「島国夷」とは?2017/09/16

 日経新聞、鈴置高史さん『早読み 深読み 朝鮮半島』の9月15日付け「ミサイル乱射の中、「親北」に突き進む韓国」のなかに、北朝鮮のアジア太平洋平和委員会が出した声明の中に日本に関して次のように述べたという記事がありました。          http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/091500125/

•米国の制裁策動に便乗して軽率に振舞った日本の島国夷に対する指弾の声も激しく出ている。

•千年来の敵であるウェノムのざまを見るほど目に火がつくようだ、わが人民に千秋にすすげない罪を犯しておきながらも謝罪をまともにせず、米国の「制裁」の笛に踊りながら憎らしく振る舞う奸悪なチョッパリらをそのまま放っておけない、日本列島の上空を飛び越えるわれわれの大陸間弾道ロケットを見ながらもいまだ気を確かに持てず、意地悪く振る舞う日本のやつらにはっきり気概を示すべきだ、取るに足りない日本列島の4島をチュチェの核爆弾で海の中に押し込むべきだ、日本はこれ以上われわれの近くに置く存在ではない、これがわが軍隊と人民の激昂した声である。

 この中の「島国夷」という聞き慣れない言葉に、本当かなと思って朝鮮中央通信の該当部分を探しました。 それは次の通りです。

미국의 제재소동에 편승하여 새망을 떤 일본의 섬나라족속들에 대한 지탄의 목소리 또한 거세게 터져나오고있다.

천년숙적 왜놈들의 꼴을 볼수록 눈에 불이 인다, 우리 인민에게 천추에 씻지 못할 죄를 짓고도 사죄 한번 제대로 하지 않고 미국의 《제재》장단에 춤추며 가증스럽게 놀아대는 간악한 쪽발이들을 가만두어서는 안된다, 일본렬도상공을 날아넘는 우리의 대륙간탄도로케트를 보고도 아직 정신을 덜 차리고 못되게 나오는 일본놈들에게 단단히 본때를 보여주어야 한다, 보잘것없는 일본렬도의 4개 섬을 주체의 핵탄으로 바다속에 처넣어야 한다, 일본은 더이상 우리 가까이 둘 존재가 아니다, 이것이 우리 군대와 인민의 격앙된 목소리이다.

 「島国夷」は「섬나라족속들」なんですねえ。 直訳すれば「島の国の族属たち」です。 「族属」というのは普通は「一門」とか「宗族」とかの意味ですが、軽蔑的に「輩(やから)」「一味」の意味もあります。 今回は後者の意味です。

 これは朝鮮中央通信の日本語版にあるものですから、北朝鮮自身の訳です。 悪口・罵倒の言葉を日々練磨している北朝鮮です。 「夷」と訳すとは、さすがですねえ。 しかし「島国夷」は日本語としてはこなれておらず、違和感があります。

 なおこの文中に「새망」があります。 手元の辞書にない言葉で何だろうと調べてみたら、北朝鮮の言葉なんですねえ。 意味は「軽率」「軽はずみ」ですから、そのまま訳されています。

 日経の鈴置さんの記事をきっかけに、久しぶりに北朝鮮のニュースを読んだ次第。 たまには読まなくてはいけませんねえ。

コメント

_ neran ― 2017/09/19 11:14

文革時代の中国もそうですが、プロパガンダとはまさに練磨の賜物ですなあ。声明を集めたくなる個性の強さです。

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辻本さんのブログなのに、コメント数の上限に達する応酬、すみません。

許されるなら、ひとつだけ河太郎さんへお返事を。

無辜の人間が多数殺害された事件を、加害者側が身体生命の危険を"感じて"いたことを理由に、虐殺と呼ぶべきではない、という主張は、流石に無茶苦茶です。

あなた自身が書いているように、被害者は無辜の者です。彼ら自身がテロをしたわけでもなければ、井戸に毒を入れたのでもない。被害者の属性を以て、身勝手に、起きるかも知れない危険を想像し、多数殺害する。これを虐殺と呼ぶべきでないなら、何を虐殺と呼ぶのですか?

