李洛淵首相のツイッター発言―天皇は指導者 ― 2019/05/01
明仁天皇が退位し、新たに徳仁天皇が即位され、元号が「令和」に変わりました。 韓国の李洛淵首相がツイッターで次のように発言したと毎日新聞が報道しました。
日本、5月1日より『令和』時代。韓日関係を重視なさってきた明仁天皇に感謝申し上げる。即位される徳仁天皇は、昨年3月ブラジリアの(世界)水フォーラムでお会いし、かなり深い対話をしてくださった。韓日両国の新しい友好協力関係を構築するよう一緒に努力しましょう。
https://mainichi.jp/articles/20190501/ddm/007/040/046000c
これを読んで、あれ!? 最後の部分がちょっと違うのでは?と疑問を感じました。
実際の李首相のツイッターでは次の通りです。
일본, 5월1일부터 '레이와' 시대. 한일관계를 중시하셨던 아키히토 천황님께 감사드립니다. 즉위하실 나루히토 천황님께서는 작년 3월 브라질리아 물포럼에서 뵙고 꽤 깊은 말씀을 나누게 해주셔서 감사드립니다. 한일양국이 새로운 우호협력관계를 구축하도록 지도자들이 함께 노력합시다.
直訳すると、次のようになります。
日本、5月1日から「令和」の時代。韓日関係を重視されました明仁天皇様に感謝申し上げます。 即位される徳仁天皇様におかれましては、昨年3月のブラジリア水フォーラムでお会いして、かなり深いお言葉を交わしていただき、感謝申し上げます。 韓日両国が新しい友好協力関係を構築するように、指導者たちが一緒に努力しましょう。
最後の部分で、毎日新聞は「指導者たちが」を省いているのが分かります。 つまり李首相は天皇を日本の「指導者」と考えてツイッターを書いたのですが、毎日はそれを抜いたために、李首相の天皇観が伝わらないこととなったわけです。
李首相のブラジリア水フォーラムでの、皇太子(今度の新天皇)との「かなり深いお言葉を交わした」内容というのは、以前に拙ブログで取り上げたことがありますので、ご参考ください。 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/20/8807181
韓国では日本の天皇を「指導者」としてとらえて、日本の政治に影響を与える存在というイメージが強いということです。 だから韓国では日本に対して、平和主義の天皇と軍国主義の安倍首相という対立的な構図を描き、憎き安倍を叩く天皇を期待するような発言が出てきます。
これまでの李明博大統領の天皇謝罪要求発言(2012)や文喜相国会議長の天皇戦犯発言などを考えてみても、韓国では日本における天皇の存在がどういうものなのか、理解されていません。
韓国人の天皇観について、何も分かっちゃいないと突き放すのではなく、何故どのようにしてそんな天皇観を有するようになったのかを冷静に見る必要があると考えます。
韓国人の天皇観は日本の革新・左翼諸君の反天皇論の影響を受けていると、私は考えています。
【拙論参照】
韓国首相が皇太子に自国支持を求める http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/20/8807181
文喜相議長の天皇戦犯・謝罪要求発言 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/02/14/9035898
李大統領の発言 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/08/18/6546033
『朝鮮日報』李河遠記者の天皇戦犯論 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/08/24/6553068
『朝鮮日報』記事に出てくる若宮啓文のコラムとは http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/11/18/6636750
灘本・師岡論争―部落差別と天皇制 http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daigojuukyuudai
名目的権力と実質的権力 http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daiichidainoni
天皇制と首領制の比較 http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daiyonjuugodai
カルロス・ゴーンさんの重国籍 ― 2019/05/07
ルノー・日産・三菱の社長兼CEOでしたが、今は被告の身であるカルロス・ゴーンさん。 ブラジルとレバノンとフランスの三ヶ国の重国籍を有しています。 そして今の奥さんキャロルさんはレバノンとアメリカの二重国籍だそうです。 ゴーンさんには前妻のリタさんとの間に四人の子供(3女1男)がいて、今の奥さんには連れ子二人がいるようです。 前妻や子供たちの国籍が気になるのですが、それは分からなかったです。
国籍が何とまあ複雑なゴーンさん一家です。 国籍を考えるに何か参考になることがあるだろうと思ったのですが、家族の国籍がもっとはっきりしないと参考も何も出来ませんねえ。
ところでゴーンさんが世界各国で有している資産は、日本円で2000億円だそうです。 ここでムクッと疑問が出てきます。 もしゴーンさんが亡くなったら(こういう事を考えてはいけないのですが)、その資産はどうなるのか?です。
