎日新聞に、三留理男さんの「目撃された戦後 第2部 60年安保を挟んで」と題する文章のなかで、次のようなくだりがあります。

>続く見せ場は翌60年の1月15、16日だ。新安保条約調印のための岸信介首相訪米を阻止しようと、約700人が羽田空港にたてこもった。直前に毎日新聞記者の吉野正弘が、全学連幹部に「岸が朝に出発する」と通報があったらしい。そこで集まれるだけの人数で駆けつけたわけだ。‥‥‥吉野は‥正義感の強い人だった。全学連への通報も、そうした良心によるものだったと思う。>

 これは、新聞記者が取材で得た情報を一方の側に通報して、事件を拡大させたということでしょう。  記者というものは、自分で得た情報は自分の媒体(この場合は新聞紙上)で明らかにすべきものです。  しかしそうではなく、一方の側に特別な計らいで事前に情報を提供しました。これによって騒ぎが大きくなりましたので、それだけ新聞紙面を埋める記事が多くなって注目されることになりますので、記者にはメリットがあったと考えられます。  このように新聞記者が事件を煽ったのですが、ジャーナリストのモラルにおいて、いかがなものかと思います。

 似たような事件で、沖縄密約の西山太吉事件があります。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%B1%B1%E4%BA%8B%E4%BB%B6  西山記者は、 情報の入手方法がどこかの外国スパイがよくやる手口なのでちょっと感心しないのですが、それはともかく、入手した沖縄密約資料を、時の野党社会党の楢崎代議士に提供し、楢崎は国会でこの資料を基に政府を追及したのです。  これも記者が、自分が得た情報を自分の新聞で発表するのではなく、一方の側に提供して、騒ぎを大きくさせたと言わざるを得ないものです。  そのために、記者はニュースソースである外務省女性事務官を守ることができなかったという、トンデモナイ事態になったのでした。    このようなジャーナリストは、モラル的に極めて疑問を感じます。