独善的に危険だと見ることそのものも問題ですが、危険の排除なら、拘束なり他に手段もあるでしょう。無辜の人間が、殺害せねば防げぬ危険を発生させる訳がない。しかし資料を見ても、加害者たちは殺害を選んでいます。それを虐殺と呼ぶべきでないとは、理解できません。デマと煽動に乗っかり「こいつらはテロを起こす朝鮮人だ、ぶっ殺しちまえ!」というのが、どれだけ悍ましいことか。

統計や経験を元に、黒人だという理由で、警官が何の罪を犯してもいない現場にいただけの無防備な人物を射殺しても、情状酌量すべきだと思いますか? イスラム過激派は世界中でテロを起こしている。それがイスラム教徒全体への危険視に大きく影響している。だから大災害時に、無辜のイスラム教徒が多数殺害されても、そこにはイスラム教徒の落ち度があるので、それを虐殺と呼ぶべきではない、と考えますか? だとすれば、或いはだとしなくとも、あなたは一体何を虐殺と呼ぶべきだと考えているのですか?

_ (未記入) ― 2017/09/20 00:44

私に質問が投げかけられていますので、恐縮ですが、neranさんへの返事を許して頂けたら幸いです。

>無辜の人間が多数殺害された事件を、加害者側が身体生命の危険を"感じて"いたことを理由に、虐殺と呼ぶべきではない、という主張は、流石に無茶苦茶です。

結局、私とneranさんの意見が分かれるのは、加害者の事情、被害者の事情をどう考慮するかの違いですね。

>何を虐殺と呼ぶのですか?

ヒトラーユダヤ人大虐殺、カンボジア虐殺事件、通州事件、韓国軍ベトナム民衆虐殺事件、永田洋子連合赤軍リンチ殺人事件などがすぐに思い出されます。

アフガニスタンやシリアでアメリカ軍の空爆で一般人の男女、子供、老人も死んだ時、「虐殺だ」と非難の声があがりますが、誤爆や巻き添え死もあり、この場合は簡単ではないと思います。

>独善的に危険だと見ることそのものも問題ですが、

自警団員たちが、デマや流言飛語に踊らされたことを私は考慮するのに対して、
neranさんは全く考慮しないことから来る違いですね。

>危険の排除なら、拘束なり他に手段もあるでしょう。無辜の人間が、殺害せねば防げぬ危険を発生させる訳がない。

大震災という未曾有の大混乱が、ラジオもない、電話も少ない、通信手段未発達の社会に起こった悲劇です。

いかに自警団が集団狂気に陥っていたかは、朝鮮人たちを保護している本庄警察署を4千人以上の自警団が襲撃し朝鮮人たちをひきずり出して殺害し、さらには「署長を殺せ」と叫びすらしたという事からも分かります。

危険排除の適切な手段などと思考が働くような状況ではありませんでした。

>統計や経験を元に、黒人だという理由で、警官が何の罪を犯してもいない現場にいただけの無防備な人物を射殺しても、情状酌量すべきだと思いますか? 

アメリカでは、警官が黒人を射殺した場合、被殺黒人が銃を全く所持していない場合は警官が罪になりますが、被殺黒人がポケットに銃を所持していた場合は警官の言い分にも耳を貸すのが現状のように思います。

>イスラム過激派は世界中でテロを起こしている。それがイスラム教徒全体への危険視に大きく影響している。だから大災害時に、無辜のイスラム教徒が多数殺害されても、そこにはイスラム教徒の落ち度があるので、それを虐殺と呼ぶべきではない、と考えますか? 

今は高度情報社会でイスラム過激派(テロ集団)と普通のイスラム教徒は全く別物との認識が広がっているので、無辜のイスラム教徒を殺害したらそれは殺人罪、場合によっては虐殺と思いますよ。
しかし、虐殺事件までは起こらないとしても、所謂フェイクニユースを金儲けの手段として流す人間が多数いるといいます。現代のSNS、インターネットの危険性がとんでもない事件を引き起こす可能性もあるでしょうね。

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