相続は当人が有する国籍国の民法に従います。 被相続人のゴーンさんは三ヶ国の重国籍者であり、相続人の一人である今の奥さんが二ヶ国の重国籍者、前妻の子供らも重国籍者である可能性が高いです。 としたら、ゴーンさんの相続には少なくとも四ヶ国(ブラジル・レバノン・フランス・アメリカ)以上の国が関係することになります。 また失礼な想像ですが、世界のあちこちの国から自分はゴーンさんの隠し子ですと名乗り上げる人が出てくるんじゃないかと勝手ながら憶測しています。
話は変わりますが、日本は二重国籍を認めろと主張する人がいます。 相続は先程申しましたように属人主義ですから、国籍国の民法に従います。 従って二重国籍者の相続は二ヶ国の民法が絡むことになります。 相続者の範囲や相続割合、相続税など、各国で違いますから、二重国籍者の相続は非常に複雑です。 弁護士か税理士に頼むのがいいのでしょうが、日本では外国の相続制度について精通している人は少ないですから、大変です。
二重国籍を主張する人は、こういうデメリットも頭に入れているのだろうかと、いつも疑問に感じます。
なお日本国籍を有する二重国籍者で日本を常居地としている人は、その相続は原則的に日本の民法に従います。 逆に二重国籍者で外国に住んでいる方は、どの国の民法に従うのか、専門家に聞くしかないでしょう。
【拙稿参照】
大坂なおみの国籍選択 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/02/20/9038370
私の国籍研究史(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/07/30/8630904
私の国籍研究史(2) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/08/03/8638755
私の国籍研究史(3) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/08/07/8641528
私の国籍研究史(4) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/08/11/8644295
私の国籍研究史(5)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/08/15/8646853
私の国籍研究史(6)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/08/19/8650171
私の国籍研究史(7)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/08/23/8654056
私の国籍研究史(8)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/08/27/8658841
国籍を考える―新井将敬 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/07/27/8628332
国籍を考える―アルベルト・フジモリ http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/07/25/8626981
国籍を考える―小野田 紀美の場合 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/07/23/8625722
国籍を考える―ケンブリッジ飛鳥の場合 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/07/21/8624643
外国籍が輝いて見えた時代があった http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/07/19/8623371
蓮舫二重国籍問題のまとめ (再掲) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/07/15/8620565
蓮舫二重国籍問題 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/07/14/8620041
蓮舫の二重国籍疑惑 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/09/8176022
蓮舫の過去の「国籍発言」 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/16/8190975
蓮舫は国籍選択宣言をしていないのでは? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/07/8216765
蓮舫はもともと二重国籍でなかったのでは?http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/16/8230218
二重国籍は複雑で難しい http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/20/8232627
私が二重国籍に関心を持った訳 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/28/8237467
