北の核ー歴代韓国大統領の発言2017/09/12

 韓国の新聞『朝鮮日報』9月7日付けに、楊相勲主筆の「本当の国ではない」と題するコラムがあります。 このなかで北朝鮮の核開発について、歴代の韓国大統領がどのように発言したか、ちょっと簡潔に書かれていました。 日本語版には出てきませんので、その部分をここに訳してみました。   http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2017/09/06/2017090603596.html

1991年以前は韓国に核(米軍の戦術核)が存在し、北には核が存在しなかった。 それが今、韓国に核が存在しなくて北には存在しているとなって逆転した。 国際政治の歴史にはこのような逆転劇はない。 一体全体どうしてこんなことが起こり得たのかが気になって、1991年の朝鮮日報を探して読んでみた。 11月9日付けである。 1面トップは「駐韓米軍、核を年内に撤収」だ。 その横には更に大きく「慮泰愚大統領、朝鮮半島の非核化宣言」という記事が出ている。国内の核兵器を全面的に撤去し、これから核を保有・製造・使用をしないという宣言である。 「非核の門はまず南が開き、北朝鮮の核放棄を強く迫る」というものであった。

続いて12月19日付けの1面トップは慮大統領の「南韓(南朝鮮)の核不存在」宣言である。 米軍の戦術核が全て撤収されたという意味である。 1992年1月1日付け新聞のトップ記事は「南北 非核宣言 完全妥結」である。 南北ともに核兵器の試験、生産、受け取り、保有、貯蔵、配備、使用を禁止するというものである。 北は国際原子力機構の核査察を受けると約束した。 その日、慮大統領は新年の辞で「我々の自主的努力で、核の恐怖のない朝鮮半島を実現するという夢に向かって大きく前進した」と言った。 「北が核兵器の製造施設を持たないと明らかにしたことは、間違いなく喜ばしいことである」とも語った。

全てのことが北の完全な欺瞞、詐欺劇であった。南北非核化宣言に合意したその日も、北は寧辺でプルトニウムを抽出していた。 金日成は米軍の戦術核が撤収したことを確認した後、韓国の鄭元植首相と会見した席で「我々には核がない。駐韓米軍を撤収せよ」と迫った。 しかしこちらからの「核査察の約束を守れ」という要求には答えなかった。 韓国の阿呆ドラマと北の核兵器という悪夢の同時開幕であった。

北の核開発の過程は、歴代韓国大統領たちの北に対する無知と幻想が国家の安全保障を崩壊に導いたという失敗の歴史でもある。 慮泰愚の次の金泳三大統領は、北が核兵器を作っていても就任の辞で「どの同盟国も、民族よりもっと良いというものはない(民族が米国などの同盟国よりも大切だ)」と語った。 金大中大統領は北の金正日と首脳会談を終えて、「我々にも明るい未来が見えてきた。分断と敵対に終止符を打ち、新しい転機を開く時が来た」と語った。 「北は核を開発したこともなく、その能力もない。私が責任を取る」という彼の言葉が報道されている。 そして慮武鉉大統領は「北朝鮮の核には一理がある」と語った。

彼は2006年に「北に多くの譲歩をする」「北の核問題については解決に乗り出すことが出来る」「北朝鮮に核実験の兆候は全くない」と語った。 しかし、北朝鮮はその直後に最初の核実験を行なった。 そうすると慮大統領は「北に核兵器があっても、韓国が優越的な軍事均衡を保っている」という四次元的(時間を超越したような)主張をした。 その当時の外務長官は、北がミサイル試験用に打った長距離ロケットを「人工衛星用」だと言った。

 これを読んで、ああそうだった、昔韓国の大統領はこういうことを言っていたなあと思い出させてくれました。 こういう風に整理してくれると、理解しやすいものです。

 要するに歴代韓国大統領は、自分がまず譲歩すればその誠意が北に通じると勝手に思い込んできた、北はそれを利用して詐欺劇を演じて核開発を進めてきた、ということです。

 今の文在寅大統領は、北の核に対して一応は厳しい対応を見せていますが、これからどうなることやら分かりません。 何しろ文大統領は、「北の核には一理がある」と言い放った慮武鉉前大統領の側近だった人ですから。

コメント

_ neran ― 2017/09/13 13:05

朝鮮日報のじりじりした焦りが滲み出てますね。文大統領は、強硬な左派から批判される程度には現実路線見せてますが、仰るように盧武鉉から続く想いは、やはり恐ろしい。

> 要するに歴代韓国大統領は、自分がまず譲歩すればその誠意が北に通じると勝手に思い込んできた、
> 北はそれを利用して詐欺劇を演じて核開発を進めてきた、ということです。

これ、日韓関係にある程度似て見えて面白いですね。韓国の場合、戦略的に騙すというのとはまた違いますが。

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