平凡社『新版 韓国・朝鮮を知る事典』―ハングル読みか日本語読みか2014/07/10

 最近新しく出た平凡社『新版 韓国・朝鮮を知る事典』(2014年3月)を購入。 初版は『朝鮮を知る事典』という題名で1986年3月30日第1刷となっていますから、もう30年も前です。 これをずうっと重宝していたので、今回新版も購入した次第。 旧版に比べて内容も量もかなり増えています。 値段も3600円から7000円とかなり高くなっていますが、これは致し方ないところです。

 旧版と新版の大きな違いは、旧版では漢字を使う項目はほとんどが日本語読みとなっているのに対し、新版では漢字のある地名や人名等の項目をハングル読みのカタカナ書きにしていることです。

 ところがよくよく見てみると、ある時はハングル読み、ある時は日本語読みと一貫していないのを発見しました。

 例えば朝鮮人の人名の漢字は歴史上の人物でもハングル読みとする原則があるようですが、百済の武将「鬼室福信(きしつふくしん)」は日本語読みで、彼と一緒に百済復興運動をした王子の「豊章(プンジャン)」はハングル読みとなっています。 また「王仁(わに)」、「禹長春(う・ながはる)」は日本語読みです。 このように朝鮮人の人名はハングル読みするという原則から外れるものが見当たります。

 また古典小説では「春香伝(しゅんこうでん)」は日本語読みでありながら、「九雲夢(クウンモン)」はハングル読みをしています。

 歴史上の国名では、古代に朝鮮半島南部にあった「辰韓(しんかん)」「弁韓(べんかん)」は日本語読みで、「馬韓(マハン)」「辰国(チングク)」はハングル読みです。 そして辰韓、弁韓、馬韓を合わせた「三韓(さんかん)」は日本語読みです。

 現在の大学名では「高麗大学校(こうらいだいがっこう)」「成均館大学校(せいきんかんだいがっこう)」は日本語読みですが、「延世大学校(ヨンセだいがっこう)」「西江大学校(ソガンだいがっこう)」はハングル読みです。

 宗教では「曹渓宗(そうけいしゅう)」は日本語読みですが、この宗派の総本山は「曹渓寺(チョゲじ)」とハングル読みです。

 慶州にある古墳名では、「金冠塚(きんかんづか)」は日本語読みをしながら、「天馬塚(チョンマづか)」はハングル読みです。

 以上のように、漢字の読み方を日本語読みするのかハングル読みするのかが一貫していないところが気になるところでした。 ついでに豆満江の項では「トゥマンこう」とハングル読みをしているのですが、そのハングルを「두안강」と間違って表記しています。 正しくは「두만강」です。