二重国籍には様々な姿がある http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/29/8237969
蓮舫二重国籍問題のまとめ http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/11/03/8241041
二重国籍かどうか微妙な場合 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/11/13/8247093
名前を呼び合わない韓国人女性たち ― 2019/05/14
韓国のベストセラー小説で、日本でも昨年翻訳出版された『82年生まれ、キム・ジヨン』が、ちょっと話題になっていました。 かなり売れているみたいです。 私も原本と翻訳本を入手して、比較しながら読んでみました。 翻訳については言いたいことがかなりあるのですが、まあそれは置いておきます。
翻訳本(筑摩書房)には、最後のところに伊東順子さんの解説があります。 そこでは現在の韓国のジェンダー状況を整理して解説してくれています。 そこに韓国人女性の名前について、韓国社会でのあり方と小説とを比較して、次のように解説しています。
家族の中だけに限らず、ママ友やご近所同士でも、女たちは互いの名字も名前も知らないことが多い。 この小説では、それぞれの女性にきちんとした名前を与えることで、彼女たちの家族から切り離し、独立した一個の人間として、リスペクトする態度を示している。(185頁)
日本ではちょっと考えられないでしょうが、韓国では女性の名前について「家族、ママ友やご近所同士でも、女たちは互いの名字も名前も知らない」という状況です。 だったらその女性をどうやって呼んでいるかというと、子供の名前を使って呼び合うのです。
例えばチャンスという子供がいれば、「チャンス オンマ(チャンスの母ちゃん)」という具合に呼びます。 家族内や近所なんかでは母親の実名を呼び合うことは、普通ありません。 だから家族でも「チャンス オンマの名前は何だったっけ?」と聞くようなことが起きるのです。
韓国の女性社会では互助組織的な「契」という、日本での頼母子講に相当する集まりが盛んで、今も残っているようです。 民俗学や文化人類学の対象にもなるのですが、この「契」の名簿には当事者である女性の名前ではなく、子供や夫の名前が使われる例が多いと報告されています。 つまり普段から顔を互いに見合わせており、しかもかなりのお金を融通し合う「契」ですら、女性たちは名前を知らないということになります。
韓国社会では女性の名前がこういう状況ですから、この小説で登場人物の女性の名前が記されるのは伊東さんの解説通りにそれだけで意味あることなのです。 これは日本人ではちょっと理解が難しいだろうと思いますが、これを念頭においてこの小説をお読みになることをお勧めします。
ところで韓国では女性の名前を呼ばない慣習があることは、以前から知られています。 これは古く李朝時代に、女性に名前がなかったことの名残りだと考えられます。 つまり元々女性に名前がなかったものが、近代になって戸籍が整備された際に女性にも名前が付けられるようになりました。 しかし実際の生活ではその名前ではなく子供や親、夫の関係や出身地で呼び合う慣習は根強く残り、名前で呼ぶのをためらう感覚が維持されたまま現在に至っているというのが私の考えです。
むかし朝鮮人女性に名前がなかったという歴史事実について、これまで下記のように論じました。 ご興味のある方はご笑覧ください。
【拙稿参照】 名前を忌避する韓国の女性 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/03/10/8043916
李朝時代に女性は名前がなかったのか http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/02/29/8033782
李朝時代に女性は名前がなかったのか(2)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/03/23/8055612
李朝時代に女性は名前がなかったのか(3)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/04/01/8061795
李朝時代に女性は名前がなかったのか(4)http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/05/04/8083000
かつて朝鮮人女性には名前がなかった http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/12/13/9011386
李朝時代の婢には名前がある http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/03/19/8053165
許蘭雪軒・申師任堂の「本名」とは? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/03/31/8060665
日本語と韓国語の微妙な違い ― 2019/05/19
5月16日付けの朝日新聞に、日本語と韓国語の微妙な違いについて解説する記事がありました。 日本人が韓国のニュースなどを読む時、逆に韓国人が日本のニュースなどを読む時、この違いを知らなければ誤解を産みやすいことは従来から指摘されてきました。 このことを改めて指摘してくれるタイムリーな記事だと思います。 https://digital.asahi.com/articles/DA3S14016858.html?_requesturl=articles%2FDA3S14016858.html&rm=150
