北朝鮮を甘く見るな!(1)2014/07/23

 以前から感じていていたことですが、北朝鮮を甘く考えている人が多いようです。 というよりほとんどの人が甘く考えています。 例えば朝鮮半島の統一問題について、韓国による統一しか考えていない人ばかりです。 北による統一(南朝鮮解放路線とか赤化統一とも言います)について言及すると、まさか!あり得ない!という反応です。

 北朝鮮の人口は韓国の5割で、GNPは韓国の39分の1(韓国銀行の2010年推計値 以下同じ)、一人当たりGNPは約1000ドルで世界ランキング144位(コートジボアールやラオスより上だが、カメルーンより下)の最貧国、‥‥。 これでは韓国を圧して朝鮮半島を統一するなんて、ちょっと考えられないかも知れません。

 しかし冷静に考えて見て下さい。 北朝鮮は普通の国ではなく、オカルト=狂信国家なのです。 祖国の統一という理想を実現するためには、どんなに貧しく飢えようとも耐え抜き、理想実現のためには何をすればいいのかを毎日四六時中考えているのです。 そしてまた120万人の人民軍は、来るべき統一事業のために日夜厳しい訓練に励んでいます。 今統一が実現できなくても、子や孫へと代を継いでいつかは実現しようと日夜奮闘努力しているのです。

 このような北朝鮮の立場から今の朝鮮半島事情を見るとどうなるでしょうか。

* 統一に最も障害となるのがアメリカです。 だから北朝鮮は「自主的」というスローガンを掲げて、民族の問題は「民族同士」で解決するべきものだから外勢(アメリカのこと)を排しようと韓国に呼びかけています。 韓国内にはこれに呼応するナショナリズム的感情が徐々に広がって来ました。 韓国人には北の「民族同士」という囁きには気が引かれるようです。 反米感情は駐韓米軍装甲車女子中生轢死事件や狂牛病騒動などに見られるように、韓国民に広がっています。 北にとっては、統一に向けて望ましい情況に近づいたと言えます。

* 北は核兵器を開発し、既に数基は所有しているものと思われます。 そして北は核問題でアメリカと直接話し合うことを主張しています。 これは自分たちが核兵器廃棄を受け入れる代わりにアメリカは韓国から撤退しろという交渉です。 そして中国がこの北の主張を後押ししていることに注意せねばなりません。

 中国は「朝鮮半島の非核化」を唱えているのであって、北朝鮮を名指しで「非核化」を唱えていません。 中国の言う「朝鮮半島の非核化」は北朝鮮の核を無くすことに止まらず、韓国が米国の核の傘から抜け出ることをも意味します。 中国は北の核問題を利用して、韓米軍事同盟を解消させようとする意図があるからです。 だから中国は北朝鮮の核開発には口頭の抗議だけにして、実際には何の圧力もかけません。 北朝鮮経済は相当部分を中国に依存しているのですから、中国は北に圧力をかけるのは簡単なことなのですが、それを敢えてしないことに中国の本音が見えます。

 韓国は「北の核兵器反対」で中国と意見が一致したと言っていますが、中国は韓国の核問題(核の傘の下にあること、すなわち韓米同盟)をも視野に入れて「朝鮮半島の非核化」を唱えていることに注意する必要があります。 中国が北の核に反対しているのは、南の核(の傘)とセットで考えているのですから、韓国と中国が「北の核反対で一致した」といっても、中身は違うものです。 中国は北の核を利用して東アジアからの米軍撤退を目論んでいるのです。 北朝鮮には中国の主張する「朝鮮半島の非核化」が心強いものとなっていることでしょう。

* 米軍は長年にわたる中東方面の軍事作戦に疲れを見せ始めており、果たして朝鮮半島有事の際に動けるのかという疑問が提起されています。 すなわち半島では世界の警察官としての役割を放棄するのではないかという疑問です。 北朝鮮にとっては、統一の妨害者である米軍が動けないのですから大きなチャンスとなります。