『韓国が漢字を復活できない理由』 (3)2013/09/20

朝鮮王朝には、欧米世界の知識がなかったくらいだから、訳語もあるわけがない。これら新しい概念は、すべて日本語経由で入ってきた。 科学、化学、物理、算数、代数、幾何‥‥前方後円墳などなど。いちいち挙げるのが面倒になるくらい、学術語は、和製漢語ばかりである。(181~182頁)

 欧米の多くの学術用語が和製漢語に訳され、それが朝鮮に入ったのは事実ですが、その列挙された例のなかに「前方後円墳」があって、これまたビックリ仰天。「前方後円墳」は欧米とは関係ありませんし、訳語でもありません。これは18~19世紀の江戸時代の学者、蒲生君平が編み出した古墳の形を示す言葉なのです。従って「日本語経由で入ってきた」言葉ではありません。

 前方後円墳は日本独特の古墳の形ですから、韓国ではこの言葉は日本を紹介するなかでのみ使われます。普遍的に使われる学術用語ではなく、極めてローカルな言葉ですから、韓国ではほとんど使われることはありません。豊田さんは古代史にも詳しいはずですが、こんなことではねえ。ひょっとしたら勘違いではなく、本当に欧米から来た言葉と思っているのかも知れません。

韓国では、硫酸は〈ファングサン〉という。このパソコンでは変換しなかったが、酸の前にある字は、石偏に黄と書く。硫黄の意味だという。日本式の硫酸という言葉を使いたくないために、こんな難しい漢字を探し出してくるところが、さすが元漢字国である。(182頁)

 硫酸は今の韓国では「황산(黄酸)」です。かつては「磺酸」とも書いたようですが、「黄」も「磺」も同じ読み(황)であり、且つそれ自体に「硫黄」の意味があります。硫酸の製造原料が二酸化硫黄ですから「黄酸」と表しても意味は変わりません。      ところで「硫酸」はハングル読みすると「乳酸」と同じ(유산)になります。どちらも理科の実験や工場などで使いますから、「유산」というラベルの貼った薬品瓶が「乳酸」なのか「硫酸」なのか分からなければ大変なことになります。これを区別するために一方を「황산(黄酸)」と言い換えただけでしょう。少なくとも「日本式の硫酸という言葉を使いたくないため」という理由はあり得ません。 

 ところで日本では「磺」は「礦」の異体字で、訓読みが「あらがね」です。これがパソコンで出てこないとは、かなり旧式のパソコンを使っておられるようです。文筆を業とする方がこれではねえ。

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