この記事のなかで、「人間」という言葉を取り上げて説明している部分を引用、紹介します。 「人間」は日本語では「にんげん」、韓国語では「인간(インガン)」と読みます。
「日本の責任ある指導者が、自制のない言葉で非難を続けていることは非常に遺憾だ」。韓国外交省が2月22日夜、その2日前にあった河野太郎外相の国会発言について、猛烈な抗議を表明した。
外交省が問題視したのは、河野氏が、韓国の文喜相(ムンヒサン)国会議長による天皇謝罪発言に対して述べた「韓日議員連盟の会長まで務めた人間がこのようなことを言うのは、極めて深刻だ」という発言だった。
「本来、外交省が乗り出して抗議するほどの発言ではない」(日本の外務省関係者)ものの、韓国側は「人間」という言葉に強く反応していた。韓国語では、こうした文脈で使う「インガン(人間)」が、日本語の「輩(やから)」といった侮辱的な意味になるためだ。
韓国の主要紙「朝鮮日報」は実際の意味合いに近い「サラム(人)」と意訳していたが、多くの韓国メディアは「インガン(人間)」と報道。韓国世論が発言に猛反発していた。
「人間」という言葉は、日本語と韓国語とではこれほどの違いがあるということです。 これは小学館『朝鮮語辞典』(1993)では、「인간(人間)」の項目で2番目に「人を軽蔑的に言う語」と説明されており、この朝日の記事を裏付けています。
そして朝日記事は、このような言葉の意味の違いが日韓両国の摩擦を大きくしていると言います。
日韓の外交関係が緊張するなか、ともに漢字文化圏に属することが摩擦の種を増やしている。同じ単語でも日本語と韓国語で意味が異なり、翻訳の仕方次第で国民感情を刺激することがあるためだ。相手への親近感にもつながる文化的な近さが、思わぬ落とし穴になっている。
さらに日韓の両国民は、この違いを意識しなければならないと説きます。
日韓の文化的な近さは、相手国に対する親しみを感じる入り口になる一方、国民感情を刺激する火種になる危険性も含む。稲川准教授は「両国の人々が日本語と韓国語の微妙な違いを意識するだけでも、無用な葛藤を減らすことができるのでは」と話している。
よく考えてみれば、こんな微妙な違いは両国の言葉をよく知ってこそ分かるものです。 逆に言葉を知らないとこの違いを意識できず、両国の摩擦・対立を深めているとも言えるでしょう。
相手国の言葉や文化を十分に熟知して、自国との違いを理解したうえで相手側に批判・苦言を呈するのが正道でしょう。 しかし韓国に関心がありながら韓国語を学ぼうとしない人たちが、あちこちでコメント投稿して韓国を論じています。 ちゃんと韓国語を勉強して投稿しましょうね。 こう言っても当人たちは自分が正義だと思い込んでいるので、「馬の耳に念仏」「カエルの面に小便」なだけでしょうが。
【拙稿参照】
韓国語のできない嫌韓派 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/03/28/9052386
韓国語が出来ずに韓国を論じる人たち http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/03/16/9047781
嫌韓派と韓流派 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/01/17/7540292
水野俊平『笑日韓論』 (続) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/09/20/7439097
漢字を廃止した韓国で「知的荒廃」?-呉善花(12) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/03/09/7240684
なぜ嫌韓は高齢者に多いのか―毎日新聞 ― 2019/05/25
毎日新聞の5月8日付けで、澤田克己記者の「なぜ嫌韓は高齢者に多いのだろうか」と題する記事が出ました。
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20190507/pol/00m/010/002000c
澤田記者は世論調査から、高齢者層に韓国を嫌う傾向が強いことを指摘しています。
日本政府が毎年行っている「外交に関する世論調査」というものがあります。米国や中国、韓国について「親しみを感じるか」などと聞く調査です。昨年末に発表された調査結果では、韓国に親しみを感じるという回答は39.4%でした。2012年の李明博大統領(当時)による島根県・竹島上陸を契機とした日韓関係悪化を受けて14年に31.5%まで落ち込んだものが、少しずつ回復しているという状況です。ただ6割を超えていた09~11年とは比べるべくもありません。
調査結果の詳細なデータを見ていると気がつくことがあります。「韓国に親しみを感じる」という回答が18~29歳では57.4%なのに、70歳以上では28.1%なのです。まさにダブルスコア。他の年代も見ると、30代51%、40代42.3%、50代42.7%、60代31.3%でした。どこで線を引くべきかは難しいところですが、高年齢層の方が韓国に対して厳しいというのは一目瞭然でしょう。
