解放運動の闇専従-森山栄治 ― 2019/12/18
関西電力幹部の金品受領問題のニュースは、私なりに関心をもって読んできました。 この問題の中心人物である森山栄治は、部落解放同盟との関係が取り沙汰されていましたね。 今の部落解放同盟は、森山はもはや我が同盟とは関係ないとしています。
しかし彼は部落解放同盟福井県連書記長、福井県人権研究員等を歴任し、法務省人権擁護局から感謝状をもらうなど、長年にわたって同和問題に深く関わってきた人物です。 解放同盟と関係はなくなっていたといっても、同和地区出身者の立場を最大限利用して巨大企業の関西電力と高浜町等の行政を手玉に取り、莫大な私的利益をあげたのでした。
こういう話は西日本でしたら、そうか、彼は同和関係者だったのか、だったらあり得るなあ、という感想を抱く人が多いでしょう。 しかし東日本の人にはほとんど全く理解できないだろうと思います。 もっと詳しい調査報道を期待するところなのですが、まだまだタブー視されている問題ですので、ちょっと難しいかも知れません。
ところで部落解放同盟中央本部は、この森山栄治についてコメントを発表しています。 http://www.bll.gr.jp/info/news2019/news20191008.html
このなかで私が注目したのは、次の部分です。
森山氏は、1969年京都府綾部市職員から高浜町に入庁している。1970年部落解放同盟福井県連高浜支部が結成され、福井県内唯一の解放同盟支部の結成ということもあって、部落解放同盟福井県連合会も同時に結成されている。その結成に尽力したこともあって、森山氏は県連書記長(同時に高浜支部書記長)に就任。2年間書記長の要職に就いている。しかし、その言動が高浜町への厳しい指摘であったり、福井県に対する過度な指摘等が問題とされ、2年で書記長職を解任されており、それ以後、高浜町の職員として従事するようになる。
森山は1969年から高浜町の公務員に就職したのですが、1970年から解放同盟の県連書記長に就任。 そして「2年で書記長職を解任されており、それ以後、高浜町の職員として従事するようになる」となっているところに目がいきました。 つまり1970年から二年間は公務員でありながら、解放同盟という民間運動団体の幹部となり、その間も公務員としての地位を維持していたのです。 そして解同幹部を解任されてから、ようやく公務員としての仕事をするようになったと、解同中央本部が明らかにしたのです。
今の人たちでしたら、ほとんど信じてもらえないでしょうが、1970~80年代に、公務員でありながら解放同盟の専従をしている人が多かったのです。 各自治体によって形は違うでしょうが、公務員の給与をもらって解放運動の仕事をしていたということです。 いわゆる「闇専従」ですね。
公務員ですから一応出勤簿はありました。 ある自治体では、その出勤簿に「職免」のハンコをずらりと押し並べるのです。 職場にはほとんど顔を見せることもありません。 職員名簿があるので職場同僚たちは名前だけは知っているのですが、顔なんて見たことがありません。 事情を知らない新米職員が名簿を見て「この人、誰ですか」と聞いても、「だからアレだよ」と言いながら、口に人差し指をあてて黙っておけと合図する、そんな職場風景が展開されていたのでした。
別の自治体では、同和地区内にある公民館(解放会館とかいわれていた)の職員として採用されて、実際の仕事は解放運動という人もいました。 こういう職場になると、公務員としての公正性とか中立性とか気にしないで、おおっぴらにやっていましたねえ。
こんな闇専従が西日本各地の自治体に多くいたのでした。 闇専従はことの性質上、表にはなかなか出てきません。 今度のように、何気ない一言のなかに闇専従が出てきます。
もう一人、自分の経歴欄に書いた文言から、闇専従者であったことが判明する有名人もいました。 松岡徹(元参議院議員、解放同盟中央書記長等を歴任)。 この人の公式ウェブサイトの中の経歴欄により、大阪市の公務員でありながら解放同盟の専従の仕事をしていたことが明らかになりました。 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/05/26/381520 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2008/02/23/2653204 明らかにしたのは拙ブログなのですが、これを公開して間もなく、このウェブサイトの肝心な部分が削除され、やがてサイト自体が閉鎖されました。
この時代の解放運動の人たちは、運動は自腹を切ってやるものだという思想がありませんでした。 公務員が解放運動の仕事をしていても、それは自分たちが勝ち取ってきた成果のように言っていましたねえ。
こんな話をしても今では、まさか、いくら何でもあり得ないでしょ、という反応になるでしょう。 解放運動が猛威をふるった時代でした。
そんな時代の中で機を見るに敏な森山は、当初は解同幹部として活動しながら企業や行政に解放運動の恐怖を見せつけ、やがて解同から離れて自立し、一人の力で大企業と行政を籠絡していったと思われます。 彼にとって同和問題(解放運動)は人権活動ではなく、私利私欲を図るためのステップだったのでしょう。
【拙稿参照】
闇に消えた公金―芦原病院・同和行政 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/04/29/346418
松岡徹さん http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/05/26/381520
これが「真摯に反省」? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/05/27/382079
飛鳥会事件―「心から謝罪」は本当か? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/02/24/1206080
解放運動に入り込むヤクザ http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/05/04/1482616
同和地区の低学力 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/05/18/1515064
水平社宣言 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/07/07/1631798
部落(同和)問題は西日本特有の問題 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/07/14/1652936
解放運動の「強姦神話」 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/07/28/1685192
差別と闘うことへの疑問 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/12/15/2513505
弱者の腐敗 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/12/29/2534690
松岡徹氏に関する拙稿が役立った http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2008/02/23/2653204
活動家の転落 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2008/05/17/3518593
差別の現実から学ぶとは? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2010/12/19/5589789
同和教育が差別意識をもたらす http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2010/12/29/5614412
かつての解放運動との交渉風景 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2011/08/27/6074508
郵便ポストを設置させた解放運動 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/07/07/6502784
同和地区の貧困化 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/07/29/6525302
「原子力ムラ」は差別語では‥ http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/09/22/6580751
解放運動 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2014/05/02/7299711
解放運動の力が落ちたこと http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/01/08/7533867
柳田邦男のビックリ部落認識 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/12/25/8290405