韓国の諺の誤解―毎日新聞2014/08/14

 毎日新聞の「憂楽帖」というコラムで、次のような記事が載っています。 誤解のないように全文を引用します。

一衣帯水の関係も今は昔か。一向に好転の兆しが見えない日韓関係の現状にはもどかしさばかりが募る。サッカーのワールドカップ共同開催や、映画・ドラマや音楽の韓流ブームに象徴される蜜月時代の記憶が新しいだけになおさらだ。

「行く言葉が美しくてこそ 来る言葉が美しい」は韓国のことわざだ。金容権「韓国朝鮮ことわざ辞典」(徳間書店)に、他人に良くしてもらおうと思えば、自分から他人に良くしなければならない、「魚心あれば水心」の同意とある。

 相手を説き伏せるため、時には威圧的に出る韓国人の交渉術も指すようだ。確かに、ソウルの街角で口角泡飛ばし、怒鳴り合う光景を何度か目にしたことがある。片や、理詰めで向き合おうとする傾向が強い日本人。議論がかみ合わない背景には、コミュニケーションの作法の違いがある、と思えてならない。

 隣国であるが故に互いのことが一層見えにくくなる側面もある。違いを認め、無理に「近くて近い国」を目指さなくていい−−強風にも動じない盤石な関係を築くには、そんな覚悟と開き直りがあってもよいと思うのだが。【仁瓶和弥】

 ここで挙げられている韓国の諺、「行く言葉が美しくてこそ 来る言葉が美しい」について、金容権の辞典から解説していますが、これは誤解です。 この辞典が手元にないので本当にそんな説明をしているのか確認できませんが、こんな間違いを解説するとはビックリです。

 この諺は ‘こちらから投げかける言葉が美しければ、相手から返ってくる言葉も美しい’となるので、いい諺だと誤解されやすいものです。 しかし実は ‘相手に暴言を吐けば、同じ調子で言葉が返ってくる’ という意味で、日本では「売り言葉に買い言葉」に相当する諺です。 「魚心あれば水心」ではありません。

 1年ほど前に自民党の鴻池議員が韓国を訪問した際、日韓の友好のためにと思って韓国のこの諺を持ち出したところ、かえって物議を醸した事件がありました。 韓国でこの諺を使うということは、「お前らが滅茶を言うからこちらも言い返しているんだ」という意味になるからです。 議員は善意で良かれと思って発言したのでしょうが、韓国では挑発してきたと逆に受け取られた訳です。

 新聞記者が1年前のこの事件を知らずにコラムを書き、またこのコラムを新聞に載せることを決めた編集長らも知らなかったということでしょう。 かなり有名な事件だったのですがねえ。 この新聞社のレベルに疑問を抱いた次第です。