「嫌韓は高齢者に多い」というのは専門家たちが話題にしていたことなのですが、それを裏付けるような数字です。ヘイトスピーチ対策に取り組んでいる神原元・弁護士は「ヘイトスピーチは若者が憂さばらしでやっているというのは勘違いだ。むしろ、ある程度の社会的地位を持つ50代以上というケースが多い」と指摘しています。
「高年齢層の方が韓国に対して厳しい」ということです。 私の体験からもう少し詳しく言うと、これは男性に特に多く、女性は少ないです。 「親しみを感じない」嫌韓高齢者の多くは男性であり、逆に「韓国に親しみを感じる」高齢者の大半は女性であると見て間違いないです。 上記の世論調査に、男女別の数字を出してほしかったです。 私の予想では、男女で顕著な違いが出てくると思います。
ところで韓国語教室で熱心に勉強する方は大体が女性であり、白髪の方も結構おられます。 韓国語能力試験やハングル検定試験で最上級合格する女性は一杯います。 一方、高齢の男性で上級以上にまで行っているような熟達者は、現役時代に韓国に赴任して友人をつくったとか、韓国に具体的に接した経験のある方の場合が多いですね。 韓国語を忘れないようにと今なお学習意欲旺盛ですが、数は非常に少ないです。
嫌韓派のほとんどは、これまで韓国との体験がなくて韓国語を知らず、そして学ぼうともせず、ただひたすらインターネットや嫌韓本・雑誌などの情報を読んで、韓国に対する反発と嫌悪を書き連ねますねえ。 これは高齢者も若者も関係なく存在する傾向性です。
次に澤田記者は、高齢者に嫌韓が多い理由を次のように論じます。
では、どうしてなのか。これは、なかなか難しいところです。まだまだ検証が必要なのですが、1980年代末から韓国にかかわってきた私の感覚では、「昔の韓国」のイメージが作用しているのではないかと感じています。80年代までの日本で韓国に持たれていたイメージは「軍事政権」というネガティブなものでした。
それに対して90年代後半以降に成人した世代には、K-POPに代表されるような発展した国という明るいイメージしかありません。90年代末に慶応大の小此木政夫教授から「最近の学生はソウル五輪以降のイメージしか持っていない。我々の時代とは全く感覚が違う」と聞いたことがあるのですが、まさにそうした違いでしょう。
そして「昔の韓国」は、経済的にも、政治的にも、日本とは比べものにならない小さく、弱い存在でした。それなのに、バブル崩壊後に日本がもたついている間に追いついてきて生意気なことを言うようになった。そうした意識が嫌韓につながっているのではないか。そう考えるのが自然なように思えます。67年生まれの私と同世代だという神原弁護士も、同じような感覚を持っているそうです。
記者は「昔の韓国」のイメージである「軍事政権」と「小さくて弱い存在」が今の嫌韓につながった、としています。 しかし、これには異議があります。
「軍事政権」は、1970~80年代に朝鮮総連の影響を受けて日本の左翼・革新系の人たちが抱いたイメージです。 左翼・革新系は当時も日本では少数派でした。 一方1960年代後半から日韓経済交流が活発化して、日本からかなり多くの企業人が参加し韓国を訪問しました。 彼らには「軍事政権」というマイナスイメージはありませんでした。 そして、以上のような左翼・革新あるいは企業人でなければ、ほとんどの日本人は韓国に関心がありませんでした。 1990年代までは、そういう時代でした。 従って「軍事政権」イメージが今の嫌韓につながったとは、とても思えません。
また韓国がかつて「小さくて弱い存在」だったのは事実ですが、そんな昔のイメージが今の嫌韓につながったとは言えないでしょう。 アジア諸国には韓国以外にも、昔「小さくて弱い存在」だったのが今や大きな経済成長を遂げて「大きくて強い存在」になった国は多いです。 しかしそういった国々があるなかで、日本の嫌韓は突出しています。 かつての「小さくて弱い存在」のイメージが今の嫌韓にはつながらないと、私は思います。
さらに記者は、高齢者の疎外感が嫌韓に向かっていると論じています。
定年退職した後に感じる社会からの疎外感というものも無視できないのかもしれません。そのことをうかがわせたのが、神原弁護士と一緒に今年4月に記者会見した男性の証言でした。朝鮮学校への補助金支出を批判するブログにあおられて神原弁護士らに対する懲戒請求を弁護士会に出したものの、後に反省して謝罪したという男性です。
この男性は定年退職後に、ネットサーフィンをする中で嫌韓的なブログを読むようになったといいます。男性はブログを書いている人物を「保守右翼の大物」だと感じるようになり、「信者」としてブログの指示通りに懲戒請求などを送り続けました。「自分なりの正義感と、日本のためによいことをしているという一種の高揚感もあった」そうです。
当時の心境については、「それまで多かった友人や、仕事の仲間、取引先というものが、65歳をすぎて一切なくなってしまった。社会に参加していない、疎外されているようなところがあった。しかし、(ブログに従う行動を取ることで)自分は社会とつながっているんだという自己承認を新たにしたというような意識が働いて、一線を越えてしまったのではないか」と振り返りました。
九州選出の自民党国会議員から「現役時代には常識的だった県庁職員が定年退職してから激しい嫌韓発言をするようになって驚いた」という話を聞いてもいます。
これはおそらくその通りだろうと思われます。 日刊ゲンダイにも、公務員定年退職した人が嫌韓にはまり込んだ例を記事にしていました。 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/04/14/9059752
