高句麗は北朝鮮でもあり中国でもある2013/06/09

 朝鮮日報が、中国で高句麗を自国の一部とすることが広がっていることについて、「歴史歪曲」だとする記事を掲載しました。

【コラム】朝鮮族までもがゆがんだ中国史に染まる日         中国の朝鮮族に、あなたはどこの国の人かと尋ねたら「中国人」だと答える。しかしどの民族かと尋ねたら「朝鮮族」と答える。425年間にわたり高句麗の首都だった吉林省集安で会ったPさんは、記者に「韓国と中国がサッカーの試合をしたら、朝鮮族はどちらを応援するか分かるか」と尋ねてきた。朝鮮族の学校で教師をしているPさんによると「朝鮮族の学校で勉強した40-50代は、当然韓国を応援する。ところが漢族の学校に通った20-30代の相当数は、中国を応援する。両親が韓国を応援したら、逆に変だと思ってしまう。両親よりも、中国化教育の影響の方が強い」という。           2008年5月、吉林省延吉で白頭山(中国名:長白山)観光のバスに乗ったことがある。たまたま、それは中国の観光客専用のバスだった。中国人ガイドは当時、白頭山の紹介よりも「長白山はもとから中国領だった。ここの朝鮮族は、生きていくため、ずっと昔に国境を越えただけ」という言葉を繰り返した。白頭山案内のポイントも、白頭山と韓国の関係を否定する部分に置いていた。休憩所で「根拠は何か」と尋ねると「政府が作っている『ガイド指針』に出ている。間違いはないだろう」と答えた。中国の学界で、「東北工程(高句麗・渤海史を中国史に組み込もうとするプロジェクト)」は02年に始まり07年に終わった。08年といえば、東北工程が学界にとどまらず民間にまで影響力を広げ始めていた時期だ。            中国は先月1日、集安に初の高句麗博物館をオープンさせた。博物館の案内文からは「高句麗は中原(中国)の地方政権」「高句麗は中原の属国」など韓国を刺激する文言をほとんど取り除いた。しかし、中国のある観光客は、6棟ある展示館を全て見て回った後「高句麗は朝鮮族の祖先の国だと思っていたが、今見てみると、中国の国だった」と語った。これが高句麗博物館の「効果」だ。博物館のガイドに「高句麗と韓半島(朝鮮半島)の関係」を尋ねると、ガイドはためらいなく「高句麗と韓半島には何の関係もない。高句麗は中原の地方政権」と答えた。外の案内文とは裏腹に、内部では高句麗を「中国の地方政権」と教え続けている証拠だった。            東北工程をめぐっては、既に歴史歪曲(わいきょく)のレベルにとどまらないという評価が多い。一般の中国人の常識を変える段階へと深く入り込んでいる。朝鮮族の教師Pさんは「今の朝鮮族は、高句麗を朝鮮(韓国)の歴史と認識している。しかしこのまま20年が過ぎたら、朝鮮族も高句麗を中国の歴史だと言うかもしれない」と語った。小雨で服が濡れるように、東北3省の中国人、朝鮮族、周辺国という順で東北工程に染まっていくというわけだ。            北京の外交関係者からは「韓半島の統一が迫ったら、中国は韓国に二つのことを要求するだろう。一つは、米軍が鴨緑江まで北上しないこと。もう一つは、統一韓国が歴史を根拠に満州地域に対する権利などを主張しないこと」という声が聞かれた。中国は、韓国の民族主義的傾向をよく理解している。特に、かつて高句麗だった地には200万人の朝鮮族がいる。韓半島統一後、高句麗の歴史・領土などをめぐる議論は単なる「歴史論争」にとどまらないという見方は、こういう流れから来ている。東北工程がさまつ事ではない理由も、ここにある。            アン・ヨンヒョン北京特派員

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/06/09/2013060900132.html

 高句麗は7世紀、1400年も前に滅んだ国ですが、この国が今になって「韓国か、中国か」で争っている姿は興味深いものです。

 こんな古い時代のことで、「歪曲」だとかいう主張がまかり通るなんてねえ。高句麗は北半分は現在の中国領、南半分は北朝鮮領です。従って高句麗の歴史資料や遺跡文化財の保存管理は、北半分は中国が責任を持ち、南半分は北朝鮮が責任を持たねばならないし、その歴史研究も双方が第一義的にせねばならないことです。

 高句麗は韓国か中国かと問われれば、現在の目から見れば「北朝鮮」でもあり「中国」でもあるが「韓国」ではないと答えるか、歴史的に見れば高句麗は「高句麗」以外の何者でもなく、「北朝鮮・韓国」でもなく「中国」でもないと答えるしかないでしょう。

 そもそも現在のナショナリズムを千数百年も前に遡らせること自体が誤りです。

(註) 韓国は建前上北朝鮮領も含めて自国の領土としています。

【拙稿参照】

高句麗は韓国か、中国か http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/09/22/1812668

高句麗―韓国か中国か http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2008/09/28/3787613