武藤正敏さんは韓国のGSOMIA維持を懸念していた ― 2019/09/14
韓国は去る8月22日に日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定しました。 日本ではこれを、とんでもない暴挙と言わんばかりに批判が相次ぎました。 嫌韓派論客たちがこぞって取り上げていますね。 この嫌韓派論客に元駐韓国特命全権大使の武藤正敏さんも加わっています。
武藤さんは今回の韓国のGSOMIA破棄について解説しています。 https://diamond.jp/articles/-/212784
彼はGSOMIAが韓国で有用であることを言います。
GSOMIAに基づく情報の交換は16年の署名以来29回行われているが、その多くは北朝鮮が発射するミサイルに関するものである。北朝鮮のミサイル発射に関する情報収集能力は日本の方が進んでおり、破棄に伴うマイナスは韓国の方が大きいというのが、軍事専門家の共通する見解である。
しかし韓国がGSOMIAを破棄したのは、理性を失ったからだと論じます。
理性的に考えれば、韓国のGSOMIA破棄は韓国の安全保障にとって大きな損失であり、韓国国民を含め、多くの人がそれはないと考えていた。 しかし筆者からすれば、韓国はこれまでも感情の高ぶりにまかせえて理性的ではない決断を下してきた国だったので、一抹の不安は抱いていた。 ‥‥そんな理性的ではない決断の延長として、GSOMIA破棄が現実のものとなってしまった。 ‥‥韓国は自国と地域の安全保障を犠牲にしてまで、日本への反発を強めている。これからも理性的な判断などとても期待できない。
つまり、韓国にとって有用であったのに理性を失って破棄したというのが、彼の見解です。そして多くの人が彼の意見に賛成しているようです。
ところが武藤さんは2年ほど前では、韓国の文政権がGSOMIAを破棄することよりも維持することの方を「懸念」するという意見でした。 つまり韓国がGSOMIAを維持することの方がリスクが大きいので、破棄する方が望ましいと言っておられたのです。
私が懸念しているのは、文在寅政権がGSOMIAを破棄するかどうかではなく、むしろそのままにしておくことのリスクの方である。
2016年12月16日の中央日報には、文在寅がGSOMIAに対してどのような認識を持っているのか窺い知れる記事がある。
「韓日軍事情報包括保護協定に対しても『日本が軍事大国化の道を歩みつつあり、特に独島(竹島)に対して領有権を主張して領土紛争がおきているところに軍事情報包括保護協定を締結するのが適切な措置なのか疑問』と評価した」というのだ。
むしろ、文在寅の言う通りかもしれない。 このような認識のもとで親北朝鮮的な外交安全保障政策を取るかもしれない政権に、果たして日本側の軍事情報を渡してもよいものか。 その情報は当然、北朝鮮や中国にわたってしまうと考えざるを得ない。 おそらく、米国も同様の認識を持っているだろう。 (以上は、武藤正敏『韓国人に生まれなくてよかった』悟空出版 2017年6月 87頁)
武藤さんは文政権への不信感では一貫していますが、GSOMIAに対する考えはこの2年の間に変化しています。 彼自身がそれをどう説明しているのか、見当たりませんねえ。
ところで彼は嫌韓派論客として登場し、今ではテレビ出演や雑誌投稿、講演などで大いに活躍しておられます。 そういった活動のなかで、嫌韓傾向の視聴者や読者たちに迎合するような方向にどんどん行っておられるのかなあ、などと勝手に想像しています。