嫌韓派の心理は次のようになると思います。 自分は正義を実現したい、悪党がいればそいつを打ち負かすのが正義だ、自分もその正義の闘いに加わりたい、その悪党である「韓国」が目の前にいる、自分も闘うぞ! さらに高齢者は、若い時に出来なかった正義の実現を今やっているのだ! 自分は小さな力でも正義のために今からでも役に立ちたい! という心境なんでしょう。
前述の弁護士懲戒請求は、そんな嫌韓派の中でもちょっと生真面目な人が行動に移した事件ということになります。 賠償請求額は何十万円かになるようですが、最後まで闘うような元気な嫌韓派はどれだけいるのでしょうか? 懲戒請求された弁護士さんにとっては、おいしい小遣い稼ぎになりそうです。 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190521-00010003-wedge-kr&p=2
【拙稿参照】
最初の韓流ブーム http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/08/06/8934724
日本語と韓国語の微妙な違い http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/05/19/9074339
嫌韓を実践するおばあさん http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/04/14/9059752
韓国語のできない嫌韓派 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/03/28/9052386
韓国語が出来ずに韓国を論じる人たち http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/03/16/9047781
徴兵を免除されている在日韓国人 ― 2019/05/31
5年ほど前に、ある在日韓国人から
帰化したいと思っているのだが、今度日本では戦争法案ができて、徴兵制になると言われているでしょ。 そうしたら息子が徴兵されるのではないかと怖くて、やはり帰化しない方がいいのかなあとも思っている。
と相談を交えたような話を聞かされたことがあります。
私はビックリして、
息子さんは韓国籍でしょ。 だったら徴兵の対象ですよ。 日本では将来徴兵制が敷かれるかどうか分かりませんが、息子さんは韓国籍である限り韓国の兵役の義務があるんですよ。 ただ在日韓国人は兵役を免除されているだけです。 単に免除ですから、いつ何時、免除を廃止して徴兵する、となるかも知れませんよ。 息子さんが韓国旅行に行ったら、そのまま徴兵されるなんてことが起きるかも知れません。
と答えました。 その方はちょっと黙りこくってしまいました。 その後帰化したのかどうかは聞いていません。
今の韓国は日本以上の少子化で、合計特殊出生率1.0以下にまで落ち込んでいます。(ちなみに日本は1.43) 韓国女性は平均して一人以下の子供しか産まないのです。 出生した子供の数を調べてみますと、1990~95年の年平均出生数は70万2千人、その20年後の2010~15年の年平均出生数は45万5千人と減少し、そして昨年の2018年は1年間に32万7千人、今年の出生予測値は30万9千人と減少幅がさらに大きくなっています。
この世代が20年後の成人になった時、徴兵対象の若者の数が非常に少なくなることは明らかです。 とすると、これで軍隊を維持できるのだろうか?と疑問に思われます。
その兆候はもう既に現われているようで、昔なら徴兵検査で不合格にしていたような若者でも徴兵せねばならなくなってきて、韓国軍の質が低下しているそうです。 これは韓国のマスコミで時々報道されていますね。 厳しい訓練が難しくなってきているといいます。
報道では、軍隊に行っている息子が心配で所属部隊に毎日のように電話する親たちがいて、部隊側もそんな親たちを安心させようと専用の電話を置いている事実に、軍隊は幼稚園か!?と嘆く新聞記事がありました。 また野外訓練や歩哨に立つ兵士、海軍艦艇に乗り組む水兵なんかが禁止されている携帯電話を持ち込み、こそっと家族や恋人らと通話していたことが相次いで発覚したという記事もありました。
これからも徴兵対象の若者がどんどん減っていく韓国では、軍隊の質の低下がさらに進むかも知れません。 とすると、徴兵を維持しようと在日韓国人に目をつける時代が来る可能性は大いにあると思います。 例えば、徴兵年齢に達した在日韓国人の国籍離脱を認めない、つまり徴兵に応じた者だけが日本に帰化することができる、というような事態が考えられます。
在日韓国人のなかに、我々は日本人ではない、韓国人なんだ!と声高に主張する方がおられます。 しかしその多くが自分の子弟に兵役義務があることは黙っています。 また、我々は日本人でもなく韓国人でもない、在日なんだ!と言う人もいます。 こういう人はたいていが海外旅行にはちゃっかりと韓国パスポートを持って行きます。 韓国政府から韓国人として認めてもらっていながら、韓国人の当然の義務である兵役には一言もありません。
徴兵免除はいつまで続くか分からないと思うのですが‥‥。 日本人と同じように平和ボケしているのでしょうかねえ。
ところで今ふと思ったのですが、韓国人の当然の義務である兵役が在日韓国人には免除されているというのは、在日特権ではないでしょうか。
もう一つの在日特権 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/11/13/8997080